「生成AI研修を実施したいが、費用がネックになっている」——そんな企業にぜひ知っていただきたいのが、国の助成金制度です。
2026年度も、生成AI研修に活用できる助成金は複数存在します。中でも最もインパクトが大きいのが人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)で、中小企業であれば研修費用の最大75%が助成されます。30万円の研修が実質7.5万円になる計算です。
本記事では、2026年度に使える助成金の一覧から、具体的な計算例、申請の流れ、よくある失敗まで、実務担当者が知っておくべき情報をすべてまとめました。
人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の概要
生成AI研修で最も活用されているのが、厚生労働省の「人材開発支援助成金」です。その中でも「事業展開等リスキリング支援コース」は、DXやAI活用のための人材育成を強力に支援する制度です。
制度の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 管轄 | 厚生労働省 |
| 対象事業主 | 雇用保険適用事業所の事業主 |
| 経費助成率(中小企業) | 75% |
| 経費助成率(大企業) | 60% |
| 賃金助成(中小企業) | 960円/人・時間 |
| 賃金助成(大企業) | 480円/人・時間 |
| 経費助成上限(10h以上100h未満) | 30万円/人 |
| 経費助成上限(100h以上200h未満) | 40万円/人 |
| 経費助成上限(200h以上) | 50万円/人 |
| 制度期間 | 令和8年度まで(期間限定措置) |
対象となる研修の要件
すべての研修が助成金の対象になるわけではありません。以下の要件を満たす必要があります。
- OFF-JT(座学・実習)であること:OJT(日常業務の中での指導)は対象外
- 合計10時間以上の研修であること:1日研修でも6〜8時間で設計すれば要件を満たす(休憩時間を除く実質時間)
- 事業展開やDXに関連する内容であること:生成AIの業務活用は「DX推進」として要件を満たす
- 外部の研修機関またはカリキュラムであること:社内講師だけの研修は原則対象外(外部機関に委託する形式が必要)
具体的な計算例|30万円の研修が実質いくらになるか
実際の助成額を、具体的な数字で計算してみましょう。
ケース1:1日研修(8時間)× 受講者5名|中小企業の場合
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 研修費用(税抜) | — | 300,000円 |
| 1人あたり研修費 | 300,000円÷5名 | 60,000円 |
| 経費助成(75%) | 60,000円×75%×5名 | ▲225,000円 |
| 賃金助成 | 960円×8h×5名 | ▲38,400円 |
| 助成金合計 | — | ▲263,400円 |
| 実質負担額 | — | 36,600円 |
30万円の研修が、実質3.7万円で受講可能に。
ケース2:2日間研修(16時間)× 受講者10名|中小企業の場合
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 研修費用(税抜) | — | 600,000円 |
| 1人あたり研修費 | 600,000円÷10名 | 60,000円 |
| 経費助成(75%) | 60,000円×75%×10名 | ▲450,000円 |
| 賃金助成 | 960円×16h×10名 | ▲153,600円 |
| 助成金合計 | — | ▲603,600円 |
| 実質負担額 | — | 0円(助成額が上回る) |
※経費助成には1人あたりの上限額(10時間以上100時間未満の場合30万円)があるため、実際には上限の範囲内で計算されます。上記の1人あたり6万円の場合は上限内に収まります。
ケース3:大企業の場合
大企業(資本金3億円超 or 従業員300人超)の場合、経費助成率は60%、賃金助成は480円/時間に下がります。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 研修費用(税抜) | — | 500,000円 |
| 1人あたり研修費(20名) | 500,000円÷20名 | 25,000円 |
| 経費助成(60%) | 25,000円×60%×20名 | ▲300,000円 |
| 賃金助成 | 480円×8h×20名 | ▲76,800円 |
| 助成金合計 | — | ▲376,800円 |
| 実質負担額 | — | 123,200円 |
申請の流れ|6つのステップ
助成金の申請は、研修実施の前から準備が必要です。以下の6ステップで進めます。
ステップ1:事前準備(研修の2〜3ヶ月前)
- 事業内職業能力開発計画の策定
- 職業能力開発推進者の選任・届出
- 就業規則への教育訓練休暇制度の規定(必要な場合)
ステップ2:訓練計画書の作成・提出(研修の1ヶ月前まで)
- 「職業訓練実施計画届」を作成
- 研修カリキュラム、講師の経歴書、受講者名簿を添付
- 管轄の都道府県労働局へ提出(研修開始日の1ヶ月前が期限)
ステップ3:労働局による確認
- 提出書類の審査(1〜2週間)
- 不備があれば修正指示が来る
ステップ4:研修の実施
- 計画書どおりに研修を実施
- 出席簿・日報を必ず記録(支給申請時に必要)
- 研修費用の支払いを完了させる
ステップ5:支給申請書の提出(研修終了後2ヶ月以内)
- 支給申請書に領収書・出席簿・修了証等を添付
- 研修終了日の翌日から2ヶ月以内に提出(厳守)
ステップ6:審査・支給(申請から2〜6ヶ月後)
- 労働局による審査
- 審査通過後、指定口座に助成金が振り込まれる
重要ポイント:研修費用は一度全額を自社で支払い、後から助成金が入金される「後払い」方式です。資金繰りの計画に注意しましょう。
他の助成金・補助金との比較と併用
人材開発支援助成金以外にも、AI関連で活用できる制度があります。
| 制度名 | 管轄 | 対象 | 補助率 | 上限額 | AI研修への適用 |
|---|---|---|---|---|---|
| 人材開発支援助成金 | 厚生労働省 | 従業員の研修費用 | 最大75% | 30万〜50万円/人 | 最適 |
| デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) | 経済産業省 | ITツール導入費用 | 1/2〜4/5 | 最大450万円 | ツール導入費用のみ(研修費は対象外) |
| 新事業進出・ものづくり補助金 | 経済産業省 | 設備投資・システム開発 | 1/2〜2/3 | 750万〜4,000万円 | AI開発費用は対象(研修費は対象外) |
| キャリアアップ助成金 | 厚生労働省 | 非正規社員の処遇改善 | — | — | 正社員転換時の研修に一部適用可能 |
併用のポイント
- 人材開発支援助成金 × デジタル化・AI導入補助金:「研修費用は人材開発支援助成金、AIツールの導入費用はデジタル化・AI導入補助金」という形で併用が可能。ただし、同一の経費に対して二重に補助を受けることはできません
- 人材開発支援助成金 × ものづくり補助金:対象経費が異なるため併用可能。AI開発プロジェクト(ものづくり補助金)+人材育成(人材開発支援助成金)の組み合わせが有効
- 地方自治体の独自補助金:東京都の「DX人材リスキリング支援事業」など、自治体独自の上乗せ補助が存在する場合もあります。管轄の自治体に確認しましょう
よくある申請ミスと対策
助成金の申請は書類が多く、些細なミスで不支給になるケースがあります。以下の「よくある失敗」を事前に把握して対策しましょう。
ミス1:計画書の提出期限を過ぎてしまう
対策:研修開始日の1ヶ月前が提出期限です。研修会社の選定・見積もり取得も含めて、3ヶ月前から準備を開始しましょう。
ミス2:研修時間が10時間に満たない
対策:助成金の対象となるのは「合計10時間以上」の研修です。1日研修(6〜7時間)だけでは要件を満たさない場合があります。事前のeラーニング(3時間)+1日対面研修(7時間)=合計10時間、のように組み合わせて設計しましょう。
ミス3:出席記録の不備
対策:受講者の出席簿は、受講者本人の署名(自筆)が必要です。デジタル出席管理のみだと不備を指摘されることがあります。研修当日に紙の出席簿を準備しておきましょう。
ミス4:研修内容と計画書の不一致
対策:実際の研修カリキュラムが計画書と大幅に異なると、不支給の原因になります。やむを得ず変更する場合は、事前に変更届を労働局に提出してください。
ミス5:支給申請の2ヶ月期限を過ぎる
対策:研修終了後は、領収書や出席簿の整理に時間がかかります。研修終了日の翌日から2ヶ月以内の期限は厳守です。研修終了後1週間以内に書類を揃え始めることをおすすめします。
Uravationの助成金申請サポート
Uravationでは、助成金の活用を前提とした研修プランの設計から、申請書類の作成支援まで一貫してサポートしています。
サポート内容
- 助成金対応カリキュラムの設計:「合計10時間以上」「OFF-JT」「DX関連」の要件を確実に満たすカリキュラムを作成
- 計画書作成の支援:研修内容の記載方法、受講者名簿の作成方法など、書類作成をサポート
- 提携社労士の紹介:助成金申請に精通した社会保険労務士と連携し、申請手続きを確実に進めるサポート体制
- 研修実施時の記録管理:出席簿テンプレート、修了証の発行など、支給申請に必要な記録を漏れなく管理
よくある質問(FAQ)
Q. 助成金の申請は研修前と研修後のどちらですか?
人材開発支援助成金は「事前申請制」です。研修開始日の1ヶ月前までに訓練計画書を労働局に提出する必要があります。研修後にも支給申請が必要で、研修終了日の翌日から2ヶ月以内に提出しなければなりません。
Q. オンライン研修でも助成金は使えますか?
はい、オンライン研修(同時双方向型)も助成金の対象です。ただし、eラーニング(自習型)のみの研修は要件を満たさない場合があります。ライブ配信のオンライン研修+eラーニングの組み合わせで「合計10時間以上」を確保する形式が推奨されます。
Q. 正社員以外のパート・契約社員も対象になりますか?
雇用保険の被保険者であれば、パートタイマーや契約社員も対象になります。ただし、派遣社員は派遣元の企業が申請する必要があるため、派遣先企業が直接申請することはできません。
Q. 助成金はいつ入金されますか?
支給申請後、労働局の審査に2〜6ヶ月程度かかります。審査が通れば指定の口座に振り込まれます。研修費用は一度全額を自社で支払う「後払い」方式のため、資金繰りの計画に注意が必要です。
Q. 過去に助成金を受給した企業でも再度申請できますか?
はい、再度申請可能です。同一の受講者が同じ内容の研修を受ける場合は対象外ですが、新しいテーマの研修や、異なる社員を対象とする研修であれば問題ありません。例えば「基礎編」を受講した後に「応用編」を受講するケースは助成対象になります。
まとめ
2026年度も、生成AI研修に活用できる助成金は充実しています。特に人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)は、中小企業で最大75%の経費助成が受けられる強力な制度です。
申請のポイントは、早めの準備(3ヶ月前から)、要件を満たすカリキュラム設計、正確な書類作成、期限の厳守の4つ。これらをしっかり押さえれば、生成AI研修の費用負担を大幅に抑えることが可能です。
なお、事業展開等リスキリング支援コースは令和8年度までの期間限定措置です。制度が継続しているうちに、計画的な活用をおすすめします。
参考ソース
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