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日本AI Principle Code|生成AI著作権ルール解説

日本AI Principle Code|生成AI著作権ルール解説

結論: 内閣府が2025年12月に公開した「AIプリンシプル・コード(仮称)」は、生成AIの著作権保護と透明性確保を「コンプライ・オア・エクスプレイン」方式で求める日本初の自主ルールであり、2026年度に正式確定予定だ。

この記事の要点:

  • 2025年12月26日公表のドラフト:3つの原則(透明性開示・権利者開示・利用者開示)が柱
  • 法的拘束力はないが「コンプライ・オア・エクスプレイン」——準拠しないなら理由を説明する義務
  • 2026年4月施行の改正個人情報保護法との組み合わせで、企業のAIリスク管理が急務に

対象読者: 生成AIを業務導入している企業の経営者・法務・コンプライアンス担当・AI推進担当者

読了後にできること: プリンシプル・コードへの自社の準拠状況を確認し、優先対応事項をリスト化できる


「ChatGPTに学習データを入れているんですが、著作権的に大丈夫ですか?」

2025年後半から、AI研修の質疑応答でこの質問が急増しました。社内文書を学習データにする、Webのコンテンツを自動収集して要約する——便利な使い方が広がる一方で、著作権や透明性への不安が高まっているんです。

そこに2025年12月26日、内閣府が「AIプリンシプル・コード(仮称)(案)」を公表しました。日本語でいうと「生成AIの適切な利活用等に向けた知的財産の保護及び透明性に関するプリンシプル・コード」です。長い名前ですが、内容は明確で実践的です。

この記事では、プリンシプル・コードの内容を噛み砕いて解説し、企業として何をすべきかを整理します。

プリンシプル・コードとは何か——3分で把握する

まず基本情報を整理します。

項目内容
発表機関内閣府 知的財産戦略推進事務局
公表日2025年12月26日(ドラフト)
パブコメ期間2025年12月26日〜2026年1月26日
法的拘束力なし(ソフトロー)
適用方式コンプライ・オア・エクスプレイン
主な対象生成AI事業者(開発者・提供者)
確定時期2026年度(予定)

対象は主に「生成AI事業者(開発者・提供者)」です。ChatGPT、Claude、Geminiのような生成AIサービスを開発・提供する側に向けた原則です。一般企業がAIを利用する側としての義務を定めたものではありません。ただし、生成AIを使ったサービスを提供する企業(いわゆるAIを使ったBusiness)は、提供者としての側面で関係してきます。

AIガバナンス全体の文脈については、AI導入戦略完全ガイドでまとめています。

3つの主要原則——何が求められているか

プリンシプル・コードは3つの原則で構成されています。

原則1:透明性確保のための概要開示

生成AI事業者は、自社のAIシステム・サービスについて以下を開示することが求められます。

  • 学習データの概要(どんなデータを使ったか)
  • データ収集に使用したクローラーの情報
  • トレーニングプロセスの概要
  • モデルアーキテクチャの概要
  • 開発・提供・利用中に行われた意思決定の追跡可能性

重要なのは「技術的に可能かつ合理的な範囲で」という留保がついている点です。営業秘密に当たる部分まで全開示が求められているわけではありません。

原則2:権利者への詳細開示

著作権者等の権利者が法的手続(権利行使・許諾交渉など)を準備・実施する際に、詳細な情報を開示することが求められます。

具体的には:

  • 学習データに含まれる特定のコンテンツが学習に使われたかの確認に応じる
  • 権利者が権利行使を判断するために必要な情報を提供する

これは実務的に重要です。出版社・クリエイター・メディア企業が「あなたのAIは私のコンテンツを無断学習したか」と問い合わせてきた場合、合理的な範囲で回答することが求められます。

原則3:知的財産権保護のための措置

権利者の意思を尊重した技術的措置として、以下が求められます。

  • robots.txtの尊重: Webクローリングを行う場合、サイト管理者のクロール拒否設定を遵守する
  • ペイウォールの尊重: 有料コンテンツの無断取得を行わない
  • 権利者がAI学習を拒否する意思表示をした場合の対応

robots.txtは従来からSEO・クローリングの文脈で存在していましたが、AI学習への適用を明示的に求めるのは今回のポイントです。

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「コンプライ・オア・エクスプレイン」とは何か——具体的な影響

プリンシプル・コードが採用する「コンプライ・オア・エクスプレイン」方式は、ビジネス界では馴染みのある仕組みです。コーポレートガバナンス・コード(上場企業向けのガバナンス原則)でも採用されています。

簡単にいうとこうです。

【コンプライ・オア・エクスプレインの2択】

パターン1 - コンプライ(遵守):
「我々はプリンシプル・コードの原則1〜3に準拠しています」
→ 具体的な準拠状況を開示

パターン2 - エクスプレイン(説明):
「原則XXについては、以下の理由で準拠していません」
→ 不準拠の理由を説明・公表

「準拠も説明もしない」はNG

法的義務ではありません。しかし、準拠しない場合は「なぜ準拠しないのか」を公表する必要があります。これが市場規律として機能します。

2026年4月の個人情報保護法改正との組み合わせリスク

プリンシプル・コードと時期が重なるのが、2026年4月施行の改正個人情報保護法です。AIと個人情報に関して、企業が注意すべき点が増えました。

リスク領域プリンシプル・コード改正個情法
学習データの透明性開示義務(原則1〜2)個人データ利用目的の明示強化
第三者提供権利者への開示対応第三者提供時の記録義務強化
不正利用防止robots.txt・ペイウォール尊重不正取得データ利用禁止の強化
権利行使への対応詳細開示(原則2)開示請求への対応義務

この2つが重なることで、AIを「使う側」の企業も間接的な影響を受けます。例えば、「生成AIに個人情報を含む業務データを入力する行為」が、改正個情法の観点で問題になる可能性があります。

正直にいって、個人情報保護法のAI関連の解釈はまだグレーゾーンが多い。顧問弁護士に確認しながら、慎重に進めることをおすすめしています。

企業への実務的影響——「使う側」と「作る側」で対応が違う

「使う側」企業(一般企業がAIを業務利用する場合)

直接の対象は生成AI事業者ですが、「使う側」企業にも間接的影響があります。

主なポイント:

  • 利用しているAIサービスがプリンシプル・コードに準拠しているか確認する義務(道義的)
  • AI出力コンテンツの著作権リスクを把握・管理する
  • 社内データのAI処理に関するポリシーを整備する

特に「AI出力コンテンツの著作権」は2025年現在でも解釈が定まっていない部分があります。文化庁は「AIが完全に自律的に生成したものには著作権が発生しない」という立場を示していますが、人間の創意工夫が加わった場合の扱いは個別判断になります。

「作る側」企業(AIサービスを開発・提供する場合)

プリンシプル・コードの主な対象です。対応が必要な主要事項をチェックリスト形式で示します。

【AIサービス提供者向け対応チェックリスト】

【原則1:透明性開示】
□ 学習データの概要を公開ページで開示している
□ クローラー利用の事実と方針を明示している
□ モデルアーキテクチャの概要情報を開示している
□ 重要な意思決定プロセスの追跡記録を保管している

【原則2:権利者への対応体制】
□ 権利者からの問い合わせ窓口を設置している
□ 特定コンテンツの学習使用確認に対応できる体制がある
□ 権利行使への対応プロセスを文書化している

【原則3:技術的保護措置】
□ Webクローリング時にrobots.txtを尊重している
□ ペイウォードコンテンツの無断取得を行っていない
□ 権利者のAI学習拒否の意思表示への対応フローがある

準拠状況を年1回以上レビューし、変更があれば公開情報を更新すること

違反時のレピュテーションリスク——法的制裁がなくても怖い理由

プリンシプル・コードに違反しても、法的制裁はありません。では何も起きないのかというと、そうではありません。

2025年、米国では複数の大手AI企業がコンテンツクリエイターや出版社から著作権侵害で訴訟を起こされています。日本でも同様の訴訟が起きる可能性はあります。その時に「プリンシプル・コードに準拠していた」という事実は、企業の立場を守る材料になります。逆に「何も対応していなかった」という事実は、訴訟リスクを高めます。

もう一つ、取引先・パートナー企業からのデューデリジェンス(DD)での影響があります。AIスタートアップへの投資・買収検討時に、著作権対応・透明性対応の状況が確認される場面が増えています。

【要注意】よくある誤解と落とし穴

誤解1:「うちはAIを使う側だから関係ない」

❌ 「プリンシプル・コードはAI開発会社向け。うちはChatGPTを使うだけだから無関係」

⭕ 「使う側でも、AI出力の著作権リスク管理と個情法対応は必要」

特に、AIで生成したコンテンツを外部に公開・販売している場合は要注意です。

誤解2:「robots.txtに書けばAI学習を完全に防げる」

❌ 「robots.txtに”AI学習禁止”と書けば学習されない」

⭕ 「プリンシプル・コードに準拠している事業者はrobots.txtを尊重するが、全事業者が遵守するとは限らない」

現時点ではrobots.txtのAI学習への法的効力は確立していません。事業者の自主的な遵守に依存しています。

誤解3:「2026年度確定版が出るまで様子を見ればいい」

❌ 「まだドラフトだから確定してから動けばいい」

⭕ 「ドラフト段階でも大枠は変わらない。早期対応が競争優位につながる」

パブリックコメントを経て修正される部分はあるでしょうが、3原則の骨格は変わらないと見ています。早期に対応した企業が「透明性の高い事業者」としてブランド価値を高められます。

誤解4:「日本の著作権法は学習はOKだから問題ない」

❌ 「日本の著作権法第30条の4でAI学習は原則OKだから、何でも使っていい」

⭕ 「情報解析目的の例外規定があるが、権利者の利益を不当に害する場合は除外される」

著作権法第30条の4の「情報解析のための著作物の利用」は確かにAI学習の法的根拠として広く使われています。ただし「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」は例外になります。この判断は個別ケースによります。

今日から始める対応チェックリスト

【企業別の優先対応マップ】

■ AIを「使う側」のみの一般企業:
  優先度高 □ 社内AIツール利用規程の整備
  優先度高 □ AI出力コンテンツの著作権チェックフロー
  優先度中 □ 個人情報のAI入力に関するルール
  優先度低 □ 利用AIサービスの準拠状況確認

■ AIを使ったサービスを提供する企業:
  優先度高 □ 学習データ開示方針の策定・公開
  優先度高 □ robots.txt遵守体制の確認
  優先度高 □ 権利者問い合わせ窓口の設置
  優先度中 □ コンプライ・オア・エクスプレイン方針の文書化
  優先度低 □ 第三者監査の実施

■ AI技術を開発する企業(スタートアップ含む):
  全項目必須 + 法務専門家との連携

まとめ:今日から始める3つのアクション

プリンシプル・コードはソフトローですが、「何もしない」という選択のコストが上がっていることは間違いありません。特にAIをビジネスの核に置いている企業にとって、透明性と著作権対応は「コンプライアンス」ではなく「競争力」です。

  1. 今日やること: 自社がAIの「使う側」か「作る側」かを明確にし、上記チェックリストで現状確認する
  2. 今週中: AI出力コンテンツを外部公開している場合、著作権チェックのフローが存在するか確認する
  3. 今月中: AIサービスを提供している場合、学習データ開示方針のドラフトを法務担当と作成する

AI推進法(罰則なし・罰則禁止なし)との組み合わせで、日本のAIガバナンス全体を理解したい場合は「日本AI推進法完全解説」もあわせてご覧ください。

社内AIガバナンスの具体的な設計については、ChatGPT活用ガイドで実践的な手順を解説しています。

参考・出典


著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、X(旧Twitter)で活用法を発信(@SuguruKun_ai、フォロワー約10万人)。100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。

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佐藤傑
この記事を書いた人 佐藤傑

株式会社Uravation代表取締役。早稲田大学法学部在学中に生成AIの可能性に魅了され、X(旧Twitter)で活用法を発信(@SuguruKun_ai、フォロワー10万人超)。100社以上の企業向けAI研修・導入支援を展開。著書累計3万部突破。SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。

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