結論: Gartnerは2026年4月2日、2028年までに半数以上の企業がチャットボット・コパイロット等のアシスティブAIへの投資を止め、ワークフロー結果にコミットするプラットフォームへ移行すると予測しました。
この記事の要点:
- 要点1: 2028年までに50%超の企業がアシスティブAI(Copilot等)への投資を停止
- 要点2: 2030年までに「エージェント実行」未対応のソフトウェア企業は利益率が最大80%圧縮される
- 要点3: 人間の役割は「タスク実行者」から「AIエージェントの監督者(Agent Steward)」に移行
対象読者: Microsoft 365 Copilot・ChatGPT Enterpriseなどアシスティブ AIへの投資を検討中・運用中の経営者・DX推進担当者
読了後にできること: 自社のAI投資ポートフォリオを「アシスティブ型」vs「ワークフロー型」に分類し、移行優先度を判断できる
「ChatGPTを導入して、社員が便利に使ってくれています」
AI研修で企業を訪問すると、こんな声をよく聞きます。でも正直に言うと、私はそれを聞くたびに少し心配になるんです。
「便利に使っている」と「業務成果が出ている」は、実は全然違う話なんですよね。2026年4月2日、Gartnerがその懸念を完全に裏付ける予測を発表しました。「2028年までに、半数以上の企業がチャットボット・コパイロットへの投資を止める」という衝撃の内容です。
この記事では、Gartnerの予測の全体像から日本企業への具体的な影響まで、100社以上のAI研修・コンサル経験をもとに徹底解説します。「今のAI投資、このまま続けて大丈夫?」という問いへの答えが、この記事で見つかるはずです。
何が起きたのか — Gartner予測の全体像
Gartnerが2026年4月2日に発表した予測のポイントを整理します。
| 予測項目 | 内容 | 時期 |
|---|---|---|
| アシスティブAI投資の停止 | 半数以上の企業がCopilot・チャットボット等への支出を停止 | 2028年まで |
| ワークフロー型への移行 | 「結果にコミットするプラットフォーム」に予算が集中 | 2028年まで |
| SWベンダーへの打撃 | 旧来アプリにAIを後付けしただけの企業は利益率最大80%圧縮 | 2030年まで |
| 人間の役割変化 | タスク実行者→Agent Steward(AI監督者)へシフト | 2028年以降 |
発表したのはGartnerのVPアナリスト、Alastair Woolcock氏。「企業はAIを”道具”として使う段階から、AIに”仕事を委任”する段階へ移行しつつある」と語っています。
アシスティブAIとは何か、改めて整理しておきましょう。
アシスティブAI(Assistive AI)とは: 人間の作業を「補助・支援」することに特化したAI。具体例としてはMicrosoft 365 Copilot、ChatGPT Enterprise、Google Workspace Gemini等のコパイロット系ツールや、問い合わせ対応チャットボット、AIアシスタント機能が該当する。ユーザーが指示を出して、AIが回答・補助する「依頼→返答」モデル。
これに対してGartnerが「移行先」として示すワークフロー結果型AI(Outcome-Focused Workflow AI)は、ユーザーが指示しなくても業務プロセスを自律実行する仕組みです。人間はAIの監督者(Agent Steward)として結果を確認する役割になります。
AIエージェントの基礎概念や企業への実装ステップについては、AIエージェント導入完全ガイドで詳しくまとめています。Gartner予測を読み解く前提として、ぜひ合わせてご確認ください。
なぜ企業はアシスティブAIから離れるのか
「便利なのに、なぜ止めるの?」と思う方も多いでしょう。Gartnerの分析から、主な理由を3つにまとめます。
理由1:ROIの測定困難問題
アシスティブAIの最大の弱点は「成果の可視化が難しい」ことです。社員が「ChatGPTで作業が楽になった」と言っても、それが売上向上・コスト削減にどれだけ貢献したか、計測できない企業がほとんどです。
100社以上のAI研修を担当していると、「導入して1年経ったけど効果が分からない」という相談を非常に多く受けます。アシスティブAIは「使った時間の節約」という指標しか出ないことが多く、CFOへの説明が難しくなっています。
理由2:「補助」から「自律実行」への技術シフト
2025〜2026年にかけて、AIエージェント技術が急速に実用レベルに達しました。単なる質疑応答ではなく、複数のシステムをまたいで実際に業務を「実行する」AIが登場しています。
Gartnerが指摘する「delegated execution(委任型実行)」は具体的にこういう世界です:
- 「見積書を作って送って」→ AIがCRMから顧客情報を取得 → 見積書を生成 → メールで送信 → 完了通知
- 「月次レポートを出して」→ AIがERPからデータ抽出 → 分析・グラフ化 → Slackに投稿
この段階まで来ると、「補助してくれる道具」より「仕事を終わらせてくれるシステム」の方が明らかに価値が高い。企業の優先順位が変わるのは自然なことです。
理由3:「ボルトオンAI」への幻滅
「既存ソフトにAIボタンを付けただけ」のツールへの不満が積み重なっています。Gartnerは「2030年までにボルトオン戦略のソフトウェア企業は利益率最大80%圧縮」と予測しています。これはベンダー側だけでなく、購入企業にとっても「そのツールに払っていた費用を本当に有効な仕組みに回す」判断につながります。
最初に影響を受ける業務領域
Gartnerはワークフロー型AIへの移行が最も早く進む領域として以下を挙げています。
| 業務領域 | アシスティブから置き換わる機能 | 日本企業での具体例 |
|---|---|---|
| ITサービス管理 | AIチャットボット→自動インシデント解決エージェント | ヘルプデスク対応の自動クローズ |
| 法務・コンプライアンス | AI文書補助→契約レビュー自律実行 | 規約チェック・リスク判定の自動化 |
| 調達・購買 | AIリサーチ支援→見積取得〜発注の自動フロー | サプライヤー選定・発注処理の自動化 |
| CRM・営業 | AIコパイロット→見込み顧客育成エージェント | リード分類・フォローアップメール自動送信 |
| ERP(特定機能) | データ入力補助→仕訳・予算配賦の自動実行 | 経費精算・月次決算補助の自動化 |
共通点は「繰り返し可能でルールが明確なワークフロー」。これらはAIエージェントが最も得意とする領域です。逆に、創造性・判断が必要な業務(経営意思決定、複雑な顧客折衝など)はアシスティブAIが引き続き有効です。
Gartner予測への反応 — 期待と懸念の両面
楽観的な見方(Gartnerのメイン見解)
Gartner VP Alastair Woolcock氏は「この移行は企業にとってポジティブなことだ」と述べています。アシスティブAIへの不満(ROI不透明・習熟格差・使われない問題)を解消し、真の業務変革を達成できる。人間は単純反復作業から解放され、より高度な判断・戦略に集中できるという見解です。
現場感覚としても、この見方は理解できます。「ChatGPTを使っているけど、定着しない」という課題を持つ企業は多い。その根本原因は「使い方を覚えるのが面倒」ではなく、「使っても業務プロセスが変わらない」ことです。ワークフロー型AIは、この問題を根本から解決できる可能性があります。
慎重な見方(見逃せないリスク)
一方で、以下のリスクを指摘する声もあります。
移行コストの問題: ワークフロー型AIへの移行は大規模なシステム統合を伴います。既存のCRM・ERP・業務システムとのAPI連携、権限管理の再設計が必要。中小企業にとってこの投資は軽くありません。実際にn8nやMakeで業務自動化を試みた企業でも、「最初の1本は動かせたが、全社展開は難しかった」という話をよく聞きます。
「2028年」は先進企業の話: Gartnerの予測は主にグローバル大企業を対象としています。日本のDX遅れを考えると、国内中堅・中小企業では「アシスティブAIを使いこなす」段階すら達していないケースが多数。「まずはCopilotを使えるようにする」が現実的な次のステップかもしれません。
セキュリティ・ガバナンスの複雑化: AIエージェントに業務を「委任」するということは、AIが企業システムに広範なアクセス権限を持つことを意味します。情報漏洩・誤操作リスクの管理コストが増大します。
スキルギャップの拡大: AIが仕事を実行するほど、社員が「その仕事のやり方」を覚える機会が減ります。AIが止まった時に代替できる人材がいない、というリスクが生まれます。Gartnerが言う「Agent Steward」の育成には、相当な時間と投資が必要です。
日本企業への影響と具体的な対応策
率直に言うと、日本企業への影響には「グローバルとのギャップ」という特有の文脈があります。
日本の現実:まだアシスティブAI導入前の企業が多数
私が関わる研修案件の多くは、まだ「社員にChatGPTの使い方を教える」段階です。2026年4月時点で、国内中小企業の多くはワークフロー型AIの議論よりも前にいます。
先日、従業員300名規模の製造業の研修を担当した際に、受講者の8割が「ChatGPTは会社PCで使えない(情報システム部門が禁止している)」と話していました。アシスティブAIすら使えていない中で、「2028年にワークフロー型へ移行」という予測は、まるで別世界の話のように聞こえるかもしれません。
しかし、これを「日本には関係ない話」と片付けるのは危険です。理由は3つあります。
1. グローバル競合との格差拡大リスク: 海外競合他社がワークフロー型AIで業務効率を向上させる中、アシスティブAIの段階に留まっていると、生産性格差が開き続けます。特に製造業・金融・商社など、グローバルプレイヤーと競合する業種は要注意です。
2. SaaSベンダーの製品戦略変化: Salesforce(Agentforce)、ServiceNow(AI Agents)、SAP(Joule AI)等のグローバルSaaSは既にエージェント機能の開発を加速しています。日本企業が使うツールも、近い将来「アシスティブ機能」が縮小・廃止され、ワークフロー型機能中心に切り替わる可能性があります。「今使っているSalesforceのコパイロット機能がなくなって、エージェント機能に全面移行」というシナリオです。
3. Microsoft Copilotへの投資判断: 多くの日本企業が今まさに「Microsoft 365 Copilot(月額$30/ユーザー)を全社展開するか?」の判断に直面しています。Gartnerの予測は、この投資の有効期限が2028年までという示唆を含んでいます。今から導入しても2年しか有効活用できないかもしれない、という懸念が生じます。
日本企業が今すぐ考えるべき3つの問い
- アシスティブAIへの投資から測定できる成果が出ているか? — ROIが不明瞭なら、投資継続の正当化が難しくなります。まず「使っている時間が削減された業務」を具体的に測定するところから始めてください。
- 3年後にワークフロー型AIに移行する道筋があるか? — アシスティブAI導入は、エージェント型への移行学習コストとして有意義かを考えましょう。「ChatGPTを使い慣れた社員がいる」ことは、次のステップへの土台になります。
- 社内に「Agent Steward」になれる人材がいるか? — AIエージェントを監督・管理できる人材の育成が急務です。これは特定の「AI担当者」だけでなく、各部門の業務担当者がAIの監督者になれるよう育成する取り組みが必要です。
業種別の優先順位
| 業種 | 優先度 | 早期に自動化できる業務 |
|---|---|---|
| 金融・保険 | 最高 | 審査・書類処理・コンプライアンスチェック |
| 製造(大手) | 高 | 発注・品質管理レポート・サプライヤー管理 |
| 小売・EC | 高 | 在庫管理・顧客対応・プロモーション自動化 |
| 医療・福祉 | 中 | 予約管理・請求処理・記録業務 |
| 中小企業全般 | 段階的 | まずアシスティブAI定着→段階的にワークフロー化 |
ソフトウェアベンダーへの影響 — 利益率80%圧縮の意味
Gartnerは企業ユーザーへの影響だけでなく、「ソフトウェアベンダーへの影響」も明確に警告しています。
「2030年までに、エージェント型実行のために再設計するのではなくレガシーアプリケーションにボルトオンAIを重ねたソフトウェア企業は、利益率が最大80%圧縮される」— Gartner VP アナリスト Alastair Woolcock
これは日本のSIer・パッケージソフトベンダーにとって非常に重大な警告です。
具体的にどういうことか?
例えば、今「AI議事録作成機能」を追加したSaaSがあるとします。これは典型的な「ボルトオンAI」です。ユーザーは録音ファイルをアップロードして、AIが文字起こし・要約をしてくれる。便利ですが、それだけです。
これに対してワークフロー型のアプローチは、「会議が終わったら自動でCRMのタスクを作成し、関係者にリマインダーメールを送り、次回アジェンダを下書きして、カレンダーに仮予約を入れる」という一連の流れを自動実行します。
どちらを使いたいか、聞くまでもないですよね。
日本のSIerやパッケージソフトベンダーが2028年に向けて考えるべきことは、「自社製品にAI機能を追加する」ではなく「自社製品をエージェント実行の中心に置く」設計への転換です。
生き残るベンダーの特徴(Gartner分析より)
- エージェントオーケストレーション機能を自社プラットフォームに組み込んでいる
- ポリシー対応の実行APIを外部エージェントに公開している
- アイデンティティ・権限・監査をコントロールプレーンレベルで管理できる
- ユーザーが「結果にコミット」できる課金モデルを持っている
企業がとるべきアクション
Gartner予測を受けて、日本企業が今すぐ着手できる具体的なアクションを整理します。
アクション1:現在のAI投資の「タイプ分類」を行う
現在契約しているAIツールを「アシスティブ型」と「ワークフロー/エージェント型」に分類してください。
| ツール例 | タイプ | ポジション |
|---|---|---|
| Microsoft 365 Copilot | アシスティブ型 | 2028年以降要見直し |
| ChatGPT Enterprise | アシスティブ型(一部エージェント対応) | 移行過渡期ツール |
| n8n / Make / Zapier(AI Node) | ワークフロー型 | 継続投資 |
| Salesforce Agentforce | エージェント型(委任実行) | 先行投資価値あり |
| ServiceNow AI Agents | エージェント型 | 先行投資価値あり |
アクション2:「一番ルーチンな業務」でエージェント型を試験導入
いきなり全社移行ではなく、1つの部署・1つの業務プロセスでエージェント型AIを試験運用してみてください。
例えばこんな業務が試験導入に向いています:
- 問い合わせフォームへの自動回答・エスカレーション判断
- 月次レポート(定型フォーマット)の自動生成・配信
- 採用応募者への自動スクリーニング・初回返信
アクション3:「Agent Steward」育成を始める
Gartnerは「人間の役割はなくならない。ただし変わる」と述べています。これからのAI人材に求められるのは「AIに指示する能力」から「AIエージェントの業務品質を監督・改善する能力」へと変化します。
具体的には以下のスキルが重要になります:
- AIエージェントの出力品質を評価できる業務知識
- エラー時の対処・エスカレーション判断
- エージェントの権限設定・ガバナンス管理
アクション4:既存のCopilot投資を「学習コスト」として位置づける
すでにMicrosoft CopilotやChatGPT Enterpriseを導入済みの企業は、今すぐ乗り換える必要はありません。アシスティブAIの活用経験は「AIとの協働」の学習コストとして有効です。ただし、2〜3年のうちにワークフロー型への移行計画を立て始めることをお勧めします。
アクション5:ベンダー選定基準を見直す
新規のSaaS・AIツールを選ぶ際は「エージェント実行APIを公開しているか」「他システムとのワークフロー連携が可能か」を必ず確認してください。アシスティブ機能だけが売りのツールへの長期投資はリスクが高まっています。
まとめ:今日から始める3つのアクション
Gartnerの予測を一言でまとめるとこうです。「AIは道具から従業員へ進化している。それに合わせて、企業の投資戦略も変える必要がある」。
2028年は2年後。グローバル大企業にとっては「今すぐ動く」テーマです。日本企業にとっても「3〜5年後の投資の指針」として非常に重要な予測です。
「でも、うちはまだCopilotも使いこなせていない…」という方も、焦る必要はありません。大切なのは、アシスティブAIを「ゴール」ではなく「ワークフロー型への移行への学習プロセス」と位置づけること。そして1〜2年以内に「自律実行」方向での試験導入を始めることです。Gartnerの予測は、2年後の未来を見せてくれる「地図」です。地図を持っていれば、今どの位置にいても正しい方向に歩き始めることができます。
- 今日やること: 現在契約しているAIツールを「アシスティブ型」vs「ワークフロー/エージェント型」に分類する(上記の表を使う)
- 今月中: 自社で最もルーチンな業務を1つ選び、エージェント型AIでの自動化を小規模検証する
- 今期中: 「Agent Steward」候補となる社員を各部門から1名選定し、AIエージェント管理の基礎教育を開始する
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- AI時代の人員戦略とリスキリング — Agent Steward人材の育成戦略
参考・出典
- Gartner Expects Most Enterprises to Abandon Assistive AI for Outcome-Focused Workflow by 2028 — Gartner公式プレスリリース(参照日: 2026-04-07)
- Market for AI Assistants Will Be Mostly Dead in Two Years, Gartner Predicts — NoJitter(参照日: 2026-04-07)
- Gartner Predicts Over 40% of Agentic AI Projects Will Be Canceled by End of 2027 — Gartner公式(参照日: 2026-04-07)
- Gartner Report: AI Platforms To Replace Assistive Tools By 2028 — SMEStreet(参照日: 2026-04-07)
- Gartner Sees Shift From Copilots to Outcome-Driven AI by 2028 — DQ India(参照日: 2026-04-07)
著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、X(旧Twitter)で活用法を発信(@SuguruKun_ai、フォロワー約10万人)。100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。
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