結論: SamsungはCES 2026でGemini AIを2026年末までに約8億台のモバイルデバイスに搭載する計画を発表した。スマートフォンから冷蔵庫・ウォッシャー・エアコンまで全製品がAI Companionとして機能する時代が始まっている。
この記事の要点:
- 要点1: 2025年の4億台から2026年に8億台へ倍増——Gemini搭載デバイスが世界人口を超えるペース
- 要点2: スマートTV・冷蔵庫・洗濯機まで「AI Companion」化——家電のAI OS統合が始まった
- 要点3: 企業の端末調達・セキュリティポリシー・MDM管理が根本から変わる可能性がある
対象読者: 法人デバイス調達担当者・IT部門責任者・DX推進担当者
読了後にできること: 社内のデバイスポリシー見直しの論点を整理し、AI搭載端末に対するセキュリティガイドラインの草案を作れる
「会社のスマホやパソコンにAIが入ってきたら、どう管理すればいいんだろう…」
企業向けAI研修でここ最近、こんな声をよく聞くようになりました。今まで「ChatGPTをどう使うか」という話が中心だったのに、今年に入って「デバイス自体がAIになってきたとき、IT部門はどう対応するのか」という話が増えてきたんです。
その背景を決定づけたのが、2026年1月のCES 2026でSamsungが発表した「Gemini AI 8億台計画」です。2025年に4億台だったGemini搭載デバイスを、2026年末までに8億台に倍増させるという宣言。しかも対象はスマートフォンだけではありません。冷蔵庫・洗濯機・エアコン・スマートTVまで、「Samsung製品を全部AIにする」というスケールの話です。
この記事では、Samsung×Geminiの最新戦略の全貌と、日本企業のIT担当者・経営者が今すぐ考えるべきアクションをまとめます。
何が起きたのか——CES 2026発表の全体像
2026年1月のCES(Consumer Electronics Show)で、Samsung共同CEOのTM Roh氏が「First Look 2026」スピーチを行いました。その中でも最も注目を集めたのが、Gemini AIのデバイス展開計画です。
| 年 | Gemini搭載モバイルデバイス数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 2024年 | 約2億台(Galaxy AI初年度) | —— |
| 2025年 | 約4億台 | +100% |
| 2026年(目標) | 約8億台 | +100% |
この8億台という数字、実はモバイルデバイス(スマートフォン・タブレット・ウェアラブル等)に限定した数字です。同社が年間出荷するTV・家電・ディスプレイ等を含めると、実際に「Geminiと接続できるSamsung製品」はさらに多くなります。
AI Companionとは何か
SamsungはCES 2026で「AI Companion」というコンセプトを前面に出しました。これは単に「AIアシスタントが使えるデバイス」ではなく、デバイス間が連携してユーザーの生活をまるごとサポートするエコシステムのことです。
具体的にCES 2026で披露された事例を見ると:
- Home Companion: スマートTV上で料理番組を見ながら「このレシピ作りたい」と言うと、冷蔵庫が食材を確認し、オーブンに設定を送る
- Care Companion: 洗濯機がGeminiと連携し、衣類の素材タグをカメラ認識して最適な洗い方を自動設定
- Bespoke AI Refrigerator Family Hub: GoogleのGeminiを搭載した冷蔵庫——家電でGeminiを組み込んだ世界初の製品
100社以上の企業向け研修を行ってきた経験から言うと、この「デバイスエコシステム全体のAI化」は、コンシューマー向けだけの話ではありません。企業のオフィス家電・会議室設備にも同じ波が来ることは間違いなく、IT部門にとっては「管理対象が激増する」予兆でもあります。
Samsungのデバイス戦略——Gemini×Perplexity×Bixbyの3層構造
重要なのは、SamsungがGemini一本に全てを賭けているわけではないことです。MWC 2026(2026年3月)では「AI OS構想」が発表され、デバイス内のAI機能が3層に分かれていることが明らかになりました。
| 役割 | 担当AI | 主な機能 |
|---|---|---|
| 生成・創造 | Google Gemini | 文章生成、画像解析、質問応答、情報検索 |
| 検索・情報収集 | Perplexity | リアルタイム検索、ニュース収集、引用付き回答 |
| デバイス制御 | Bixby(Samsung独自) | 設定変更、アプリ操作、デバイス間連携 |
この構造は、企業がSamsung端末を導入する際の重要なポイントになります。「GeminiがON」の状態では、ユーザーが入力したテキストや音声がGoogleのサーバーに送信される可能性があります。機密情報を扱う部門では、どのAI機能をON/OFFにするか、MDM(Mobile Device Management)ポリシーで明確に規定する必要が出てきます。
Geminiを選ぶ理由——SamsungとGoogleの戦略的パートナーシップ
なぜSamsungはGeminiを選んだのでしょうか。技術的な理由だけでなく、ビジネス的な背景があります。
Samsung×Googleのエコシステム共生
SamsungはAndroidスマートフォン市場のトップシェアを持ち、Googleはその基盤であるAndroid OSとGeminiを提供しています。両社の関係は「競争」ではなく「共生」——Googleが最高のAIモデルを提供し、Samsungがそれを最も多くのデバイスに展開する、という役割分担が成立しています。
Samsung AI認知度の急上昇も見逃せません。TM Roh氏が発表した数字によれば、「Galaxy AI」ブランドの認知度は1年間で約30%から80%へと急上昇。つまり、Gemini搭載デバイスの普及は単なる機能追加ではなく、「AIスマートフォン」というカテゴリ確立への投資でもあります。
供給制約リスク
一方で正直に言うと、このアグレッシブな計画には逆風もあります。AI向けメモリチップ(HBM等)の供給不足が、エレクトロニクス業界全体のボトルネックになっているのです。皮肉なことに、Samsungはメモリチップの最大手メーカーの一つでもありますが、データセンター向けAI需要の急増が、コンシューマー向けチップの供給を圧迫しています。
「AI投資100兆円時代に、どのデバイスにどのAIが乗るかを把握することが、企業のリスク管理において必須になってきた」——AI研修現場の実感
日本企業への影響——3つの視点
AIをデバイス全体に組み込む動きは、日本企業のIT戦略に具体的にどう影響するでしょうか。100社以上の研修・コンサル経験から見えてきた3つの視点をお伝えします。
視点1: 情報漏洩リスクの新しい論点
従来の情報漏洩対策は「ChatGPTなどのウェブサービスに社外秘をコピペしないこと」が主でした。しかし今後は「デバイス自体がクラウドAIに接続している」前提で考える必要があります。
具体的に問題になりそうな場面:
- 会議室のSamsung製スマートTV(Gemini搭載)に向かって行われた会議音声がどこまで処理されるか
- 社用スマートフォンのGalaxy AIが自動でメールを要約・返信案を生成する際のデータ処理
- デバイス連携(冷蔵庫⇄スマホ⇄TV)で生じるデータフローの管理
視点2: MDMポリシーの更新が必要
多くの企業のMDM(端末管理)ポリシーは、「特定のアプリを禁止する」「外部ストレージをブロックする」という発想で作られています。しかし、AIがOSレベルで統合されると、「特定のAI機能だけをOFFにする」という細かい制御が必要になります。
現時点(2026年4月)での対応として推奨されるのは:
- 現行のMDMソリューション(Microsoft Intune、VMware Workspace ONE等)がGemini等のデバイスAI機能の制御に対応しているか確認する
- 新規端末調達時に「AI機能のプライバシー設定」を要件定義に含める
- 社員向けガイドラインに「デバイスAI」の項目を追加する
視点3: 生産性向上の機会でもある
リスクばかり強調してもフェアではないので正直に言います。Gemini搭載デバイスが普及することで、従業員の日常業務の生産性は確実に上がります。
実際に研修先でGalaxy AI搭載端末を試した担当者からは「外出先でメールを要約してもらうだけで、隙間時間の情報処理が全然違う」という声が多数出ています。社内規程でAI機能を完全にOFFにするのではなく、「業務利用OKの範囲」を明確化した上で活用を促進する方向が、競争力維持の観点からも望ましいでしょう。
【要注意】よくある対応ミスと回避策
失敗1: 「とりあえず全部禁止」で終わらせる
❌ AI機能を一律禁止して、従業員に抜け道を探させる
⭕ 使用可能な機能・NG機能を文書化し、定期的に見直す
なぜ重要か: 禁止するだけでは従業員は個人端末でAIを使い続けます。会社が「安全な活用方法」を示すことで、シャドーIT問題を防げます。
失敗2: 「Gemini = ChatGPT」と同一視する
❌ 「ChatGPTと同じように考えればいい」として既存ルールを流用
⭕ デバイスに統合されたAIはデータ処理のタイミング・範囲が異なることを理解し、別途ポリシーを作成
なぜ重要か: ウェブサービス型AIとデバイス統合型AIでは、音声・画像を含む常時収集リスクが全く異なります。
失敗3: 端末調達時にAI仕様を確認しない
❌ 「Samsungの最新機種だから大丈夫」と仕様確認をスキップ
⭕ 調達時に「どのAI機能がデフォルトでONになっているか」「MDMでの制御が可能か」を確認する
なぜ重要か: Gemini AIの搭載レベルは機種・地域によって異なります。「同じSamsung」でも機能差が大きい場合があります。
失敗4: 家電を「デバイス管理」の対象外にし続ける
❌ オフィスのスマートTV・空調等をIT管理対象外のまま放置
⭕ AIが統合された家電製品の通信先・プライバシー設定を把握し、業務用と個人用の境界を定義する
なぜ重要か: Gemini搭載の家電が会議室に置かれることで、従来の「端末管理」の概念が崩れます。
企業がとるべきアクション——今すぐできる3ステップ
AI導入支援の現場から、実務的なアクションを3つ提示します。
ステップ1(今週中): デバイス棚卸しとAI機能の現状確認
社内で使用されているSamsung端末(スマートフォン・タブレット・TV・家電)を一覧化し、Gemini等のAI機能がデフォルトでどのような設定になっているかを確認します。多くのGalaxy端末では、Galaxy AIはインストール後に有効化が求められますが、将来的に自動有効化が増える可能性もあります。
ステップ2(今月中): AI機能に関するポリシー草案を作成
以下の問いに答える形でポリシー草案を作成してみてください。
- Q1: 業務用端末でGemini AI機能(音声アシスタント・メール要約等)を使用することを認めるか?
- Q2: 機密情報(個人情報・営業情報等)を含む文章をGemini AIに入力することを禁止するか?
- Q3: AI搭載家電を会議室・応接室に設置することの可否と、その際の対応手順は?
ステップ3(3ヶ月以内): MDMソリューションとの連携確認・更新
導入中のMDMソリューションのベンダーに、「Gemini AI機能をデバイスレベルで制御できるか」を確認します。2026年中に各MDMベンダーがAI機能制御オプションを追加する見込みがあるため、ロードマップを把握しておくことが重要です。
今後の注目ポイント
Samsung×Gemini戦略が本格始動したことで、競合他社も動きを加速しています。AppleはSiri×Google Gemini連携を進めており(既報: 新Siri×Gemini連携|企業AIへの影響)、Microsoft Surface×Copilot、ソニー製品でのAI統合も進んでいます。
2026年末時点でGemini搭載デバイスが8億台に達した場合、世界人口の約10人に1人がGeminiと毎日接するデバイスを持つことになります。これはGoogleにとってはAI分野での最大のデータ収集基盤であり、Samsungにとってはハードウェアメーカーとしての地位を「AIプラットフォーマー」に格上げするチャンスです。
AI導入の文脈では、企業のITツール選定において「どのAIモデルがデバイスに統合されているか」が、端末選定の重要基準になっていくことは間違いありません。AI導入戦略の全体像については、AI導入戦略完全ガイドもあわせてご参照ください。
参考・出典
- Samsung to double number of mobile AI devices in 2026 — Computerworld(参照日: 2026-04-11)
- Scaling the Galaxy: Samsung Targets 800 Million AI-Enabled Devices by Late 2026 — Financial Content(参照日: 2026-04-11)
- Samsung introduced the vision of AI Companion — Samsung Magazine EU(参照日: 2026-04-11)
- サムスン、「AI OS構想」を発表!8億台拡大へ — すまほん!!(参照日: 2026-04-11)
- 家電初!サムスンがGoogle Gemini搭載のAI冷蔵庫をCES 2026で発表 — GetNavi(参照日: 2026-04-11)
まとめ:今日から始める3つのアクション
- 今日やること: 自社で使用中のSamsung端末(スマホ・TV・家電)を一覧化し、AI機能がデフォルトでどの設定かを1台確認してみる
- 今週中: 現行のMDMポリシーに「デバイスAI機能」に関する記載があるか確認し、なければ追加すべき項目をリストアップ
- 今月中: IT部門・法務・経営企画で「AI搭載デバイスのリスクとルール」について協議の場を設け、ポリシー草案を1枚作成する
次回予告: 次の記事では「企業のMDM最前線——AI搭載デバイス時代のセキュリティポリシー設計」をテーマに、具体的なルール作成のフレームワークをお届けします。
著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー約10万人。
100社以上の企業向けAI研修・導入支援。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。
SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。
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