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【2026年2月速報】Spotify「コード書かない開発者」宣言の衝撃|AI開発の未来

結論: Spotifyのトップ開発者は2025年12月以降「一行もコードを書いていない」—— AIコーディングエージェント「Honk」がソフトウェア開発の常識を根底から覆し始めた。

この記事の要点:
・Spotify共同CEO Gustav Söderström氏が決算説明会で「最も優秀な開発者はコードを書いていない」と公言
・内部AIツール「Honk」はAnthropic Claude Codeベースで、Slackからスマホで機能開発・バグ修正が可能
・1,500件以上のAI生成プルリクエストがマージされ、2025年だけで50以上の新機能をリリース

対象読者: AI活用で開発生産性を上げたいCTO・エンジニアリングマネージャー・中小企業のIT責任者
読了後にできること: 自社の開発チームでAIコーディングエージェント導入の検討を今日から始められる

「うちの一番優秀な開発者たちは、12月から一行もコードを書いていません」

2026年2月12日、音楽ストリーミング最大手Spotifyの決算説明会で、共同CEO Gustav Söderström氏が放った一言が、世界中のテック業界に衝撃を与えました。

誤解ではありません。バグが出て手が止まっているわけでもありません。Spotifyの最もシニアなエンジニアたちは、AIに「コードを書く」という行為そのものを委任し、自分たちは「AIを監督する」役割にシフトしたというのです。

この記事では、Spotifyの内部AIコーディングシステム「Honk」の全貌、それを支えるAnthropic Claude Codeの技術的背景、そして日本企業のソフトウェア開発チームが今すぐ検討すべきアクションまで、100社以上のAI研修・コンサル経験から得た実務的視点で徹底解説します。

何が起きたのか — ファクトの全体像

まず、Spotifyで起きていることを時系列で整理します。

日付 出来事 ソース
2025年後半 Spotify社内でAIコーディングエージェント「Honk」の本格運用を開始。Anthropic Claude Codeをベースに、Slack連携・Fleet Management機能を搭載 Spotify Engineering Blog
2025年12月 最もシニアな開発者たちが「手書きコード」を完全に停止。AIが生成したコードのレビュー・監督に役割を転換 Q4 2025決算説明会
2026年2月10日 Spotify Q4 2025決算発表。売上€45.3億(前年同期比+7%)、純利益€11.7億。通年売上€171.9億、純利益€22.1億。株価14%上昇 Spotify IR / TipRanks
2026年2月12日 共同CEO Söderström氏が決算説明会で「最優秀開発者は12月からコードを書いていない」と発言。内部ツールHonkの存在を公表 TechCrunch
2026年2月中旬 Spotify Engineering Blogで「Honk」の技術詳細を公開。1,500件以上のAI生成PRがマージされたことを報告 Spotify Engineering Blog

Spotify Q4 2025の業績 — AIが財務に与えた影響

Spotifyの業績は過去最高を更新しています。

  • Q4 2025 売上: €45.3億(前年同期比 +7%)
  • Q4 2025 純利益: €11.7億
  • 通年2025 売上: €171.9億(2024年の€156.7億から+9.7%)
  • 通年2025 純利益: €22.1億(2024年の€11.4億から約2倍
  • フリーキャッシュフロー: $27.8億(キャッシュバーナーから一転)
  • EPS: €10.77(2024年の€5.67から+90%)

もちろん、この業績改善のすべてがAIによるものとは言えません。価格改定やコスト最適化の効果も大きいでしょう。しかし、50以上の新機能を高速でリリースできた開発生産性の向上が、サブスクリプション収益8%増に貢献していることは間違いありません。

Honkの全貌 — Spotifyの社内AIコーディングシステム

「Honk」は、SpotifyがAnthropic Claude Codeをベースに構築した社内専用AIコーディングエージェントです。単なるコード補完ツールとは根本的に異なります。

Honkのワークフロー — Slackからコードを本番デプロイ

Söderström氏が説明した典型的なワークフローは、以下のようなものです:

  1. エンジニアが通勤中にスマートフォンでSlackを開く
  2. Slackで「iOSアプリのこのバグを修正して」とClaude(Honk)にメッセージを送信
  3. AIがコードを生成し、テストを実行し、新しいアプリバージョンをSlackに返送
  4. エンジニアがレビューして承認。オフィスに着く前に本番マージ完了

つまり、開発者の役割が「コードを書く人」から「AIの出力を監督し、品質を保証する人」へと根本的に変わったのです。

技術スタック — Claude Code × Fleet Management

Spotify Engineering Blogで公開された技術詳細によると、Honkのアーキテクチャは以下の通りです:

  • コアエンジン: Anthropic Claude Code — コード生成・理解・リファクタリングを担当
  • Fleet Management: 複数のAIエージェントを並列管理し、大規模なコードベースへの変更を協調的に実行
  • Slack統合: 自然言語での指示→コード生成→PR作成→レビュー依頼を一気通貫で処理
  • CI/CD連携: 既存のテスト・デプロイパイプラインに統合。AI生成コードも人間と同じ品質基準でチェック

数字で見る成果

  • 1,500件以上のAI生成プルリクエストがマージ済み
  • 50以上の新機能を2025年にリリース(AI Prompted Playlists、Page Match、About This Songなど)
  • 社内生産性指標が複数の測定で向上(具体的な数値は非公開)

Söderström氏自身も「30年のキャリアで、コードは常に仕事の中心だった。Claude Codeはそれを完全にひっくり返した」と述べています。

なぜこれが重要なのか — 技術的・業界的な意味

Spotifyの発表は、単なる一企業の取り組み以上の意味を持ちます。

1. 「AIコーディング」の臨界点が来た

これまでAIコーディングツールは、GitHub CopilotやCursorなど「開発者を補助するツール」として普及してきました。いわば「超優秀な自動補完」です。

しかしSpotifyのHonkは次元が違います。開発者がコードを書くのをやめ、AIが書いたコードを監督するというモデルです。これは「補助」ではなく「主客の逆転」です。

段階 ツール例 開発者の役割
第1段階: コード補完 GitHub Copilot(初期) コードを書く。AIが次の行を提案
第2段階: エージェント型 Cursor Agent、Claude Code CLI 要件を指示し、AIが複数ファイルを変更
第3段階: 完全委任型 Spotify Honk 自然言語で指示。AI がPR作成→テスト→デプロイ候補まで。開発者はレビューのみ

Spotifyが示したのは、第3段階が「理論」ではなく「実運用」で可能になったということです。

2. Anthropic Claude Codeの躍進

Spotifyの事例は、Anthropic Claude Codeの実力を世界に証明しました。実際、この発表の影響は株式市場にも波及しています。

2026年2月下旬、Anthropicの新しいAIツール群(Claude Code含む)の発表を受けて、インドのIT大手株が軒並み52週安値を更新しました。Infosys、TCS、Wiproなどが大幅下落。CLSA、HSBCがターゲットプライスを引き下げました。

市場が読み取ったメッセージは明確です:AIコーディングエージェントが成熟すれば、従来のオフショア開発・SIの需要構造が根本的に変わる

3. 「7年間のプラットフォーム投資」がカギだった

ただし、重要な文脈があります。Spotifyの成功は、一夜にして実現したものではありません。

あるMediumの分析記事が指摘しているように、Spotifyは過去7年間にわたってML基盤・パーソナライゼーション基盤・実験基盤を構築してきました。2026年1月にも、ML用とExperimentation用に分離した技術スタックについてのブログ記事を公開しています。

つまり、「Claude Codeを入れたらすぐにSpotifyのようになれる」わけではない。しっかりとしたコードベースの整理、アーキテクチャの標準化、CI/CDパイプラインの成熟があってこそ、AIエージェントが最大限の効果を発揮できるのです。

Spotifyの「AIファースト」データ戦略 — なぜ音楽データがAIの防御壁になるのか

Spotifyの決算説明会では、Honkの話題だけでなく、もう一つ重要な戦略が語られました。それは「独自データこそがAI時代の競争優位」という考え方です。

Söderström氏は、音楽の好みに関するデータが持つ特殊性を強調しました。

なぜSpotifyのデータは「AIの防御壁」なのか

ChatGPTやGeminiなどの大規模言語モデル(LLM)は、Wikipedia、ニュース記事、書籍など、インターネット上の膨大なテキストデータで訓練されています。これらは「事実」に基づく情報であり、正解が明確です。

しかし、音楽の好みには「正解」がありません。以下のような問いに、唯一の正解はないのです:

  • 「最高のワークアウト音楽は?」 → ヒップホップ? EDM? メタル?
  • 「集中力が上がる音楽は?」 → ローファイ? クラシック? アンビエント?
  • 「月曜朝に聴きたい曲は?」 → 地域・文化・年齢・気分で全く違う

Söderström氏によると、ヒップホップがアメリカで最も人気のジャンルである一方、ヨーロッパではEDM、スカンジナビアではヘビーメタルが支配的です。このような文化的・地理的な嗜好のニュアンスは、一般的なウェブデータからは学習できません。

Spotifyは6億7,500万人以上のユーザーの聴取行動データを保有しており、これは他のどのAI企業にも真似できない「プロプライエタリデータ」です。このデータでトレーニングしたレコメンデーションAIが、SpotifyのAI戦略の核となっています。

AI生成音楽への対応 — 機会とリスクのバランス

決算説明会ではアナリストからAI生成音楽についての質問も出ました。Spotifyの回答は以下の通りです:

  • アーティストやレーベルは、トラックのメタデータに制作方法を明記できる
  • プラットフォームとして、スパムや低品質なAI生成コンテンツの監視と排除を継続している
  • AI生成の創造性を否定はしないが、プラットフォームの品質・整合性を最優先にしている

これは、AI活用におけるガバナンスの好例です。技術を全面的に受け入れるのでも拒絶するのでもなく、「品質管理の枠組みの中でAIを活用する」という姿勢は、あらゆる業界のAI導入に参考になります。

AIコーディングエージェントの技術的な仕組み — 「なぜ今、ここまでできるのか」

Spotifyの事例を理解するには、AIコーディングエージェントがなぜ2025〜2026年に急速に実用化されたのかを知る必要があります。

コード補完からエージェントへ — 3つの技術的ブレイクスルー

ブレイクスルー1: コンテキストウィンドウの拡大

2023年時点のLLMは、一度に処理できるコードが数百行程度でした。2025〜2026年のモデル(Claude Opus 4.6、GPT-5.3など)は数万〜数十万トークンのコンテキストを扱えます。これにより、大規模なコードベース全体を「理解」した上でコードを生成できるようになりました。

ブレイクスルー2: ツール使用(Tool Use)能力

現代のAIモデルは、単にテキストを生成するだけでなく、外部ツールを呼び出すことができます。ファイルの読み書き、シェルコマンドの実行、APIの呼び出し、テストの実行。これらを組み合わせることで、「指示を受ける→コードを書く→テストを実行する→結果を確認する→修正する」というループを自律的に回せるようになりました。

ブレイクスルー3: 推論(Reasoning)能力の向上

Claude Opus 4.6やGPT-5.3などの最新モデルは、「考える」ステップを経てからコードを生成します。バグの原因を推論し、複数の修正案を比較検討し、最適な解決策を選ぶ。この「計画→実行→検証」のサイクルを自律的に回せることが、エージェント型AIコーディングの核心です。

Claude Codeの何がすごいのか

Spotifyが選んだAnthropicのClaude Codeは、以下の特徴を持ちます:

  • CLI(コマンドライン)ネイティブ: IDEに依存せず、あらゆる開発環境に統合可能
  • 長大なコンテキスト処理: 大規模リポジトリの構造を把握した上でのコード生成
  • セキュリティ意識: コード生成時にセキュリティベストプラクティスを考慮
  • マルチファイル変更: 1つの機能追加で複数のファイルにまたがる変更を一貫性を保って実行

Spotify Engineering BlogのSöderström氏のコメントが象徴的です:「30年のキャリアで、コードは常に仕事の中心にあった。Claude Codeはその関係性を完全にひっくり返した。」

賛否両論 — 楽観論と慎重論

楽観論: 「ソフトウェア開発が民主化される」

  • 開発速度の飛躍的向上: コードを書く時間がゼロになれば、アイデアから実装までのリードタイムが劇的に短縮される
  • エンジニアの価値向上: シニア開発者は「アーキテクチャ設計」「品質管理」「技術的意思決定」という、より高度な仕事に集中できる
  • 人材不足の解消: 少ないエンジニアでより多くのプロダクトを開発できるため、特に中小企業にとって朗報
  • 非エンジニアの参加: プロダクトマネージャーやデザイナーが自然言語でプロトタイプを作れるようになる可能性

慎重論: 「リスクを過小評価するな」

  • 品質リスク: AI生成コードに潜むバグ・セキュリティ脆弱性を、人間が見落とすリスクが増大する
  • スキルの空洞化: コードを書かない開発者が増えると、AIが間違えたときに修正できる人材がいなくなる
  • 雇用への影響: 米連邦準備制度理事会のCook理事が2026年2月に「AIが短期的な失業増加を引き起こす可能性」に言及
  • 依存リスク: 特定のAIプロバイダー(この場合Anthropic)への依存度が高まる
  • 再現性の問題: Spotifyは7年かけて基盤を整備した。中小企業が同じことをすぐにはできない

正直にお伝えすると、100社以上の企業にAI導入支援をしてきた経験から言えば、「AIがコードを書くから開発者はいらない」という解釈は危険です。Spotifyの事例が示しているのは「開発者の役割が変わる」であって「開発者が不要になる」ではありません。Söderström氏自身も「エンジニアリング、プロダクト、デザインのプラクティスが変わる」と述べており、人を減らすとは一言も言っていません。

他社の動向 — Spotifyだけではない

Spotifyの発表は最もインパクトがありましたが、同様の流れは業界全体で加速しています。

企業・サービス 動向 時期
OpenAI Codex macOS向けデスクトップアプリを公開。複数のAIコーディングエージェントを並列実行可能に 2026年2月
GitHub 「Agents HQ」を発表。リポジトリワークフロー内でマルチエージェントAIコーディングを実現 2026年2月
OpenAI GPT-5.3-Codex-Spark Cerebrasチップ搭載の高速エージェントコーディングツールをリリース 2026年2月12日
Anthropic Claude Code 新ツール群を発表。IT株市場に衝撃(インドIT大手が52週安値更新) 2026年2月

注目すべきは、AIコーディングエージェントの競争が「補完ツール」レベルから「自律型エージェント」レベルに完全にシフトしたことです。

日本企業への影響 — 3つの視点

1. SIer・受託開発への構造的インパクト

日本のIT業界の主流である「SIer型・多重下請け構造」は、Spotify型のAIコーディングが普及すると根本的な影響を受けます。

人月ベースのビジネスモデルでは、「同じ成果をより少ない人数で出せる」ことは売上減少に直結します。インドのIT大手株が急落したのは、まさにこのロジックです。

一方で、これはチャンスでもあります。AIコーディングエージェントを使いこなせるSIerは、少人数で高品質なソフトウェアを高速開発でき、単価を上げつつ利益率を改善できます。

2. ICT総研調査 — 日本の生成AI利用が急拡大

タイミングよく、ICT総研が2026年2月に発表した調査結果によると:

  • 2026年末の国内生成AI利用者数: 3,553万人(見込み)
  • ネットユーザーの54.7%が直近1年以内に生成AIサービスを利用
  • 2029年末には5,160万人まで拡大予測

つまり、日本市場でも生成AIの利用は「一部の先進企業」から「過半数の普通のビジネスパーソン」に移行しつつあります。開発チームだけの話ではなく、全社的なAI活用戦略の中で考える必要があります。

3. 中小企業にとっての朗報

大企業と違い、専任のエンジニアチームを持たない中小企業にとって、AIコーディングエージェントは「少人数でも高品質なソフトウェアを作れる」可能性を開きます。

実際、Claude CodeやGitHub Copilotは個人や小規模チームでも利用可能です。Spotifyのように大規模な社内ツールを構築する必要はなく、既存のSaaSツールを活用するだけでも開発生産性の向上は見込めます

「うちはSpotifyじゃないけど大丈夫?」— 企業規模別のリアリティチェック

Spotifyの事例を聞いて「うちの会社では無理だ」と感じた方も多いでしょう。規模別に、現実的にどこまでできるのかを整理します。

大企業(1,000人以上の開発チーム)

再現可能度: ★★★★☆

大企業には、Spotifyのような社内ツール構築のリソースがあります。ただし、以下のハードルがあります:

  • レガシーコードの壁: 数十年分の技術的負債があるコードベースでは、AIエージェントが正しくコードを理解・変更するのが難しい
  • セキュリティ・コンプライアンス: 金融・医療・公共系のコードをクラウドAIに送信できるか? オンプレミスデプロイの選択肢があるかが重要
  • 組織文化: 「コードレビューは人間がやるもの」という文化が根強い場合、AI生成コードへの抵抗感が障壁になりうる

推奨アプローチ: まず新規プロジェクトやマイクロサービスの1つでパイロット導入し、効果を測定してから横展開。

中堅企業(10〜100人の開発チーム)

再現可能度: ★★★☆☆

社内ツール構築のリソースはないが、SaaS型のAIコーディングツール(Cursor、GitHub Copilot、Claude Code CLI)を活用できます。

  • 有利な点: コードベースが比較的新しく小さいことが多く、AIエージェントが理解しやすい
  • 課題: CTO/テックリードがAIツールの評価・選定を主導する必要がある。ベンダーロックインのリスク管理も重要

推奨アプローチ: GitHub Copilot BusinessまたはCursor Proを全開発者に導入し、3ヶ月間の効果測定を実施。

スタートアップ・小規模チーム(1〜10人)

再現可能度: ★★★★★

実は、最もSpotifyのモデルに近い恩恵を受けられるのは小規模チームです。

  • 有利な点: 技術的負債が少ない、意思決定が速い、新しい技術への抵抗感が低い
  • 劇的な効果: 3人のチームがAIコーディングエージェントを使えば、10人分の開発生産性を実現できる可能性がある
  • 注意点: AIに依存しすぎて、コードの品質管理やアーキテクチャ判断をおろそかにしないこと

推奨アプローチ: Claude Code CLIを導入し、最初の1週間で日常的な開発タスクの50%以上をAIに委任してみる。

AIコーディングエージェント導入の「よくある失敗パターン」

100社以上のAI研修・コンサル経験から、AIコーディングツール導入で繰り返し見てきた失敗パターンを紹介します。

失敗パターン1: 「入れたら勝手に効果が出る」と思ってしまう

❌ AIコーディングツールを購入して全員に配布。「あとは各自で使ってね」で終わり
⭕ 導入前にワークフローを設計し、「どのタスクをAIに任せるか」を明確にした上で段階的に導入

なぜ重要か: ツールを入れただけでは、使い方が分からず放置される開発者が続出します。Spotifyは7年かけて基盤を整備した上でHonkを導入しました。ツール以前に「プロセスの準備」が必要です。

失敗パターン2: AI生成コードをレビューせずにマージする

❌ 「AIが書いたから大丈夫だろう」とコードレビューを省略
⭕ AI生成コードも100%人間がレビュー。むしろAI生成だからこそ、セキュリティ・ロジック面のレビューを強化

なぜ重要か: 当メディアでも先日取り上げた「AIエージェント暴走事故6件の全貌」でも明らかなように、AI生成コードにはバグや意図しない動作が含まれるリスクがあります。SpotifyもCI/CDパイプラインで自動テストを通しています。

失敗パターン3: 効果測定をしない

❌ 「なんとなく速くなった気がする」で評価
⭕ 導入前にベースラインを測定し、デプロイ頻度・リードタイム・バグ率をデータで比較

なぜ重要か: ROIを数字で示せないと、経営層の継続的な投資判断を得られません。生成AIのROI計算方法の記事も参考にしてください。

失敗パターン4: セキュリティ対策なしで機密コードをAIに渡す

❌ 社外秘のソースコードをそのままクラウドAIサービスに送信
⭕ 機密レベルに応じてツールの利用範囲を制限。必要に応じてオンプレミス対応のAIモデルを検討

なぜ重要か: AIコーディングツールの多くはクラウドで動作するため、コードの内容がプロバイダーに送信されます。社内AI利用ガイドラインの策定が不可欠です。

企業がとるべきアクション — Uravationからの提言

100社以上のAI研修・コンサル経験から、以下の5つのアクションを提言します。

アクション1: 現状の開発プロセスを「AIレディ」に整理する(今月中)

Spotifyが7年かけて基盤を整備したように、AIコーディングエージェントの効果はコードベースの整理度合いに比例します。

  • コーディング規約・スタイルガイドの文書化
  • CI/CDパイプラインの自動化率の確認
  • テストカバレッジの向上(AIが変更を加えても安全に検証できるように)
  • リポジトリのREADME・アーキテクチャドキュメントの充実

アクション2: AIコーディングツールの試験導入を開始する(今週中)

以下のいずれかを、まず1人〜3人の開発者で試験導入してみてください:

ツール 特徴 月額(目安)
GitHub Copilot Business VS Code統合、エージェントモード搭載 $19/ユーザー
Cursor Pro AI-first IDE、エージェントモード $20/ユーザー
Claude Code(Anthropic) CLI型、Spotify Honkのベース技術 API従量課金
OpenAI Codex マルチエージェント並列実行 API従量課金

アクション3: 「AI監督者」としてのスキルセットを定義する(今月中)

Spotifyの事例が示すように、開発者の役割は「コードを書く人」から「AIの出力を評価し、アーキテクチャ判断をする人」に変わります。必要なスキルセットも変わります:

  • コードレビュー力: AI生成コードの品質・セキュリティを素早く評価する能力
  • プロンプトエンジニアリング: AIに正確な指示を出す能力
  • アーキテクチャ設計力: 全体最適を判断する能力(AIは局所最適に陥りやすい)
  • テスト設計力: AI生成コードを検証するテスト戦略を設計する能力

アクション4: セキュリティ・ガバナンスルールを策定する(今四半期中)

AI生成コードの利用には固有のリスクがあります。最低限以下を策定してください:

  • 機密コードの取り扱い: どのリポジトリでAIツールの利用を許可するか
  • レビュー必須ルール: AI生成コードは必ず人間がレビューしてからマージ
  • 脆弱性スキャン: AI生成コードに対してSAST/DASTを自動実行
  • ライセンスチェック: AI生成コードのライセンス問題の対策

アクション5: 効果測定の仕組みを準備する(今四半期中)

Spotifyは「社内生産性指標が複数の測定で向上した」と述べていますが、具体的な数値は公開していません。自社で導入する際は、最初から測定基盤を用意してください:

  • デプロイ頻度(DORAメトリクス)
  • リードタイム(コミットからデプロイまでの時間)
  • バグ発生率(AI生成コード vs 手書きコード)
  • 開発者満足度(定性的なフィードバック)

まとめ — 「コードを書かない開発者」時代の始まり

Spotifyの宣言は、ソフトウェア開発の歴史における転換点として記憶されるかもしれません。

要点を整理します:

  • Spotifyの最優秀開発者は2025年12月以降コードを書いていない。AIコーディングエージェント「Honk」(Claude Codeベース)に完全移行
  • 1,500件以上のAI生成PRがマージされ、50以上の新機能をリリース。Q4 2025は売上€45.3億、純利益€11.7億と過去最高
  • ただし、Spotifyには7年間のプラットフォーム投資があった。「ツールを入れるだけ」では同じ効果は得られない
  • 日本企業は、まず開発プロセスの「AIレディ化」とツールの試験導入から始めるべき
  • 開発者の役割は「コーダー」から「AI監督者」に変わる。スキルセットの再定義が必要

今後の注目ポイント:

  • Spotifyが今後どのレベルまでAI活用を拡大するか(非エンジニア職への展開など)
  • 他の大手テック企業がどこまで追随するか(Google、Meta、Amazonなど)
  • AIコーディングエージェント市場の競争激化(OpenAI Codex vs Claude Code vs GitHub Copilot)
  • 日本のSIer業界への影響がいつ顕在化するか

あわせて読みたい:

参考・出典


次回予告: 次の記事では「AIコーディングエージェント実践比較 — Claude Code vs Copilot vs Cursor、どれを選ぶべきか」をテーマに、実際の開発タスクでの比較検証をお届けします。


著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー10万人超。
100社以上の企業向けAI研修・導入支援。著書累計3万部突破。
SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。

ご質問・ご相談は お問い合わせフォーム からお気軽にどうぞ。

この記事を書いた人 佐藤傑

株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、X(旧Twitter)で活用法を発信(@SuguruKun_ai、フォロワー10万人超)。100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。著書累計3万部突破。SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。

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