OpenAIは2026年7月9日、次世代モデル「GPT-5.6」の一般提供開始と同時に、新しいワークプレイス向けエージェント「ChatGPT Work」を発表した。接続したアプリやファイルを横断して文脈を集め、資料・スプレッドシート・プレゼン・簡易Webアプリまで仕上げてくれる新製品で、Anthropicが7月7日にWeb・モバイルへ拡大したばかりの「Claude Cowork」と、同じ「職場のAIエージェント」という土俵で正面から競合する。
- 要点1: ChatGPT WorkはSlack・Microsoft Teams・Google Drive・SharePoint・Salesforceなどの接続アプリからコンテキストを集め、文書・スプレッドシート・プレゼン資料・簡易Webアプリを作成する新エージェント
- 要点2: 提供はまずMac/Windowsのデスクトップアプリで開始し、Web・モバイルはPlus・Pro・Business・Enterprise・Eduへ数日かけて順次展開される
- 要点3: 高速化モード「Ultra」はChatGPT WorkではPro・Enterpriseのみ利用可。9割超が非エンジニア業務という利用データを公表した「Claude Cowork」と、機能・提供範囲が驚くほど似ている
対象読者: ChatGPTまたはClaudeを業務導入済み・検討中の経営者、情報システム部門、DX推進担当者
読了後にできること: 自社にとってChatGPT WorkとClaude Coworkのどちらを優先的に検証すべきか、契約プラン別に判断できるようになる
「AIエージェントに”作業”を丸ごと任せる」という発想は、この1年でコーディングの世界からオフィスワーク全体に広がってきた。Claude Codeのようなコーディングエージェントの成功体験を、資料作成やデータ整理といった非エンジニア業務にも展開する競争が、2026年7月に入って一気に加速している。
7月7日にAnthropicがClaude CoworkをWeb・モバイルに拡大したかと思えば、その2日後の7月9日、OpenAIがGPT-5.6の一般提供と同時に「ChatGPT Work」を投入した。両社とも「複数のツールを横断してコンテキストを集め、完成品を返す」という同じコンセプトを掲げており、AI企業同士の競争の主戦場が「コーディング」から「オフィス業務全般」へ移りつつあることを象徴する動きだ。
この記事では、公式発表と複数の一次報道をもとに、ChatGPT Workが何をできる製品なのか、Claude Coworkと何が同じで何が違うのか、企業としてどちらをどう検討すべきかを整理する。
何が起きたのか——7月9日の発表を時系列で整理
ChatGPT WorkとClaude Coworkの動きを時系列で並べると、この2週間でAI各社の「非エンジニア業務向けエージェント」競争が一気に表面化したことが分かる。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2026年1月 | Claude Coworkがデスクトップアプリとして先行開始(Anthropic) |
| 2026年2月10日 | Claude CoworkがWindowsに対応、macOS版と機能パリティに |
| 2026年6月26日 | GPT-5.6 Sol Ultraが「信頼できる提携先」限定でAPI/Codexの先行プレビューを開始 |
| 2026年7月7日 | Claude CoworkがWeb(claude.ai)・iOS/Androidモバイルアプリに拡大。Max契約者向けにベータ開始 |
| 2026年7月9日 | GPT-5.6(Sol・Terra・Luna)が一般提供開始。同時にOpenAIが新製品「ChatGPT Work」を発表 |
生成AIの最新モデル動向や一般提供の経緯そのものについては、GPT-5.6が7月9日解禁|「選別提供」はなぜ13日で終わったかで詳しく解説している。ChatGPT活用の全体像はChatGPT業務活用完全ガイドも参考にしてほしい。
ChatGPT Workとは何か——できることを整理
ChatGPT Workは、OpenAIの公式ページで「GPT-5.6を搭載し、チームのツールから集めたコンテキストを束ねる」エージェントと説明されている。接続したアプリ・ファイル・デスクトップアプリを横断して文脈を集め、方針を立て、実行し、仕上がった資料を返す、という一連の流れを担う点が最大の特徴だ。
- 接続できる対象: Slack、Microsoft Teams、Google Drive、SharePoint、メール、カレンダー、CRM(Salesforceなど)、プロジェクト管理ツール(Asanaなど)、GitHub、HubSpot、Airtable、さらにOracleやDatabricksといった社内データ基盤まで、公式ページや複数メディアの報道で言及されている
- 作れるもの: ドキュメント、スプレッドシート、プレゼン資料、レポート、簡易Webアプリ
- 継続実行: 大きな依頼を小さなステップに分解しながら、数時間単位で作業を継続できる。定期実行タスク(Scheduled Tasks)を使えば、顧客フィードバックの監視や資料の定期更新といったルーティン業務も任せられる
- 管理者統制: Enterprise・Eduのワークスペースでは、管理者が先に有効化したアプリだけを従業員が接続できる仕組みになっており、権限管理を効かせられる
ここで混同しやすいのが、2026年7月6日にExcel・Sheets出力が課金化されたばかりの既存機能「ChatGPTエージェント(Workspace Agents)」だ(関連記事: ChatGPTエージェント課金化|Excel/PPT無料期限)。こちらはChatGPTのチャット画面内で”エージェントモード”をオンにして単発のタスクを実行する既存機能だ。対してChatGPT Workは、複数アプリを横断してコンテキストを集め、数時間がかりの案件を独立したワークスペースとして進める新しい製品ラインという位置づけになる。両者を混同して社内に案内すると現場が混乱するので注意したい。
使えるのはいつ・どのプランか——展開スケジュール
OpenAI公式ページの記載によれば、提供は「まずデスクトップ、その後Web・モバイル」という順番で進む。
| プラットフォーム | 提供開始時期 | 対象プラン |
|---|---|---|
| Mac/Windowsデスクトップアプリ | 2026年7月9日(即日) | 公式ページの表現では全プラン |
| Web(chatgpt.com) | 数日以内に順次展開 | Plus・Pro・Business・Enterprise・Edu |
| モバイルアプリ(iOS/Android) | 数日以内に順次展開 | Plus・Pro・Business・Enterprise・Edu |
なお海外メディアの報道では、Web・モバイルの提供順序について「Pro・Enterprise・Eduが先行し、Plus・Businessが数日後に続く」と記す媒体もあり、細部の記述には報道間で揺れがある。無料/Goプランでの取り扱いも含め、自社契約でいつ使えるようになるかは、必ずChatGPTの管理画面・公式ヘルプセンターの案内を確認してほしい。
Ultra modeとの関係——ChatGPT WorkとCodexでの違い
GPT-5.6には、複数のサブエージェントを連携させて重い作業を高速にこなす「Ultra」モードが用意されている。GPT-5.6 Ultra mode徹底解説で扱った通り、CodexではPlus以上の契約で利用できるが、ChatGPT Workでは対象がさらに絞られ、Pro・Enterpriseプランのみが対象と報じられている。ChatGPT Workの標準運用は通常モードでも十分こなせる設計だが、大規模な資料作成や複数部門にまたがる調査など重い依頼を急ぎたい場合は、Ultraが使えるプランかどうかが選定基準の一つになる。
Claude Coworkとの競合構図——同じ土俵に立つ2つのエージェント
ChatGPT WorkとClaude Coworkは、発表のタイミングも近く、コンセプトも酷似している。両者を並べると、AI各社が「非エンジニアの日常業務」を次の主戦場と見ていることがよく分かる。
| 項目 | ChatGPT Work(OpenAI) | Claude Cowork(Anthropic) |
|---|---|---|
| 発表・展開時期 | 2026年7月9日に新製品として発表 | 2026年1月にデスクトップアプリで先行開始、7月7日にWeb・モバイルへ拡大 |
| 対応デバイス | Mac/Windowsデスクトップアプリが先行、Web・モバイルは数日以内に順次展開 | デスクトップアプリが起点、7月7日からWeb(claude.ai)・iOS/Androidにも対応し端末をまたいで作業を引き継げる |
| データ接続 | Slack・Microsoft Teams・Google Drive・SharePoint・Salesforceなどの接続アプリ。管理者が許可アプリを制御 | Claude本体のConnectors機能(MCP経由)をそのまま利用。Slack・Google Driveなどに対応し、Team/Enterpriseでは管理者が有効化・権限範囲を制御 |
| 作れるもの | 文書・スプレッドシート・プレゼン資料・レポート・簡易Webアプリ | ファイル整理・文書作成・リサーチ統合など「仕事まわりの仕事」全般 |
| 高速化オプション | Ultraモード(ChatGPT WorkではPro・Enterpriseのみ) | 同等の高速化モードは公式に確認できず(2026-07-09時点) |
| 公開されている利用実態 | 利用比率などの公式データは未公表(2026-07-09時点) | Anthropicが「利用の9割超が非エンジニア業務」「業務プロセス運用が33.4%で最大カテゴリ、ソフトウェア開発は8.7%にとどまる」と公表 |
| 対象プラン | Plus・Pro・Business・Enterprise・Edu(デスクトップは提供開始時点で全プラン) | Max契約者からベータ開始、順次対象プラン拡大中 |
Claude Coworkの利用実態データについてはClaude Cowork新展開|9割超が非エンジニア業務で詳しく取り上げている。
用語ミニ解説——押さえておきたい5つの言葉
ChatGPT WorkやClaude Coworkのニュースを読むときに引っかかりやすい用語を、5つだけ先に整理しておく。
- ワークプレイスエージェント: チャットで質問に答えるだけでなく、複数のツールを横断して調べ物・作業・成果物の作成までをまとめて任せられるAIエージェントの総称。ChatGPT WorkもClaude Coworkもこの分類に入る
- コネクタ(Connectors): SlackやGoogle Driveなど外部サービスとAIを安全につなぐ仕組み。多くはMCP(Model Context Protocol)という共通規格の上に実装されている
- サブエージェント: 1つの大きな依頼を複数の小さな作業に分解し、それぞれを並行して処理する仕組み。GPT-5.6のUltraモードはこの仕組みで処理速度を上げている
- Scheduled Tasks(定期実行タスク): 「毎週月曜に先週のSlackを要約する」のように、同じ作業を決まったタイミングで自動的に繰り返す機能
- ワークスペース管理者権限: Enterprise・Eduプランなどで、どのアプリを接続してよいか・どこまでの操作を許可するかを、従業員個人ではなく管理者側が一括で制御できる仕組み
評価が分かれるポイント——期待できることと、慎重に見るべきこと
期待できる点は明確だ。両社とも「チャットで聞いて終わり」から「複数アプリを横断して完成品を返す」への転換を明言しており、資料作成や情報収集にかかる下準備の時間を大きく圧縮できる可能性がある。特に、Slack・メール・CRMなど社内に散らばった情報を一つの成果物にまとめる作業は、これまで人手でしかできなかった領域だ。
一方で慎重に見るべき点もある。第一に、両製品ともローンチ直後で、実務での再現性がまだ十分に検証されていないこと。海外メディアの初期レビューでは「定型業務の安定感はGPT-5.6系が上、生の推論力はAnthropic系が上」という評価も出ており、優劣は用途次第で変わるというのが実情だ。第二に、接続アプリの範囲が広がるほど、社内データへのアクセス権限設計とログ管理の重要性も増す。管理者による許可アプリの絞り込みや権限範囲の設定は、導入前に必ず設計しておく必要がある。
日本企業への影響——どちらを、どう使い分けるか
日本企業にとっての実務的な論点は「ChatGPT Workか、Claude Coworkか」の二択ではなく、「自社の契約プラン・既存ツール構成でどちらが早く効果を出せるか」だ。すでにMicrosoft 365やGoogle Workspaceを中心にSlack・Teams・Salesforceを使っている組織はChatGPT Workの接続先と相性が良く、すでにClaude Codeやエンタープライズ契約でAnthropicのConnectorsを整備済みの組織はClaude Coworkの方が導入コストを抑えやすい。
いずれの場合も、いきなり全社解放するのではなく、まずは総務・広報・営業事務など「資料作成・情報整理」の比重が大きい部門で小さく試し、接続アプリの権限範囲とログの残し方を先に決めてから展開範囲を広げるのが安全だ。100社以上のAI研修・導入支援の現場でも、いきなりの全社解放より部門単位のスモールスタートの方が定着しやすいという傾向は繰り返し見られる。
また、SlackやSalesforceなど社内の機密情報が集まるツールにエージェントを接続する以上、情報システム部門・法務部門を巻き込んだ事前レビューは避けて通れない。「誰の依頼で、どのツールの、どの範囲のデータに、どんな操作(閲覧のみか編集も含むか)を許可するか」を最初に文書化しておくと、後から利用範囲を広げる際の判断もぶれにくくなる。
企業が今日から確認すべき3つのこと
- 契約プランの提供時期を確認する: 自社のChatGPT/Claudeの契約プランが、デスクトップ/Web/モバイルのどの提供タイミングに該当するか、管理画面のお知らせを確認する
- 接続アプリの棚卸しをする: Slack・Google Drive・Salesforceなど、エージェントに接続を許可してよい社内ツールと、許可する操作範囲(閲覧のみ/編集可等)を情報システム部門で事前に整理する
- 小さく試す業務を1つ決める: 全社解放ではなく、資料作成や情報整理の負荷が高い部門で1つの業務を選び、導入前後の作業時間を実際に測ってみる
よくある質問
Q1. ChatGPT Workは既存の「ChatGPTエージェント」と同じ機能ですか?
A. 別物だ。既存の「ChatGPTエージェント(Workspace Agents)」はチャット画面内で単発タスクを実行する機能で、Excel・Sheets出力は2026年7月6日に課金化された。ChatGPT Workは接続アプリを横断して数時間規模の案件を進める新しい製品ラインという位置づけになる。
Q2. 無料プランでもChatGPT Workは使えますか?
A. 公式発表時点(2026年7月9日)では、無料/Goプランでの提供可否は明言されていない。公式ページは「デスクトップは提供開始時点で全プラン」としつつ、Web・モバイルの対象プランとしてPlus以上を明記しており、無料プランでの取り扱いは今後の公式ヘルプセンター更新を確認する必要がある(2026-07-09時点で公式未記載)。
Q3. Claude Coworkとどちらを先に検証すべきですか?
A. 既に使っているツール構成で決めるのが早い。Microsoft 365・Slack・Salesforce中心ならChatGPT Work、Anthropicのエンタープライズ契約やConnectorsを整備済みならClaude Coworkから検証するのが合理的だ。
Q4. Ultraモードは必須ですか?
A. 必須ではない。通常モードでも大半の資料作成・情報整理はこなせる設計で、Ultraは複数部門にまたがる大規模案件などを急ぎたい場合の高速化オプションだ。ChatGPT WorkではPro・Enterpriseのみが対象になる。
まとめ
ChatGPT WorkとClaude Coworkは、発表時期も機能コンセプトもほぼ重なる形で市場に投入された。どちらが優れているかを急いで決めるより、まず自社の契約プランと既存ツール構成を確認し、小さな業務で試してから展開範囲を広げる進め方が現実的だ。
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- GPT-5.6が7月9日解禁|「選別提供」はなぜ13日で終わったか — GPT-5.6一般提供の経緯を時系列で解説
- Claude Cowork新展開|9割超が非エンジニア業務 — Anthropicが公表した利用実態データを深掘り
- GPT-5.6 Ultra mode徹底解説|コスト増に要注意 — 高速化モードの仕組みとコストを詳しく解説
参考・出典
- ChatGPT Work with GPT-5.6 — OpenAI公式(参照日: 2026-07-10)
- OpenAI releases GPT-5.6 and ChatGPT Work tool — Axios(2026-07-09)
- OpenAI Debuts ChatGPT Work Workplace AI Agent With GPT-5.6 — Forbes(2026-07-09)
- Claude Cowork公式ブログ(Web・モバイル拡大) — Anthropic公式(2026-07-07)
- Claude Cowork expands to mobile and web — TechCrunch(2026-07-07)
- Use connectors to extend Claude’s capabilities — Anthropic Help Center(参照日: 2026-07-10)
著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー約10万人。
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