3月31日でプロモーション終了、7月に全プラン値上げ — 中小企業が動くなら今
3月9日、Microsoftが「Wave 3」と呼ぶ大型アップデートを発表した。中身を見て、正直驚いた。
Copilotの中にAnthropicのClaudeが選べるようになった。AIが自律的にタスクをこなす「Copilot Cowork」が登場した。そして、7月からはMicrosoft 365のBusinessプランに値上げが入り、その代わりにCopilot Chat機能の強化やセキュリティ機能が標準搭載される。
変化が多すぎて、何から手をつけていいか分からない。そんな声が、100社以上のAI研修・導入支援を手がけてきた現場でも急増している。この記事では、中小企業の経営者・IT担当者が「結局どうすればいいのか」を判断できるよう、料金・機能・スケジュールの全体像を整理した。
Wave 3で何が変わったのか
2026年3月9日、Microsoftは公式ブログでMicrosoft 365 Copilotの大規模アップデート「Wave 3」を発表した。変更点は大きく3つある。
1. Claudeモデルのサポート開始
これまでCopilotの裏側で動いていたのはOpenAIのGPTモデルだけだった。Wave 3からは、AnthropicのClaude 3.5 SonnetとClaude 4 Opusが選択肢に加わった。Word、Excel、PowerPoint、Teams、Outlookのすべてで、GPTとClaudeを切り替えられる。
「モデル選択」という概念自体が新しい。これまでは「AIが1つ」だったのが、用途に応じて使い分けられるようになった。長文の構造化や要約にはClaudeが強く、データ分析やコード生成はGPTのほうが安定する——といった使い分けが、IT部門の判断なしに現場レベルで可能になる。
2. Copilot Cowork — AIが「同僚」として働く
Wave 3の目玉がCopilot Coworkだ。従来のCopilotは「質問すれば答えてくれるアシスタント」だった。Coworkは違う。指示を出すと、AIが自分でタスクを分解し、複数のアプリをまたいで作業を完了させる。
具体的にできることを整理する。
| タスク | 従来のCopilot | Copilot Cowork |
|---|---|---|
| 会議準備 | 「明日の会議の議題をまとめて」→ テキスト生成 | 参加者のメール・過去の議事録・関連ファイルを自動収集 → ブリーフ資料を作成 → Teamsで共有 |
| レポート作成 | 「売上データをグラフにして」→ Excel内で処理 | Excelからデータ取得 → PowerPointでレポート作成 → 上司にメール送信のドラフトまで |
| リサーチ | 「競合の最新動向を教えて」→ テキスト回答 | 社内SharePointの資料 + Web検索 → 引用付きリサーチメモを作成 → 関係者にTeamsで共有 |
裏側ではAnthropicのClaude技術とMicrosoft独自の「Work IQ」が連携している。Work IQは、社内のメール・ファイル・会議情報を横断的に理解するインテリジェンスレイヤーだ。だから「あの件のファイル」のような曖昧な指示でも、文脈を読んで正しいファイルを見つけられる。
現時点ではResearch Preview(限定公開)の段階で、「Frontier」プログラム経由で3月中に対象が拡大される予定だ。一般提供は、5月1日リリースのMicrosoft 365 E7スイートに含まれる見込み。
3. Agent Modeの本格展開
Word・Excel・PowerPointに搭載されたAgent Modeも見逃せない。これはCopilotが「聞かれたことに答える」のではなく、自分から「次にこうしましょう」と提案し、ユーザーの承認を得ながら作業を進めるモードだ。
例えばWordでは、SharePointライブラリやOneDriveフォルダを参照しながらプレゼン資料を自動生成できる。Excelでは、データの異常値を検出して「この数字、前月比で大きく乖離していますが確認しますか?」と聞いてくる。
Agent Modeは現在、Microsoft 365 Copilotの有料ライセンス($21〜$30/ユーザー/月)が必要。無料のCopilot Chatでは使えない。
料金改定の全体像 — 3つのタイミングで変わる
ここが最も複雑で、最も重要なポイントだ。料金変更は3つの時期に分かれている。
第1段階: 3月31日 — プロモーション価格の終了
2025年12月のCopilot Business提供開始から続いていた割引キャンペーンが、3月31日で終了する。
| プラン | プロモーション価格(〜3/31) | 通常価格(4/1〜) | 差額 |
|---|---|---|---|
| Copilot Business(単体) | $18/ユーザー/月 | $21/ユーザー/月 | +$3 |
| Business Standard + Copilot(バンドル) | $22/ユーザー/月 | $33.50/ユーザー/月 | +$11.50 |
| Business Premium + Copilot(バンドル) | $32/ユーザー/月 | $43/ユーザー/月 | +$11 |
50人規模の会社がBusiness Standard + Copilotバンドルを使っている場合、プロモーション終了で月額575ドル(約8.6万円)のコスト増になる。年間では約103万円。これは無視できない金額だ。
第2段階: 7月1日 — Businessプラン値上げ+機能追加
7月1日からは、Copilotの有無に関係なく、Microsoft 365のBusinessプランが値上がりする。Microsoft公式の料金表によると、変更は以下の通りだ。
| プラン | 現行価格 | 7月1日〜 | 値上げ幅 |
|---|---|---|---|
| Business Basic | $6.00/ユーザー/月 | $7.00/ユーザー/月 | +16% |
| Business Standard | $12.50/ユーザー/月 | $14.00/ユーザー/月 | +12% |
| Business Premium | $22.00/ユーザー/月 | 据え置き | 変更なし |
値上げと引き換えに、以下の機能がプランに標準搭載される。
- Copilot Chat強化 — Word・Outlook・Teams内でのAIチャット機能の向上
- Copilot Chat Analytics — 組織内のCopilot利用状況を可視化するダッシュボード
- Microsoft Defender for Office Plan 1(E3/Business Standard以上)— メールとドキュメントのセキュリティ保護
- URL time-of-click保護(E1/Business Basic以上)— フィッシングリンクの検出
ここで重要なのは、これはフルCopilotの統合ではないということだ。Agent ModeやCopilot Coworkは含まれない。あくまで「Copilot Chat」の基本的なAIアシストとセキュリティ機能が全員に行き渡るという位置づけだ。
Business Premiumが据え置きなのは注目に値する。セキュリティ機能がもともと充実しているため、今回の追加パッケージの恩恵が他プランに比べて限定的だからだろう。
第3段階: 5月1日 — E7スイートの登場(大企業向け)
大企業向けには、Microsoft 365 E5 + Copilot + Agent 365を統合したE7スイートが5月1日から提供される($99/ユーザー/月)。中小企業(300人以下)には直接影響しないが、取引先の大企業がE7に移行することで「AIエージェント経由のやり取り」が増える可能性がある。
日本の中小企業にとって何が変わるのか
ここからは、企業向けAI研修・導入支援で見てきた日本の中小企業の実態に照らして分析する。
変化1: 「AI使う・使わない」の選択肢が狭まる
7月以降、Microsoft 365を使っている時点でCopilot Chatの強化版が入ってくる。料金に含まれている以上、使わなければ損だ。
AI導入を検討中の企業にとっては、これはチャンスでもある。追加投資なしで、社員全員がAIの基本操作を体験できるからだ。AIエージェント導入完全ガイドで紹介しているような段階的な導入ステップを踏みやすくなる。
変化2: 「Copilot追加購入」の判断が複雑になる
7月以降の料金体系では、基本プランに含まれるCopilot Chat機能と、有料アドオン($21/月)のフル機能の差が重要になる。
| 機能 | 基本プラン(7月〜標準搭載) | Copilot Business($21/月) |
|---|---|---|
| Copilot Chat(Web検索ベース) | ✅(強化版) | ✅ |
| 利用状況分析(Analytics) | ✅ | ✅ |
| Word・Excel・PPT内のAI編集 | ❌ | ✅ |
| Agent Mode | ❌ | ✅ |
| Copilot Cowork | ❌ | ✅(E7で提供予定) |
| Claudeモデル選択 | ❌ | ✅ |
| SharePoint・OneDrive連携 | ❌ | ✅ |
研修の現場でよく聞くのは「全員分買うべきか、一部だけでいいか」という質問だ。正直、答えは「全員には要らない」ことが多い。実務で効果が大きいのは、営業・企画・管理部門のドキュメントワークが多い職種。現場作業中心の社員にはCopilot Chatの基本機能で十分だ。
変化3: IT導入補助金が使える可能性
2026年度のIT導入補助金では、AI・DX関連ツールの補助率が最大75%に引き上げられている。Microsoft 365 CopilotやChatGPT Teamが補助対象に含まれているため、年間のCopilotライセンス費用の大部分を補助金でカバーできる可能性がある。
詳しくはAI導入補助金 完全攻略ガイドで解説しているが、申請期限が設定されているため、検討中なら早めに動いたほうがいい。
3月末までにやるべきこと — 実務チェックリスト
プロモーション終了まで残り約2週間。具体的に何をすべきか整理した。
チェック1: 現在の契約状況を確認する
Microsoft 365管理センター(admin.microsoft.com)にアクセスし、以下を確認する。
- 現在のプラン名(Business Basic / Standard / Premium)
- ユーザー数
- Copilotアドオンの有無
- 契約更新日
年間契約の更新が4月以降に来る場合、プロモーション価格で契約を前倒しできるか、Microsoftパートナーまたは販売代理店に相談する価値がある。
チェック2: Copilot導入の要否を判断する
判断基準はシンプルだ。
- 今すぐ導入すべき企業: Word・Excel・PowerPoint・Outlookを日常的に使い、メール処理・資料作成・データ整理に月20時間以上費やしている社員が複数いる
- 7月まで待ってよい企業: Microsoft 365は使っているが、主にTeams通話とファイル共有だけ。ドキュメントワークは少ない
- 不要な企業: Microsoft 365を使っていない(Google Workspaceなど)
チェック3: プロモーション価格で年間契約を検討する
Copilot導入を決めた場合、3月31日までに年間契約でプロモーション価格を確保するのが最もコストパフォーマンスが高い。10人で導入する場合の年間コスト差は以下の通り。
| 契約タイミング | 月額(10人分) | 年間コスト |
|---|---|---|
| 3月中(プロモ) | $180 | $2,160(約32万円) |
| 4月以降(通常) | $210 | $2,520(約38万円) |
差額は年間約6万円。10人規模でこの差なので、人数が増えるほどインパクトは大きくなる。
チェック4: 7月の値上げに備えたコスト試算
Copilotを導入しない場合でも、7月からは基本プランの値上げがある。50人でBusiness Standardを使っている場合、Microsoft公式料金表に基づくと月額$75(約1.1万円)、年間$900(約13.5万円)のコスト増だ。予算計画に反映しておく必要がある。
正直に言うと、まだ判断がつかない部分もある
ここまで整理してきたが、不確定な部分も正直に書いておく。
Copilot Coworkの実力は未知数だ。まだResearch Preview段階で、日本語環境での精度や、日本企業特有のファイル管理(ファイルサーバー+SharePoint混在など)にどこまで対応できるかは分からない。「同僚として働く」という表現は魅力的だが、実際に「任せて大丈夫」なレベルになるかは検証が必要だ。
Copilot Chat強化の具体的な範囲も曖昧だ。Microsoftは「Copilot Chat enhancements」としか発表しておらず、現行の無料Copilot Chatからどの程度機能が上がるのか、詳細は6月のパッケージ更新まで明らかにならない見込みだ。
日本語での精度にはまだバラつきがある。Claudeモデルが選べるようになったのは朗報だが、Excel関数の生成やPowerPointのレイアウト調整など、日本語特有の処理(全角半角混在、日本式のビジネス文書フォーマットなど)は、英語環境ほどスムーズにいかないケースもある。
まとめ: 3月末の締め切りと7月の変化に備える
Microsoft 365 Copilotは、2026年3月〜7月にかけて大きく変わる。中小企業にとっての要点は3つだ。
- 3月中にやること: 自社のMicrosoft 365契約状況を確認し、Copilot導入済みならプロモーション価格での年間更新を検討する
- 4〜6月にやること: 7月の値上げに備えてIT予算を見直す。IT導入補助金の申請も並行して進める
- 7月以降に注目すること: 基本プランに統合されるCopilot Chat強化版を全社員に試させ、フル版Copilotが必要な職種を特定する
Copilot Coworkの一般提供や、E7スイートの展開状況も引き続きフォローしていく。次の記事では、Copilot BusinessのAgent Modeを実際の業務で検証した結果をお届けする予定だ。
あわせて読みたい:
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参考・出典
- Powering frontier transformation with Copilot and agents — Microsoft公式ブログ(参照日: 2026-03-15)
- 2026 M365 Packaging & Pricing Updates — Microsoft Licensing(参照日: 2026-03-15)
- Microsoft announces Copilot Cowork with help from Anthropic — VentureBeat(参照日: 2026-03-15)
- Microsoft drops M365 Copilot price for SMBs — Computerworld(参照日: 2026-03-15)
- Microsoft Dreamed of a Digital Coworker, Then It Licensed Anthropic’s — Forbes(参照日: 2026-03-15)
この記事はUravation編集部がお届けしました。
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