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【2026年4月速報】Oracle OCI Enterprise AI GAとFusion Agentic Applications|受注残5530億ドルの衝撃と日本企業への示唆

【2026年4月速報】Oracle OCI Enterprise AI GAとFusion Agentic Applications|受注残5530億ドルの衝撃と日本企業への示唆

結論: OracleはOCI Enterprise AIのGA(正式提供)とFusion Agentic Applicationsで、ERPとAIエージェントを一体化した「AIネイティブ基幹システム」を2026年4月に投入。クラウド売上84%成長・受注残5530億ドルという驚異的な数字が示すとおり、エンタープライズAI市場の覇権争いは新局面に突入しました。

この記事の要点:

  • OCI Enterprise AIがGAに。エージェント構築・デプロイ・ガバナンスを統合した単一プラットフォームが登場
  • Fusion Agentic Applications(22本)がERP・CX・HRに直接組み込まれ、「AIアドオン」時代の終わりを告げた
  • 受注残(RPO)が前年比325%増の5530億ドルに膨張。AI投資の本気度が数字で証明された

対象読者: ERPやCRMのリプレースを検討中の中小企業経営者・IT部門責任者

読了後にできること: Oracle AIの何が新しいかを理解し、自社の基幹システムAI化ロードマップの検討を始める


「AIエージェントを導入したいけど、既存のERPと連携できるの?」

企業向けAI研修で最もよく聞かれる質問の一つです。先日も、製造業の情報システム部長(従業員500名規模)からこんな相談を受けました。「ChatGPTは試してみたけど、基幹システムとバラバラで結局人手が必要になる。本当に業務を自動化できるの?」と。

その答えが、2026年3月〜4月にかけてOracleが矢継ぎ早に発表した2つの施策です。OCI Enterprise AIの正式提供(GA)と、Fusion Agentic Applications。一言で言えば、「ERPの中でAIエージェントが動く」という世界観が現実になりました。

この記事では、Oracleの2つの発表内容をファクトベースで解説し、Microsoft・Salesforceとの競合図、そして日本企業がERPリプレースやAI導入を検討する際の示唆をお届けします。100社以上の企業向けAI研修・導入支援の経験から、「これは本物か、バズワードか」を率直にお伝えします。

OCI Enterprise AI GAとは何か — 統合基盤の全体像

2026年4月、OracleはOCI(Oracle Cloud Infrastructure)Enterprise AIの一般提供(General Availability)を発表しました。これは単なる新サービスではなく、AIワークロードの構築・管理・デプロイに必要なすべてを一つのプラットフォームに統合した、Oracleにとって最もアグレッシブな製品投入です。

3つの柱:Intelligence・Act・Controls

内容具体的機能
Intelligence(知性)モデル選定とインファレンス主要LLMへのアクセス、ファインチューニング、RAG構築
Act(行動)エージェントとツールAI Agent構築・オーケストレーション、外部API連携
Controls(制御)ガバナンスとセキュリティデータ主権、監査ログ、コンプライアンス管理

このうち、特に「Controls」の充実度が既存クラウドと一線を画します。金融・医療・公共など規制業種では、AIが自律的に意思決定する際のガバナンス担保が最大の懸念事項。OCI Enterprise AIはその問題を「同一プラットフォーム内でワンストップ解決」する設計です。

AIエージェントの基本概念や、エンタープライズ向け導入ステップについては、AIエージェント導入完全ガイドで体系的にまとめています。あわせてご確認ください。

OCI売上84%成長の意味

OCI Enterprise AIの発表を理解するうえで、財務数字は欠かせないコンテキストです。Oracleが2026年3月に発表したQ3 FY2026決算(2026年2月期)では:

  • OCI(クラウドインフラ)売上: 前年比84%増(推定49億ドル規模)
  • 総クラウド売上(IaaS+SaaS合計): 44%増の89億ドル
  • 総売上: 22%増の172億ドル(Wall Street予想超え)
  • 受注残(RPO): 前年比325%増の5530億ドル

中でも「受注残5530億ドル」という数字は圧倒的です。これはAIに関連する複数年契約が大量に積み上がっていることを意味します。Oracleの説明によると、大半はAI学習インフラの大型契約で、顧客がGPUを事前に調達するか、Oracleに預けて運用させる形。「AIバブル」という声もある中で、実際のキャッシュコミットメントがこの規模に達していることは、本物の需要があることを示しています。

「受注残のほとんどは、Oracleが追加資金を必要としない大規模AI契約です。顧客が事前支払いをするか、顧客自身がGPUを購入してOracleに供給するかたちです」— Oracle CFO コメント(Q3 FY2026決算発表より)

Fusion Agentic Applications — ERPにエージェントが「住む」時代へ

OCI Enterprise AIと同時期(2026年3月〜4月)に、OracleはFusion Agentic Applicationsを発表しました。これが今回の発表の中で、日本企業にとって最も直接的なインパクトを持ちます。

「AIアドオン」と根本的に何が違うか

企業向けAI研修で顧問先の情シス担当者によく言われるのが、「ChatGPTを使ってみたけど、ERPのデータを読めないから結局手動で入力し直す作業が残る」という話です。これがまさに「AIアドオン問題」です。

Fusion Agentic Applicationsはこの問題を根本から解決しようとしています。Oracle Fusion Cloud Applications(ERP、HCM、CRMなどの基幹系SaaS)にネイティブで組み込まれたAIエージェントが、以下のすべてに直接アクセスして意思決定・実行できます:

  • 統合された企業データ(顧客・取引・在庫・人事など)
  • 承認ワークフローと決裁権限
  • 業務ポリシーと規制要件
  • リアルタイムのトランザクション状況

つまり、エージェントが「承認者に転送してください」と言うだけでなく、実際に承認処理を実行し、次工程に進めるところまで自律的に動きます。

現時点で利用可能な22本のエージェントアプリ

2026年4月時点で提供されている22本の主要アプリを領域別に整理します。

領域代表的エージェントアプリ主な自動化対象
Finance(財務)Invoice Compliance Agent請求書照合、支払い承認、コンプライアンスチェック
Supply Chain(SCM)Procurement Agent発注提案、サプライヤー評価、リスク検知
HR(人事)Talent Acquisition Agent採用候補スクリーニング、面接スケジュール調整
Customer Experience(CX)Contract Compliance Workspace契約リスク検知、更新タイミング最適化
CXSales Opportunity Agent商談優先度付け、次のアクション提案

2026年4月9日の追加発表では、CX領域に5本の新アプリが追加されました。これらはいずれも「単一のAIアシスタント」ではなく、複数の専門エージェントが協調して動くマルチエージェント構成です。「Contract Compliance Workspace」であれば、リスク検知エージェント・優先度評価エージェント・エスカレーションエージェントが連携して動作します。

AI Agent Studio — 自社エージェントの構築ツール

Oracleはさらに、Agentic Applications Builderを含む「AI Agent Studio for Fusion Applications」も拡充しました。これにより、標準提供の22本に加えて、自社の業務フローに合ったカスタムエージェントを構築できます。ノーコード/ローコードのインターフェースで、業務部門が主導でエージェントを設計し、IT部門がガバナンス設定をする役割分担が想定されています。

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OCI Enterprise AIで実際に何ができるか — 具体的ユースケース

「発表内容は分かったけど、具体的に何ができるの?」というのが正直なところだと思います。研修先の企業でも「プレスリリースの言葉が抽象的でイメージがわかない」という声をよく聞きます。ここでは、OCI Enterprise AI + Fusion Agentic Applicationsで実現できる具体的なシナリオを紹介します。

シナリオ1:請求書照合の完全自動化

製造業(従業員300名規模)での想定シナリオです。

事例区分: 想定シナリオ
以下は100社以上の研修経験をもとに構成した典型的なシナリオです。

現在の業務フロー(Before): 月末に仕入先から約200枚の請求書が届く → 購買部門の担当者3名が手作業でERP照合 → 不一致が見つかった場合は仕入先に確認メール → 承認権者に回覧 → 支払い処理。合計工数: 月約80時間。

Fusion Agentic Applications(Invoice Compliance Agent)導入後のフロー(After): 請求書をOCRでデジタル化 → エージェントがERP発注データと自動照合 → 金額・品目・納期の三者照合を秒単位で完了 → 不一致がある場合のみ人間にアラート → 承認ワークフロー自動起動 → 支払い処理。人間の関与: 不一致件数(全体の推定5-15%)のみ。

# 請求書照合エージェントへの指示例(自然言語)

「以下の請求書データについて:
1. 対応する発注書(PO)番号で照合してください
2. 金額差異が1万円以上の場合は理由を調査し報告
3. 納品書と請求書の品目数が一致しない場合は仕入先へ確認メールのドラフトを作成
4. 全項目が一致した場合は自動的に承認ワークフローを開始
5. 月次サマリーレポートを毎月末日に経理部長に送付

不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。
仮定した点は必ず"仮定"と明記してください。
数字と固有名詞は、根拠(出典/計算式)を添えてください。」

シナリオ2:採用エージェントによるスクリーニング自動化

中堅サービス業(従業員150名)での想定シナリオ。年間100名採用を目標とする成長期の企業では、採用書類選考に毎月30〜50時間を費やすことも珍しくありません。

Talent Acquisition Agentを使えば:応募書類をアップロード → エージェントが求人要件と照合し、スコアリング(技術スキル・経験年数・業務マッチ度)→ 上位候補者を人事担当者にリストアップ → 一次面接スケジュールの自動調整(Google Calendar / Outlookと連携)→ 面接後のメモをERPに記録。

# 採用スクリーニングエージェントへのプロンプト例

「今回の求人要件(エンジニア職)に対して以下のスクリーニングを実施してください:

【必須条件】
- Pythonの実務経験3年以上
- クラウド(AWS/Azure/GCP)いずれかの実務経験
- 日本語でのビジネスコミュニケーション能力

【優遇条件】
- AIエージェント/LLM関連の開発経験
- スタートアップや急成長企業での勤務経験

各候補者を以下のカテゴリに分類してください:
A(即面接)/ B(詳細確認後判断)/ C(見送り)

Cカテゴリの場合、理由を必ず記載すること。
不足情報があれば質問してから判断すること。」

シナリオ3:CX(顧客体験)の先回り対応

Oracle Fusion Agentic Applications for CXの目玉機能の一つが「先手を打つ」アプローチです。従来のCRMは「顧客がアクションを起こしてから対応する」リアクティブな設計でした。これに対し、CX向けエージェントアプリは:

  • Contract Compliance Workspace: 更新時期が近い契約を事前に検知し、リスクがある場合はアカウントマネージャーに自動アラート
  • Sales Opportunity Agent: 商談スコアの変動(急低下)を検知し、次のアクション提案を自動生成
  • Service Resolution Agent: 類似クレームの解決パターンをERPから参照し、サポート担当者に解決案を提示

これらは「AIがデータを見ながら、問題が起きる前に介入する」という設計思想です。個人的に注目しているのは、この「プロアクティブ」アプローチが、日本企業の「お客様に迷惑をかける前に気づく」という文化と親和性が高い点です。

Microsoft・Salesforceとの競合図

エンタープライズAIの覇権争いは、2026年に入って急速に具体化しています。主要3社の比較を整理します。

三社鼎立の現状

ベンダー主な製品強み弱み
OracleOCI Enterprise AI + Fusion Agentic Appsフルスタック統合(IaaS〜SaaS〜DB一体)、規制業種対応ベンダーロックイン、ライセンス費用
MicrosoftCopilot Studio + Dynamics 365Teams/Officeとの深い連携、既存顧客基盤Azureとの複雑な料金体系
SalesforceAgentforce(旧Einstein Agents)CRM特化の深さ、Slack連携ERP機能の限定性

3社の中でOracleが主張する最大の差別化ポイントは「フルスタックの統合度」です。SaaS・PaaS・IaaS・データベースを自社スタックで完結させているため、AIエージェントがシステム間の壁なしにデータにアクセスできます。一方で、Microsoft(Teams・Azure・Dynamics)もSalesforce(Slack・Heroku・MuleSoft)も同様の統合戦略を進めており、差異は縮まりつつあります。

「プラットフォームファースト」のトレードオフ

Futurum Groupなどの調査会社が指摘するのは、Oracle Fusionをフル活用するには「Oracleのエコシステムに深くコミットする必要がある」という点です。SAP ERPからOracleへの移行を検討する企業にとって、移行コストと長期的なベンダー依存リスクの天秤は、慎重に検討すべき経営判断です。

【要注意】日本企業がはまりやすい落とし穴

落とし穴1:「発表=即使える」という誤解

❌ 「GAと発表されたから来月から使える」

⭕ 「日本語対応の深度・自社のOracleライセンス状況・既存データ品質の確認が先」

なぜ重要か: 英語圏で発表されたエンタープライズAI機能は、日本語UI・日本の会計基準への対応・国内サポートレベルに時間差があることが多いです。研修先の情シス担当者から「英語のデモを見て感動したけど、日本語業務フローへの適用に苦労した」という話を何度も聞いています。

落とし穴2:ERPデータ品質の未整備

❌ 「AIエージェントを入れれば、現状のデータでも自動化できる」

⭕ 「エージェントが正確に判断するには、まずマスタデータの整備が必要」

なぜ重要か: Fusion Agentic Applicationsが「統合された企業データに安全にアクセス」するには、前提として品目マスタ・顧客マスタ・組織マスタが整合している必要があります。エージェントは不良データを自動修正しません。AI導入前に「データガバナンス」を整備するフェーズが必ず必要です。

落とし穴3:「Oracle=大企業向け」思考停止

❌ 「OracleはSAPと同じで、大手製造業や金融のもの」

⭕ 「OCI Enterprise AIは中堅・中小企業向けのSaaS経由での利用も増えている」

なぜ重要か: Oracle Fusion Cloudは従量課金のSaaSとして提供されており、物理サーバーへの大規模投資は不要になっています。ただし、日本市場での中小企業向け支援体制(パートナーSIer経由)は、大手向けに比べてまだ厚くない面もあります。

落とし穴4:競合比較を怠る

❌ 「Oracleが一番強いと聞いたから、他を見ずに決めた」

⭕ 「自社のCRM・ERP・コミュニケーションツール構成から、最もロックイン少なく統合できるベンダーを選ぶ」

なぜ重要か: Teams・Azure・Microsoft 365を既に全社導入している企業がOracleに乗り換えるコストと、Copilot StudioをDynamics 365に追加するコストでは、TCOが大きく変わります。「どのベンダーが優れているか」より「自社のスタックと相性が良いか」が本質的な問いです。

OCI Enterprise AIで使えるLLMとRAGの実装

「Intelligenceピラー」の具体的な機能として、OCI Enterprise AIはどのLLM(大規模言語モデル)を使えるのかを整理します。

対応モデルラインアップ

OCI上では、複数のLLMプロバイダーのモデルにアクセスできます(2026年4月時点の情報)。

  • Metaモデル群: Llama 3.xシリーズ(オープンウェイト、コスト効率が高い)
  • Cohereモデル: Command R+(RAGに最適化された設計)
  • Mistral AIモデル: Mistral系(欧州データ規制対応が強い)
  • Oracleカスタムモデル: 特定業務(財務・法務・HR)向けに微調整されたモデル群

注目すべきは、Oracle自身がOpenAIやAnthropicの競合に当たる会社への直接依存を避けつつ、オープンウェイトモデル(Llama等)を自社インフラ上でサービスとして提供している点です。これにより顧客は「特定のAI企業に依存しない」という選択肢を持てます。

RAG(検索拡張生成)の活用

OCI Enterprise AIのRAG機能は、Oracleの自社データベース(Oracle Autonomous Database等)と統合されています。これにより:

  • 社内の膨大な文書(マニュアル・過去の取引記録・会議議事録)をベクターデータベースに変換
  • ユーザーの質問に対してRAGで最も関連する社内情報を検索し、LLMへの入力に組み込む
  • 「幻覚(ハルシネーション)」を社内データに基づく回答で抑制する
# RAG活用例:社内ナレッジベースへの問い合わせ

質問例:「過去3年間の○○社との取引で、品質クレームがあった案件と
      その解決方法を教えてください」

RAGなしの場合: LLMが一般的な回答を生成(不正確)

RAGあり(OCI Enterprise AI)の場合:
 → ベクターDBを検索して○○社の取引記録を取得
 → 品質クレーム関連の文書・メール・解決レポートを特定
 → それらを根拠にした具体的・正確な回答を生成
 → 引用した文書のリンクを参照として提示

不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。
仮定した点は必ず"仮定"と明記してください。

この設計は、「AIが間違ったことを言ったらどうする」という懸念を持つ企業にとって特に重要です。RAGで社内データを根拠にした回答を生成することで、AIの信頼性を大幅に向上させることができます。

OCI Enterprise AIの「Controls」— 日本の規制業種が注目すべき理由

先日、金融系IT企業(従業員800名)のCISO(最高情報セキュリティ責任者)と話す機会がありました。「AIエージェントに自律実行させるのは怖い。何かあった時の責任の所在がはっきりしない」という懸念を持っておられました。これはまったく正当な懸念です。

OCI Enterprise AIの「Controls」ピラーは、まさにこの懸念に対応した設計です。

ガバナンス機能の3層構造

レイヤー機能規制対応ポイント
データ主権データがどのリージョン(国)で処理されるかを制御GDPR、個人情報保護法対応
監査ログAIエージェントの全アクションを記録・検索可能に保存金融規制(FISC、FSA指針)対応
アクセス制御エージェントがアクセスできるデータ範囲を職位・部署単位で制限内部統制・SOX法対応

「AIが暴走した時」を想定した設計

重要なのは「AIに何かあった時に止められるか」です。OCI Enterprise AIでは:

  • 人間承認ゲート: 金額・影響範囲が閾値を超えた場合は必ず人間の承認を要求
  • エスカレーション設定: 異常検知時に特定の担当者・部門長に自動通知
  • ロールバック機能: エージェントが実行した処理を一定期間内に取り消し可能
  • 稼働状況のリアルタイム監視: エージェントの行動ログをダッシュボードでモニタリング

正直に言うと、これらの設計がどこまで実際に機能するかは、POC(概念実証)を通じて自社のユースケースで検証するしかありません。「理論上は安全」と「実運用で安全」は別の話で、特に日本の監督官庁に説明責任を果たせるかどうかは、自社のコンプライアンス担当と詳細設計を詰める必要があります。

日本企業への示唆 — ERP×AIエージェント統合のロードマップ

3段階で考えるERP×AI化

100社以上の研修・導入支援を通じて見えてきたのは、ERP×AI化は段階的なアプローチが現実的だということです。

フェーズ1(3-6ヶ月): AIアシスト段階
既存ERPにChatGPT/Claude等のAPIを接続し、「データ読み取り→サマリー生成」「メール下書き自動化」など補助的用途から始める。投資リスクが低く、現場の受容性を確認できる。

フェーズ2(6-18ヶ月): 業務自動化段階
特定の繰り返し業務(請求書照合、発注提案、採用書類スクリーニングなど)でパイロット導入。成果を測定し、ROIが確認できた業務から横展開する。

フェーズ3(18ヶ月〜): エージェント統合段階
Oracle Fusion Agentic AppsやSalesforce Agentforceなどの「ERP内蔵エージェント」を評価・導入。この段階ではERPリプレースも視野に入ることが多い。

今すぐできること

# OCI Enterprise AIの評価に使える問いかけリスト

1. 自社で最も人手コストがかかっている繰り返し業務は何か?
   (請求書処理、発注承認、採用書類選考、問い合わせ対応…)

2. その業務に必要なデータは、現在どのシステムにあるか?
   (ERP、CRM、メール、スプレッドシート、紙…)

3. 現状のデータ品質は「AIが判断できる」レベルか?
   (マスタ重複、表記ゆれ、欠損値の状況を確認)

4. 規制・コンプライアンス上、AIが自律実行してよい範囲はどこまでか?
   (人間の最終確認が必要な閾値を決める)

5. 上記をもとに、Oracle/Microsoft/Salesforceの3社に対して
   POC(概念実証)提案を依頼する。

不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。
仮定した点は必ず"仮定"と明記してください。

Oracle AIが描く「アジェンティックERP」の将来像

Oracle CEOのサフラ・カッツ、CTO のラリー・エリソンが繰り返し語るのが「エージェントの時代」というキーワードです。OracleはFusion Agentic Applicationsを単なる「便利な追加機能」ではなく、「ERPの次のパラダイム」と位置づけています。

2027〜2028年を見据えたロードマップ

Oracleが公式コメントで示唆している将来の方向性(現時点での予測を含む):

  • エージェントの「学習」機能: 今は事前設定したルールで動くエージェントが、実際の業務パターンから学習して自律的にワークフローを改善するようになる
  • エージェント間の自律協調: 現在の「人間が設計したワークフロー通りに動く」から、「複数エージェントが自律的に役割分担して問題解決する」マルチエージェントオーケストレーションへ
  • 業界縦断のエージェントマーケットプレイス: サードパーティが開発した業界特化エージェントをOracle Cloud Marketplaceで調達できる仕組み
  • OCI AIとFusionの完全統合: 現状は「IaaS(OCI)」と「SaaS(Fusion)」が連携する設計だが、将来は完全にシームレスな一体型に

「5530億ドルの受注残」が意味するERP市場の大転換

OracleのRPO(残存業績義務)が前年比325%増の5530億ドルに達したことは、単に「Oracleが売れている」という話ではありません。これはAIクラウドインフラへの企業・政府機関の長期的なコミットメントが、急速かつ大規模に積み上がっていることを示しています。

100社以上の企業向け研修・支援の経験から感じるのは、2024年〜2025年が「ChatGPTを試す段階」だったとすれば、2026年は「基幹システムとAIを本格統合する投資判断をする段階」に移行しているということです。Oracleの受注残はその象徴と言えます。

ただし、5530億ドルが全て収益に変わるわけではありません。プロジェクト遅延・技術的な問題・顧客との契約見直しが発生する可能性は常にあります。投資家や経営判断者は、この数字を「将来の確定収益」ではなく「現時点の顧客コミットメント総量」として解釈する必要があります。

日本のERP市場への波及

日本市場では、ERP導入企業の多くがSAP(ドイツ発)またはOracle(米国発)のどちらかを中核に据えています。2026年に入り、SAP・OracleともにAIエージェント統合を強化したことで、日本のSIer(システムインテグレーター)も急速にAI対応のインテグレーション能力を求められるようになっています。

先日、大手SIerに勤める知人(Oracleの導入支援歴10年以上)からこんな話を聞きました。「今年に入ってから、クライアントの経営層が直接AIエージェント統合のRFPを出してくるようになった。2年前は情シスからの問い合わせだったのが、今は社長室から来る」と。この変化は、エンタープライズAIが経営アジェンダに完全に入ったことを示しています。

Oracleを選ぶべきか、選ばないべきか — 正直な評価

ここまで読んでいただいた方の中には「結局、Oracle使うべき?」という疑問を持っている方が多いはずです。研修先の経営者から「どれがいいかズバリ教えて」とよく言われるので、正直に評価を共有します。

Oracleを選ぶべき企業の特徴

  • すでにOracle Fusion CloudのERP/HCMを使っている(移行コストゼロでエージェント追加)
  • 金融・医療・公共など規制が厳しく、単一ベンダーの一元管理が必要
  • グローバル展開していてマルチリージョン対応が必要
  • ERPとCRMとHCMを同一ベンダーで統一したい
  • 大規模なAI学習インフラを内製したい(OCI GPUクラスター)

Oracleを選ばなくていい企業の特徴

  • Microsoft 365・Teams・Azure ADをすでに全社導入済み(MicrosoftのCopilot Studioの方が親和性が高い)
  • 従業員100名以下のスタートアップ・中小企業(コストとサポート体制のミスマッチ)
  • Salesforceを主軸にCRM運用しており、営業部門の変革が最優先(AgentforceをSalesforce内で使う方が早い)
  • 特定業務だけの自動化ならZapier・Make(旧Integromat)・Nexusのような特化ツールで十分

SAPユーザーはどうすべきか

日本の製造業・流通業には「SAP ERPを使っているが、AIエージェント統合を検討している」という企業が多くあります。この場合:

  • SAP Joule(SAPのAIアシスタント)を先に評価する — 既存SAPエコシステムとの親和性が最も高い
  • OCI Enterprise AIはSAP上で動かすLLMインフラとして活用する選択肢もある(OCI + SAP BTP連携が可能)
  • OracleへのERPリプレースは「AIのために」だけで決断せず、TCO・移行リスク・業務フィットを総合判断する

まとめ:今日から始める3つのアクション

  1. 今日やること: Oracle Fusion Agentic Applicationsの公式デモ動画(英語)を15分視聴し、自社業務で最も「自動化したい」業務を1つリストアップする
  2. 今週中: 自社の基幹システム(ERP/CRM)の主管部門と、「データ品質」と「繰り返し業務の工数」についてヒアリングを実施する
  3. 今月中: Oracle・Microsoft・Salesforceの3社にAIエージェント活用のPOC提案依頼を出し、自社スタックとの相性を比較評価する

次回は「SAP Jouleと Workday AIエージェントの比較」をテーマに、ERP別のAIエージェント戦略を詳しく解説します。


参考・出典


著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、X(旧Twitter)で活用法を発信(@SuguruKun_ai、フォロワー約10万人)。100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。

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佐藤傑
この記事を書いた人 佐藤傑

株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、X(旧Twitter)で活用法を発信(@SuguruKun_ai、フォロワー10万人超)。100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。著書累計3万部突破。SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。

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