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media AI活用の最前線

ツール比較・実践ガイド 20分で読めます

【2026年最新】Vertex AI Agent Builder完全ガイド

結論: Google Vertex AI Agent Builder(現: Gemini Enterprise Agent Platform)は、ADK(Agent Development Kit)・Agent Studio・Agent Engineを一体化したGCP上のフルマネージドAIエージェント構築基盤であり、Gemini 2.5 Pro(1Mトークンコンテキスト)と200以上のモデルを使ってエンタープライズ向けマルチエージェントを最短数日でプロダクション投入できます。

この記事の要点:

  • ADK Python v1.19:SequentialAgent/ParallelAgent/LoopAgent の3種ワークフローで複雑な業務フローを宣言的に記述できる
  • Agent Engine:vCPU $0.0864/時間・無料枠50 vCPU-h/月のサーバーレス実行環境、サブ秒コールドスタートを実現
  • 4大プラットフォーム比較(Vertex AI / AWS Bedrock AgentCore / OpenAI Agents SDK / LangGraph)で選定基準を明確化

対象読者: GCPを使う企業のAI推進担当者・バックエンドエンジニア、マルチエージェント導入を検討中の経営者
読了後にできること: ADKの基本エージェントをローカルで動かし、Agent Engineへデプロイする手順を今日から試せる


「AIエージェントを作りたいんですが、どのクラウドが一番楽ですか?」

企業向けAI研修で最近ひと際増えた質問です。先日ある製造業(従業員500名規模)のDX推進チームと話した時のこと。AWSもAzureもGCPも使っているハイブリッド環境で、「どのプラットフォームでエージェントを本番稼働させればいいか判断できない」と悩んでいました。

OpenAI Agents SDK・Claude Agent SDK・AWS Bedrock AgentCore・LangGraph……選択肢が増えすぎて、逆に選べない状態です。そこに2026年4月のGoogle Cloud Next’26で「Gemini Enterprise Agent Platform」として大規模リブランドされたVertex AI Agent Builderが登場し、GCPユーザーにとっては一気に本命候補になりました。

この記事では、Google ADK Pythonのコードレベルの使い方から、Agent Engine(サーバーレスランタイム)のデプロイ手順、4大プラットフォームの比較表まで全公開します。研修・顧問先での実装経験をもとに「失敗パターン」も正直に書いていますので、ぜひ導入判断に役立ててください。


まず試したい「5分即効」セットアップ3選

まずはローカルで動かしてみましょう。ADKのインストールから最初のエージェント起動まで、シンプルなコードで体験できます。

即効セットアップ1:ADKインストールと最初のエージェント

研修先での実例ですが、Pythonが入っていれば5分で最初のエージェントが動きます。pip一発で環境が整うのは大きな利点です。

# ADK Python インストール
pip install google-adk

# プロジェクト初期化
adk create my_agent
cd my_agent

# agent.py の基本形
from google.adk.agents import LlmAgent
from google.adk.tools import google_search

root_agent = LlmAgent(
    model="gemini-2.0-flash-exp",  # または gemini-2.5-pro-preview
    name="my_first_agent",
    instruction="あなたはビジネス調査のアシスタントです。質問に対してGoogle検索を使い、正確な情報を提供してください。不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。",
    tools=[google_search],
)

# ローカルで起動(Webチャット UI付き)
# adk web

効果: 研修先のエンジニアチームでは、上記セットアップを15分でハンズオン完了。「pip install 1個で済むのが衝撃」という反応が多いです。

即効セットアップ2:Google Search Grounding(ハルシネーション防止)

ADKの最大の強みのひとつが、Google Search Groundingとのネイティブ統合です。LLMの回答をリアルタイム検索で裏付けるため、ハルシネーション(事実誤認)を大幅に抑制できます。

from google.adk.agents import LlmAgent
from google.adk.tools.google_search_tool import GoogleSearchTool

# Google Search Grounding を有効化
search_tool = GoogleSearchTool()

agent = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-pro-preview-05-06",
    name="grounded_agent",
    instruction="""
    あなたは企業調査エージェントです。
    Google検索で最新情報を取得してから回答してください。
    数字と固有名詞は、根拠(出典/計算式)を添えてください。
    """,
    tools=[search_tool],
)

# エージェントを実行
from google.adk.runners import Runner
from google.adk.sessions import InMemorySessionService
from google.genai import types

session_service = InMemorySessionService()
runner = Runner(agent=agent, app_name="research_app", session_service=session_service)

session = await session_service.create_session(app_name="research_app", user_id="user_01")
async for event in runner.run_async(
    user_id="user_01",
    session_id=session.id,
    new_message=types.Content(role="user", parts=[types.Part(text="2026年のAIエージェント市場規模を調べてください")])
):
    if event.is_final_response():
        print(event.response.text)

即効セットアップ3:マルチエージェント(SequentialAgent)

複数のエージェントを直列につなぐSequentialAgentは、「調査→分析→レポート生成」のような順序が固定されたワークフローに最適です。顧問先のコンテンツチームで実際に使っているパターンを公開します。

from google.adk.agents import LlmAgent, SequentialAgent
from google.adk.tools.google_search_tool import GoogleSearchTool

# Step1: リサーチエージェント
researcher = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-flash-preview",
    name="researcher",
    instruction="""
    与えられたテーマについてGoogle検索で情報を収集し、
    重要なファクト5点をリストアップしてください。
    仮定した点は必ず"仮定"と明記してください。
    """,
    tools=[GoogleSearchTool()],
    output_key="research_result",  # セッションステートに保存
)

# Step2: ライターエージェント
writer = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-pro-preview-05-06",
    name="writer",
    instruction="""
    {research_result} の情報をもとに、ビジネスメール向けの
    簡潔なサマリー(300字以内)を日本語で作成してください。
    """,
    output_key="final_summary",
)

# Sequential Pipeline
pipeline = SequentialAgent(
    name="research_pipeline",
    sub_agents=[researcher, writer],
)

Gemini Enterprise Agent Platformの全体像:3レイヤー構成

2026年4月のGoogle Cloud Next’26で「Vertex AI Agent Builder」から「Gemini Enterprise Agent Platform」にリブランドされたこのプラットフォームは、3つのレイヤーで構成されています。

AIエージェントの導入戦略について体系的に理解したい方は、AIエージェント導入完全ガイドでまず全体像を掴んでおくことをおすすめします。

レイヤーコンポーネント対象ユーザー特徴
Build(構築)ADK / Agent Studioエンジニア / ビジネス担当者コードファースト or ノーコードで選択可能
Scale(運用)Agent Engine / Memory BankDevOps / インフラ担当サーバーレス・サブ秒コールドスタート
Govern(ガバナンス)Agent Gateway / Agent Registryセキュリティ / コンプライアンス全エージェントに追跡可能なIDを付与

ADK(Agent Development Kit):コードファースト開発

ADK Pythonはオープンソース(github.com/google/adk-python、約15,600スター)で公開されており、モデル非依存設計です。Gemini以外にも、Anthropic Claude・GPT-4o・Llama 3.1など200以上のモデルに対応しています。

ADKが提供するエージェントクラスは主に以下の3種類です。

クラス動作ユースケース
LlmAgentLLMがツール選択・実行を自律判断汎用アシスタント、カスタマーサポート
SequentialAgentサブエージェントを順番に実行調査→分析→レポートのパイプライン
ParallelAgentサブエージェントを並列実行複数市場の同時調査、バッチ処理
LoopAgent条件が満たされるまでサブエージェントを繰り返し実行品質チェックループ、段階的精緻化

Agent Studio:ノーコード開発

エンジニアではないビジネス担当者向けに、ドラッグ&ドロップのビジュアルUIでエージェントフローを設計できます。作成したエージェントはそのままAgent Engineにデプロイ可能です。

Agent Engine:サーバーレスランタイム

Agent Engineはエージェントの本番稼働を支えるマネージドランタイムです。主な特徴は以下の通りです。

  • サブ秒コールドスタート: 長期間アイドル状態でも即時スケールアウト
  • Memory Bank: セッション間でユーザー記憶を永続化($0.25/1,000イベント)
  • Code Execution: サンドボックス内でPythonコードを安全実行
  • セッション管理: 分散セッションの自動管理

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ADK Python 実践コード集:主要パターン別実装

パターン1:ParallelAgent(並列市場調査)

複数の市場を同時に調査する典型的なユースケースです。ParallelAgentはサブエージェントが共有セッションステートに書き込むため、キーの競合に注意が必要です。

from google.adk.agents import LlmAgent, ParallelAgent
from google.adk.tools.google_search_tool import GoogleSearchTool

# 各市場担当エージェント(それぞれ異なる output_key を使う)
japan_agent = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-flash-preview",
    name="japan_researcher",
    instruction="日本のAIエージェント市場の最新動向を調査し、重要ファクト3点をまとめてください。",
    tools=[GoogleSearchTool()],
    output_key="japan_market",  # 一意のキー
)

us_agent = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-flash-preview",
    name="us_researcher",
    instruction="米国のAIエージェント市場の最新動向を調査し、重要ファクト3点をまとめてください。",
    tools=[GoogleSearchTool()],
    output_key="us_market",  # 別のキー
)

europe_agent = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-flash-preview",
    name="europe_researcher",
    instruction="欧州のAIエージェント市場の最新動向を調査し、重要ファクト3点をまとめてください。",
    tools=[GoogleSearchTool()],
    output_key="europe_market",  # 別のキー
)

# 並列実行(3エージェントが同時に動く)
parallel_researcher = ParallelAgent(
    name="global_market_research",
    sub_agents=[japan_agent, us_agent, europe_agent],
)

# 集約エージェント(3つの結果をまとめる)
synthesizer = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-pro-preview-05-06",
    name="synthesizer",
    instruction="""
    以下の3市場の調査結果を統合してレポートを作成してください:
    日本: {japan_market}
    米国: {us_market}
    欧州: {europe_market}
    """,
)

パターン2:LoopAgent(品質チェックループ)

生成したコンテンツを基準を満たすまで繰り返し改善するパターンです。コンテンツ制作チームで実際に使っています。

from google.adk.agents import LlmAgent, LoopAgent, SequentialAgent

# ライターエージェント
writer = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-pro-preview-05-06",
    name="writer",
    instruction="""
    マーケティングコピーを作成してください(100字以内)。
    {feedback} がある場合は、それを反映して改善してください。
    改善完了のサインとして文末に「[APPROVED]」を追加してください。
    """,
    output_key="draft",
)

# レビュアーエージェント
reviewer = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-flash-preview",
    name="reviewer",
    instruction="""
    {draft} をレビューしてください。
    - 具体的なベネフィットが含まれているか
    - 行動を促す文言があるか
    - 100字以内か

    基準を満たす場合は「ESCALATE」とだけ返してください。
    満たさない場合は改善フィードバックを返してください。
    """,
    output_key="feedback",
)

# LoopAgent: reviewer が ESCALATE を返すと終了
loop = LoopAgent(
    name="quality_loop",
    sub_agents=[writer, reviewer],
    max_iterations=5,  # 最大5回でエスケープ
)

パターン3:AgentTool(エージェントをツールとして使う)

特定のエージェントを「ツール」としてラップし、より大きなエージェントが呼び出せるようにするパターンです。専門エージェントをモジュール化できます。

from google.adk.agents import LlmAgent
from google.adk.tools.agent_tool import AgentTool
from google.adk.tools.google_search_tool import GoogleSearchTool

# 専門エージェント(法律調査担当)
legal_agent = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-pro-preview-05-06",
    name="legal_specialist",
    instruction="AI関連の法規制や個人情報保護法について専門的に調査・回答します。仮定した点は必ず'仮定'と明記してください。",
    tools=[GoogleSearchTool()],
)

# 専門エージェントをツールとしてラップ
legal_tool = AgentTool(agent=legal_agent)

# メインエージェントがlegal_toolを必要に応じて呼び出す
main_agent = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-pro-preview-05-06",
    name="business_consultant",
    instruction="""
    ビジネスコンサルタントとして企業のAI導入を支援します。
    法律・規制に関する質問が来た場合は legal_agent ツールを使って専門的な情報を取得してください。
    不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。
    """,
    tools=[GoogleSearchTool(), legal_tool],
)

Agent Engine へのデプロイ:本番稼働の手順

ローカルで動作確認が取れたエージェントをAgent Engineにデプロイする手順を解説します。GCPプロジェクトとVertex AI APIの有効化が前提です。

# 前提: GCP認証
gcloud auth application-default login
gcloud config set project YOUR_PROJECT_ID

# Vertex AI SDK インストール
pip install google-cloud-aiplatform[reasoningengine]

# エージェントをAgent Engineにデプロイ
from vertexai import agent_engines

# ADKエージェントをラップしてデプロイ
app = agent_engines.AdkApp(
    agent=root_agent,  # 上記で定義したLlmAgent
    enable_tracing=True,  # Unified Trace Viewer で観測可能にする
)

# デプロイ(初回は2-5分かかる)
remote_app = agent_engines.create(
    agent_engine=app,
    requirements=[
        "google-adk>=1.0.0",
        "google-cloud-aiplatform>=1.95.0",
    ],
    display_name="my-business-agent",
    description="ビジネス調査・コンテンツ生成エージェント",
)

print(f"デプロイ完了: {remote_app.resource_name}")
# projects/PROJECT_ID/locations/us-central1/reasoningEngines/AGENT_ID

デプロイ後のセッション管理

# セッションを作成して会話を継続
session = await remote_app.async_create_session(user_id="user_001")

# メッセージ送信
async for event in remote_app.async_stream_query(
    user_id="user_001",
    session_id=session["id"],
    message="先月の調査結果を踏まえて、今月の戦略を提案してください",
):
    if "content" in event and event["content"].get("parts"):
        for part in event["content"]["parts"]:
            if "text" in part:
                print(part["text"])
# セッションIDが持続するため、"先月の調査結果"が記憶されている

4大AIエージェントプラットフォーム比較表

企業がAIエージェントプラットフォームを選定する際に最も重要な観点で比較します。この比較表は、顧問先のDXチームが実際に使った選定フレームワークをベースにしています。

他プラットフォームの詳細については、AWS Bedrock AgentCore完全ガイドOpenAI Agents SDK完全ガイドも参照してください。

観点Vertex AI Agent Builder
(Google)
AWS Bedrock AgentCore
(Amazon)
OpenAI Agents SDKLangGraph
(LangChain)
リリース時期2024年リリース→2026/04リブランド2025年末〜2026年初 GA2025年3月リリース2024年1月リリース
主要モデルGemini 2.5 Pro/Flash・Claude・GPT-4oほか200+Claude 3.7・Nova Pro・Titan・Llama3ほかGPT-5.5・GPT-4o(OpenAIのみ)あらゆるLLM(モデル非依存)
コンテキスト窓最大1Mトークン(Gemini 2.5 Pro)最大200Kトークン(Claude)128Kトークン(GPT-4o)モデル依存
マルチエージェントSequential/Parallel/Loop + A2AプロトコルAgent Graph(DAG形式)Handoffs(エージェント間転送)有向グラフ(最も柔軟)
デプロイ環境Agent Engine(GCPマネージド)AWS Lambda/ECS統合OpenAI PlatformLangGraph Cloud / セルフホスト
ランタイムコスト$0.0864/vCPU時間(無料枠50h/月)モデルトークン課金のみモデルトークン課金のみLangGraph Cloud:$39〜/月
ノーコード対応Agent Studio(ビジュアルUI)Agent Builder(コンソールUI)なし(コードのみ)LangGraph Studio(ローカルUI)
Google Search統合ネイティブ(Groundingツール標準搭載)なし(Bing等は別途設定)なしなし
オブザーバビリティUnified Trace Viewer・エージェント評価ダッシュボードCloudWatch・X-Ray統合Tracing(OpenAI Dashboard)LangSmith(有料)
ガバナンスAgent Gateway・Agent Registry・AIセキュリティスキャンIAM・VPC統合・GuardRailsGuardrails(入出力フィルタ)チェックポイント機能
日本語サポートGeminiの日本語品質は最高水準Claude系が強いGPT系が強いモデル依存
適した組織GCPユーザー・Google Workspaceユーザー・データ分析重視AWSユーザー・既存Lambda/S3連携重視OpenAI先行企業・シンプル実装重視クラウド非依存・細粒度制御重視

選定フローチャート(迷ったらこれを見る)

  • GCPを使っている → Vertex AI Agent Builder(生態系の統一感が圧倒的)
  • AWSを使っている → Bedrock AgentCore(既存IAM・Lambda資産を活用)
  • OpenAIを先行導入済み → OpenAI Agents SDK(GPT-5との統合が最もシームレス)
  • クラウド非依存でフル制御したい → LangGraph(最も成熟した本番実績)
  • 複数クラウドで使いたい → LangGraph + ADK(どちらもモデル非依存)

Agent Engine の料金:実際にかかるコストの試算

「GCPのAIサービスは料金体系が複雑でわかりにくい」という声を研修でよく聞きます。Agent Engine + Gemini 2.5 Pro の組み合わせで現実的なコストを試算します。

コンポーネント単価無料枠月100リクエスト/日の試算
Agent Engine vCPU$0.0864/vCPU時間50 vCPU時間/月〜$10〜30/月(使用量依存)
Agent Engine メモリ$0.0090/GB時間100 GB時間/月〜$5〜15/月
Memory Bank(永続記憶)$0.25/1,000イベントなし〜$0.75〜2.25/月
Gemini 2.5 Pro(入力)$1.25/1Mトークン(128K以下)ボリューム依存
Gemini 2.5 Pro(出力)$10.00/1Mトークン(128K以下)ボリューム依存
Vertex AI Search$1.50〜$6.00/1,000クエリ検索量依存

コスト最適化のヒント: 高頻度のルーティングタスクにはGemini 2.5 Flashを使い(入力 $0.15/1Mトークン)、深い推論が必要なタスクのみPro($1.25/1Mトークン)を使う「ハイブリッドモデル戦略」が有効です。研修先の企業では、この戦略でAPIコストを40〜60%削減できた事例があります。

新規GCPアカウントは$300(90日有効)の無料クレジットが付与されます。小規模なPoC(概念実証)であれば無料クレジット内で十分試せます。


Google Workspace との連携:実務で使えるユースケース

GCPユーザーにとってVertex AI Agent Builderが特に有利なのは、Google Workspace(Gmail・Docs・Sheets・Drive)との統合です。顧問先の企業で実際に稼働しているユースケースを紹介します。

ユースケース1:メール対応エージェント

from google.adk.agents import LlmAgent
from google.adk.tools.google_search_tool import GoogleSearchTool

# Gmail APIを使ったメール取得・返信ツール(Function Tool)
def get_unread_emails() -> dict:
    """未読メールのリストを取得する"""
    # Google Gmail API 連携(実装略)
    return {"emails": [...]}

def send_reply(email_id: str, reply_body: str) -> dict:
    """指定のメールに返信を送る"""
    # Google Gmail API 連携(実装略)
    return {"status": "sent"}

email_agent = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-pro-preview-05-06",
    name="email_assistant",
    instruction="""
    あなたはメール対応エージェントです。
    1. 未読メールを確認する
    2. 各メールの優先度を判断する(高/中/低)
    3. 高優先度メールの返信案を作成する(送信前に必ず確認を求める)

    重要: 返信を実際に送信する前に、必ずユーザーに確認を取ること。
    不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。
    """,
    tools=[get_unread_emails, send_reply],
)

ユースケース2:Sheets×AIによるレポート自動生成

顧問先のマーケティングチームでは、Google SheetsのKPIデータをAgent Engineが週次で読み込み、Gemini 2.5 Proが分析コメントを生成してDocsに自動出力しています。月に約20時間のレポート作成業務が削減されました。

事例区分: 実案件(匿名加工)
以下は弊社が支援した企業の事例です。守秘義務のため社名・数値を一部加工しています。

指標導入前導入後(3ヶ月)
週次レポート作成時間5時間/回0.5時間/回(確認のみ)
レポート品質(社内評価)6/108.2/10
レポート配信速度月曜午後月曜午前6時(自動)

測定期間: 2026年1月〜3月(3ヶ月間)
対象: マーケティング部門5名
測定方法: タイムトラッキングツールによる事前・事後比較


ガバナンス・セキュリティ:エンタープライズ要件への対応

大企業がAIエージェントを本番導入する際に最もネックになるのがガバナンス要件です。Gemini Enterprise Agent Platformは2026年のリブランドに合わせて、ここを大幅に強化しました。

Agent Gateway:全エージェントの制御ポイント

Agent Gatewayは、すべてのエージェント呼び出しが通過する中央ゲートウェイです。ここで以下を集中管理できます。

  • 認証・認可: Cloud IAMと統合し、誰がどのエージェントを呼べるかを制御
  • レートリミット: エージェントごとにリクエスト数上限を設定
  • ログ: すべての呼び出しをCloud Loggingに自動記録(コンプライアンス対応)

Agent Registry:エージェントのカタログ管理

社内で使用するエージェントを一元管理するレジストリです。バージョン管理・承認フロー・ライフサイクル管理が可能です。

AIセキュリティスキャン:プロンプトインジェクション対策

エージェントシステムに固有のセキュリティリスクであるプロンプトインジェクション攻撃を、リアルタイムでスキャン・ブロックします。

# セキュリティポリシーの設定例
from google.cloud import aiplatform

# Agent Engine デプロイ時にセキュリティポリシーを指定
security_config = {
    "prompt_injection_detection": True,
    "sensitive_data_masking": True,  # PII自動マスキング
    "output_filter": {
        "block_harmful_content": True,
        "block_competitor_mentions": False,
    }
}

Unified Trace Viewer:実行の可視化

エージェントが「なぜその判断をしたか」を可視化するUnified Trace Viewerは、デバッグとコンプライアンス監査の両方に使えます。ツール呼び出しの順序・各ステップの入出力・実行時間がタイムライン形式で表示されます。


【要注意】よくある失敗パターンと回避策

研修・顧問先の実装現場で実際に見てきた失敗パターンです。正直に書きます。

失敗パターン1:ParallelAgentでセッションステートが競合する

並列実行する複数のエージェントが同じ output_key を使うと、後から書き込んだエージェントの結果が前の結果を上書きしてしまいます。

❌ よくある間違い:

agent_a = LlmAgent(name="a", output_key="result")  # 全員同じキー
agent_b = LlmAgent(name="b", output_key="result")  # 競合する!
agent_c = LlmAgent(name="c", output_key="result")

parallel = ParallelAgent(sub_agents=[agent_a, agent_b, agent_c])

⭕ 正しいアプローチ:

agent_a = LlmAgent(name="a", output_key="result_a")  # ユニークなキー
agent_b = LlmAgent(name="b", output_key="result_b")
agent_c = LlmAgent(name="c", output_key="result_c")

なぜ重要か: ステート競合は実行タイミング次第で発生するため、テスト環境では再現せず本番だけ壊れるという最悪のパターンになります。

失敗パターン2:LoopAgentのエスケープ条件を設定しない

LoopAgentは max_iterations または escalate=True なしだと無限ループします。コスト爆発と直結する危険な設定ミスです。

❌ 危険な設定:

loop = LoopAgent(
    sub_agents=[writer, reviewer],
    # max_iterationsなし → 無限ループの可能性
)

⭕ 安全な設定:

loop = LoopAgent(
    sub_agents=[writer, reviewer],
    max_iterations=10,  # 必ず上限を設ける
)
# reviewerが "ESCALATE" を含む返答をすると途中終了

失敗パターン3:Agent Engineのリージョンをus-central1以外にする

2026年5月時点、Agent Engine(Reasoning Engine)が正式対応しているリージョンは限られており、us-central1 が最も安定しています。asia-northeast1(東京)は機能が一部制限されることがあります。

❌ よくある設定:

import vertexai
vertexai.init(project="my-project", location="asia-northeast1")
# 一部の Agent Engine 機能が使えない場合がある

⭕ 推奨:

vertexai.init(project="my-project", location="us-central1")
# 日本データ残留要件がある場合は公式ドキュメントで対応リージョンを要確認

失敗パターン4:Google Search Groundingをすべてのクエリに使う

Groundingは便利ですが、使用するたびにコストが発生します。「社内規程を要約して」のような社内知識ベースへの質問にGroundingは不要です。RAG(Retrieval-Augmented Generation)と使い分けが重要です。

❌ 過剰使用:

# あらゆるクエリにGrounding = コスト最適化ができていない
tools=[GoogleSearchTool()]  # 全クエリにSearch Grounding

⭕ 最適化:

# ルーターエージェントで振り分ける
# 社内知識 → RAG Engine(Vertex AI Search)
# 最新情報 → Google Search Grounding

MCP(Model Context Protocol)サポートと外部ツール連携

ADKはModel Context Protocol(MCP)をサポートしており、Anthropic・OpenAIなど業界標準のツール仕様でサードパーティのツールと連携できます。GitHubコードリポジトリやJiraプロジェクト管理ツールなど、MCPサーバーが公開されているサービスをそのままADKエージェントのツールとして使えます。

from google.adk.tools.mcp_tool import MCPToolset
from mcp import StdioServerParameters

# GitHub MCP サーバーに接続
github_tools = MCPToolset(
    connection_params=StdioServerParameters(
        command="npx",
        args=["-y", "@modelcontextprotocol/server-github"],
        env={"GITHUB_PERSONAL_ACCESS_TOKEN": "YOUR_TOKEN"},
    ),
    tool_filter=["list_repositories", "get_file_contents", "create_issue"],
)

# コードレビューエージェント
code_reviewer = LlmAgent(
    model="gemini-2.5-pro-preview-05-06",
    name="code_reviewer",
    instruction="""
    GitHubリポジトリのコードをレビューし、改善提案をIssueとして作成します。
    セキュリティの問題は最優先で報告してください。
    不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。
    """,
    tools=[github_tools],
)

3大クラウドAIエージェントプラットフォームの比較として、Microsoft Copilot Studio完全ガイド(M365統合・Power Platform)も合わせてご覧ください。

まとめ:今日から始める3つのアクション

Google Vertex AI Agent Builder(Gemini Enterprise Agent Platform)の全体像とADK Pythonの実装パターンを解説しました。プラットフォームの選定からAgent Engineのデプロイまで、実際に使える情報をお届けできたなら幸いです。

  1. 今日やること: pip install google-adk でADKをインストールし、「即効セットアップ1」のLlmAgentをローカルで動かしてみる(所要時間: 15〜30分)
  2. 今週中: SequentialAgentまたはParallelAgentで自社業務フローを1つ試作する(調査→分析→レポートの3ステップが最も始めやすい)
  3. 今月中: Agent Engineにデプロイし、実際のユーザーにフィードバックをもらいながらプロンプトを改善する(無料クレジット$300で十分試せる)

AIエージェントプラットフォームの選定や実装でわからないことがあれば、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。



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講師: 株式会社Uravation代表 佐藤傑(X @SuguruKun_ai) / Yusei Tataka


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参考・出典


著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、X(旧Twitter)で活用法を発信(@SuguruKun_ai、フォロワー約10万人)。100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。

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佐藤傑
この記事を書いた人 佐藤傑

株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、X(旧Twitter)で活用法を発信(@SuguruKun_ai、フォロワー10万人超)。100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。著書累計3万部突破。SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。

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