結論:GPT-5.6は「単一モデルの改良」ではなく、Sol・Terra・Lunaの3層ファミリーへの再編です。GPT-5.5から変わった点を一言でまとめると「同じ料金で賢く速く、しかも下位モデルの選択肢が増えた」世代交代なんです。
- 構成の変化:GPT-5.5は実質1本立てでしたが、GPT-5.6はSol(フラッグシップ)・Terra(バランス型)・Luna(低コスト型)の3モデル体制に
- 新機能:推論モード「max」と、複数エージェントを並列稼働させる「ultra」が追加。APIにはProgrammatic Tool Callingとマルチエージェント(ベータ)が入りました
- 料金:Solの単価はGPT-5.5と同額(入力5ドル/出力30ドル per 100万トークン)。Terraは半額、Lunaは5分の1で使えます
対象読者:現在GPT-5.5をChatGPT・Codex・APIで使っていて、GPT-5.6で何が良くなるのか、乗り換えるべきかを判断したい方。本記事はOpenAI公式発表で確認できた内容のみを扱い、未発表の項目は「未発表」と明記します。
最終更新:2026年7月
2026年7月9日、OpenAIがGPT-5.6ファミリーの一般提供(GA)を開始しました。私も発表当日からCodexとAPIで触っているんですが、正直、GPT-5.5からの体感差は「ベンチマークの数字以上」だと感じています。特にツール呼び出しが多いエージェント的な作業で、往復回数が目に見えて減りました。
ただ、GPT-5.6は6月の限定プレビュー段階からリーク記事や憶測記事が大量に出回っていて、「何が公式に確定した情報なのか」が分かりにくくなっています。この記事では、OpenAIの公式発表(GA発表・プレビュー発表・GPT-5.5発表)を突き合わせて、GPT-5.5→GPT-5.6で確定的に変わった点だけを整理します。プレビュー時点の経緯はGPT-5.6プレビュー発表の解説記事で詳しく書いているので、あわせてどうぞ。
GPT-5.6とは?GPT-5.5からの最大の変化は「3層ファミリー化」
GPT-5.6の最大の変化は、性能そのものよりモデルの提供体系です。OpenAIは今回から新しい命名体系を導入しました。
- GPT-5.6 Sol:フラッグシップ。コーディング・ナレッジワーク・サイバーセキュリティ・科学で最高性能を狙うモデル
- GPT-5.6 Terra:日常業務向けのバランス型。公式いわく「GPT-5.5と競合する性能で2倍安い」
- GPT-5.6 Luna:最速・最安。大量処理ワークロード向け
数字(5.6)が「世代」を、Sol・Terra・Lunaが「能力ティア」を表し、各ティアは今後それぞれのペースで更新されると公式に説明されています。つまり今後は「GPT-5.7 Terraだけ先に出る」といった展開もあり得る設計です。
GPT-5.5時代は、実質「GPT-5.5(とThinking/Pro)」の一本軸で、用途別の下位モデルは前世代のminiやnanoを使い続ける形でした。GPT-5.6では同世代内でコスト帯を選べるようになった、、、これが企業導入の観点では一番大きい変化だと思っています。
GPT-5.5との違い早見表
| 項目 | GPT-5.5 | GPT-5.6 |
|---|---|---|
| モデル構成 | GPT-5.5(Thinking/Pro/Instant) | Sol/Terra/Lunaの3層+Sol Pro |
| API料金(100万トークン) | 入力5ドル/出力30ドル | Sol:入力5ドル/出力30ドル Terra:入力2.5ドル/出力15ドル Luna:入力1ドル/出力6ドル |
| 推論エフォート | 最大xhigh | 新設定「max」を追加(xhighよりさらに深く推論) |
| マルチエージェント | なし(単一エージェント) | 「ultra」モード新設(既定で4エージェント並列)。APIにマルチエージェント(ベータ) |
| ツール呼び出し | 従来型の関数呼び出し | Programmatic Tool Callingを追加(軽量プログラムでツール群を自律調整、ZDR対応) |
| プロンプトキャッシュ | 従来仕様 | 明示的キャッシュブレークポイント+最低30分のキャッシュ保持。書き込みは非キャッシュ入力単価の1.25倍、読み取りは90%割引を継続 |
| 安全対策 | 従来の安全スタック | 過去最大規模の安全スタック。サイバー関連の有害活動ブロックが従来比約10倍 |
| コンテキスト長 | API 100万トークン/Codex 40万トークン | GA発表本文には明記なし(2026-07-12時点。APIドキュメント参照) |
料金の位置づけを他社モデルと比べたい方は、主要AIモデルAPI料金比較を更新済みなのでそちらをご覧ください。
性能差分:公式ベンチマークで見るGPT-5.5との差
OpenAIがGA発表で公開した評価結果から、GPT-5.6 SolとGPT-5.5の直接比較を抜粋します。数値はすべて公式発表の掲載値です。
コーディング
| ベンチマーク | GPT-5.6 Sol | GPT-5.5 |
|---|---|---|
| Artificial Analysis Coding Agent Index v1.1 | 80 | 76.4 |
| SWE-Bench Pro | 64.6% | 59.4% |
| DeepSWE v1.1 | 72.7% | 67% |
| Terminal-Bench 2.1 | 88.8%(ultraで91.9%) | 85.6% |
数字だけ見ると数ポイント差ですが、公式発表の重要ポイントは「効率」です。Coding Agent IndexでSolはmax推論時に出力トークンが半分以下・所要時間が半分以下・コストが約3分の1減でこのスコアを出したと説明されています。同じ結果を安く速く出せる、というのがGPT-5.6の売りなんです。
ナレッジワーク・コンピュータ操作
| ベンチマーク | GPT-5.6 Sol | GPT-5.5 |
|---|---|---|
| Agents’ Last Exam(55分野の長時間業務ワークフロー) | 52.7% | 46.9% |
| OSWorld 2.0(PC操作) | 62.6% | 47.5% |
| BrowseComp(エージェント的ブラウジング) | 90.4%(ultraで92.2%) | 84.4% |
| BenchCAD | 70.6% | 44.4% |
| HealthBench Professional | 60.5% | 49.5% |
個人的に注目しているのはOSWorld 2.0の47.5%→62.6%という伸びです。画面を見て操作する「コンピュータユース」はGPT-5.5の弱点だった領域で、ここが15ポイント伸びたのは実務インパクトが大きい。公式も「生成したUIを自分でレンダリング結果まで確認して仕上げる」能力が上がったと説明しています。スライドやドキュメント生成でも、参照デッキのデザインシステム(レイアウト・タイポグラフィ・配色)を推測して踏襲する精度がGPT-5.5より上がったことが、公式のビフォーアフター例で示されました。
サイバーセキュリティ(GPT-5.5から最も伸びた領域)
| ベンチマーク | GPT-5.6 Sol | GPT-5.5 |
|---|---|---|
| Capture-the-Flag Challenges | 96.7% | 88.1% |
| SEC-Bench Pro | 71.2% | 45.8% |
| ExploitBench | 73.5% | 47.9% |
| ExploitGym(6時間枠) | 33.7% | 15.1%(2時間枠のピーク) |
世代間で一番差が開いたのがこの領域です。だからこそ、GPT-5.6は6月の段階で一般公開されず、米政府との調整のもと信頼できるパートナー限定のプレビューから始まりました。この経緯は後述します。
長文コンテキスト・学術系
- OpenAI MRCR v2(8-needle、256K〜512K):Sol 91.5%、GPT-5.5 81.5%
- GraphWalks BFS 100万トークン:Sol 77.1%、GPT-5.5 45.4%
- GPQA Diamond:Sol 94.6%、GPT-5.5 93.6%
- FrontierMath Tier 4(v2):Sol 83%、GPT-5.5 72.5%
正直に書いておくと、512K〜100万トークン帯のMRCRではSol 73.8%に対しGPT-5.5が74%と、ほぼ同等(わずかに5.5が上)の項目もあります。全項目で圧勝しているわけではない点は押さえておきたいところです。長文処理の他社比較はコンテキストウィンドウ比較記事で継続更新しています。
新機能①:推論モード「max」と並列エージェント「ultra」
GPT-5.6で新設されたのが2つの上位モードです。
max:xhighのさらに上の推論エフォート
GPT-5.5では推論の深さは最大「xhigh」まででした。GPT-5.6では新たに「max」が加わり、より長く考え、代替案を検討し、チェックと修正を回してから答える動きになります。ChatGPT WorkとCodexでは、GPT-5.6にアクセスできる全ユーザーが設定でオンにできます。
ultra:既定で4エージェントを並列稼働
ultraは単一エージェントの枠を超えるモードで、既定で4つのエージェントを並列に走らせて複雑なタスクを分担処理します。公式のチャートでは、BrowseComp・SEC-Bench Pro・Terminal-Bench 2.1のいずれでも、並列エージェントを足すことで「より高いスコアをより短時間で」達成できることが示されました(16エージェント構成の結果も一部公開)。トークン消費は増えるので、コストと引き換えに品質と速度を買うモードという理解が正確です。
提供範囲はChatGPT WorkではProとEnterprise、CodexではPlus以上。詳しい挙動と使いどころはultraモードの解説記事にまとめています。
新機能②:API開発者向けの変更点
APIまわりはGPT-5.5から実務的な追加が多いです。
- Programmatic Tool Calling:モデルが軽量プログラムを書いて実行し、複数ツールの調整・中間結果の処理・進捗監視を自律的に行う仕組み。全ツール応答をいちいちモデルに戻さなくてよくなるため、ツール多用タスクのトークンと往復回数が減ります。Zero Data Retention(ZDR)互換と明記されている点も企業利用では重要です
- マルチエージェント(ベータ):Responses APIで、1リクエスト内で並行サブエージェントを走らせて結果を統合できます。ultra相当の体験をAPIで自作できる位置づけです
- プロンプトキャッシュの予測可能性向上:明示的なキャッシュブレークポイント指定と、最低30分のキャッシュ保持が入りました。キャッシュ書き込みは非キャッシュ入力単価の1.25倍課金、読み取りは従来通り90%割引です
GPT-5.5のAPI仕様(100万トークンコンテキスト、Batch/Flexで半額など)からの移行を検討する場合、ベースとなる5.5側の仕様はGPT-5.5完全ガイドで確認できます。
料金の違い:Solは据え置き、下位2モデルで実質値下げ
API料金(100万トークンあたり)を並べるとこうなります。
| モデル | 入力 | 出力 | 備考 |
|---|---|---|---|
| GPT-5.5 | 5ドル | 30ドル | Batch/Flexは半額、Priorityは2.5倍 |
| GPT-5.5 Pro | 30ドル | 180ドル | 高精度用途向け |
| GPT-5.6 Sol | 5ドル | 30ドル | GPT-5.5と同単価 |
| GPT-5.6 Terra | 2.5ドル | 15ドル | 公式「GPT-5.5と競合する性能で2倍安い」 |
| GPT-5.6 Luna | 1ドル | 6ドル | 最安ティア |
表面上の単価は据え置きですが、公式発表は繰り返し「fewer tokens(少ないトークンで同じ仕事)」を強調しています。Coding Agent Indexの試算では、TerraとLunaは競合フラッグシップの約4分の1のコストで同等以上の結果を出すとされます。実効コストは単価表以上に下がる、というのがOpenAIの主張で、私の1週間弱の利用実感ともおおむね一致します。ナレッジワーク系評価でも「LunaはGPT-5.5のピーク性能に半額未満で迫り、Terraはより低コストでそれを上回る」と公式に説明されており、GPT-5.5からの乗り換え先はSol一択ではありません。
提供状況:どのプランで何が使える?
2026年7月9日からChatGPT・Codex・APIで順次展開され、24時間かけて全面提供に向かうとアナウンスされました。プラン別のアクセスは以下の通りです。
- ChatGPT:Plus・Pro・Business・EnterpriseユーザーがSol(medium以上のエフォート設定)を利用可能。ProとEnterpriseはさらに高品質の「GPT-5.6 Sol Pro」を選択可能
- ChatGPT Work・Codex:FreeとGoユーザーはTerraを利用。Plus以上はSol・Terra・Lunaを選んでエフォートを個別設定可能
- API:Sol・Terra・Lunaすべて利用可能
周辺の動きとして、同日にGPT-5.6がMicrosoft 365 Copilotの優先モデルになったことも公式発表されています。また推論基盤では、Cerebras上でSolを最大毎秒750トークンで提供する計画(7月中、当初は一部顧客限定)がプレビュー発表に記載されました。GA当日の発表全体像はGPT-5.6一般提供の速報記事で整理しています。
安全性の変化:プレビュー限定公開という異例の経緯
GPT-5.6を語る上で外せないのが公開プロセスです。GPT-5.5は通常リリースでしたが、GPT-5.6は2026年6月下旬、米政府との調整のもと、参加者を政府に共有した少数の信頼パートナー限定プレビューから始まりました。理由は前述の通り、サイバーセキュリティ能力がGPT-5.5から大幅に伸びたためです。OpenAI自身は「この種の政府アクセスプロセスが長期的なデフォルトになるべきではない」と発表文で明言しつつ、短期的な措置として受け入れた、、、という異例の書きぶりでした。
安全対策そのものも変わっています。
- モデル内蔵の保護に加え、生成中のリアルタイムチェック、推論モデルによる会話レビュー、アカウント単位の監視を重ねた多層構成
- Solのサイバー系セーフガードは、従来モデル比で約10倍の有害活動をブロックする保守的設定。正当な作業がブロックされた場合に下位モデルで再試行できるオプションをChatGPTとCodexに用意
- GA前に約70万A100相当GPU時間を投じた自動レッドチーミングを実施
- Preparedness Framework上、サイバー・生物学とも「Critical」閾値は未到達と評価
企業で使う場合、セキュリティ関連の質問が従来より慎重にブロックされる場面が増える可能性があります。脆弱性診断など正当な防御業務で本格的に使いたい組織向けには、検証済みユーザー向けのTrusted Accessプログラムが案内されています。
公式発表で確認できない(未発表の)項目
リーク記事や予測記事で語られているものの、2026年7月12日時点で公式発表に記載がない項目です。この記事では断定しません。
- GPT-5.6のコンテキストウィンドウ上限:GA発表本文に明記なし。公式評価には100万トークン帯の長文テストが含まれますが、製品仕様としての上限値は発表文に記載されていません
- 知識カットオフ日:発表文に記載なし
- Sol ProのAPI料金:発表文にはSol・Terra・Lunaの3モデルの単価のみ記載
- GPT-5.5の提供終了時期:非推奨化・廃止のスケジュールは発表されていません
GPT-5.5ユーザーは乗り換えるべき?実務目線の判断軸
100社以上のAI導入支援をしてきた立場での、現時点の整理です。
- Codex・エージェント用途で使っている → 移行推奨。コーディングとターミナル操作は全面的に上で、トークン効率の改善が使用量枠の節約に直結します
- API組み込みでコスト重視 → まずTerraを試すのが本命。GPT-5.5同等性能で単価半分は、月間コストにそのまま効きます。分類・抽出などの軽いタスクはLunaへ
- 資料・スライド・文書生成が中心 → Solの改善幅が大きい領域。テンプレート追従の精度向上は日本企業の「社内フォーマット厳守」文化と相性がいいです
- 512Kを超える超長文処理が主用途 → 一部指標でGPT-5.5と同等のため、自社ワークロードでの検証を挟んでから移行を
- セキュリティ業務で使う → 能力は大幅向上した一方、セーフガードも約10倍厳格化。ブロック頻度を試してからの判断を推奨します
よくある質問
GPT-5.6とGPT-5.5の一番大きな違いは何ですか?
提供体系の変化です。単一路線だったGPT-5.5に対し、GPT-5.6はSol・Terra・Lunaの3ティア構成になり、同世代内で性能とコストを選べるようになりました。性能面ではコンピュータ操作(OSWorld 2.0で47.5%→62.6%)とサイバーセキュリティ(SEC-Bench Proで45.8%→71.2%)の伸びが最大です。
料金はGPT-5.5から上がりましたか?
上がっていません。フラッグシップのSolはGPT-5.5と同じ入力5ドル/出力30ドル(100万トークンあたり)で、Terra(2.5ドル/15ドル)とLuna(1ドル/6ドル)という安い選択肢が増えました。さらにトークン効率の改善で実効コストは下がる傾向です。
ultraモードは誰でも使えますか?
いいえ。ChatGPT WorkではProとEnterprise、CodexではPlus以上のプランで利用できます。既定で4エージェントを並列稼働させるため、トークン消費は増えます。
GPT-5.5はいつまで使えますか?
2026年7月12日時点で、GPT-5.5の提供終了時期は公式発表されていません。API・ChatGPTとも引き続き利用できます。
GPT-5.6のコンテキストウィンドウは何トークンですか?
GA発表本文には製品仕様としての上限値の記載がありません(2026-07-12時点)。公式ベンチマークには100万トークン帯の長文評価が含まれています。正確な値はOpenAIのAPIドキュメントで確認してください。
まとめ:今日からできる3つのアクション
- 現在のGPT-5.5ワークロードを1つ選び、Terraで同じタスクを流す。品質が維持できればAPIコストは即半減します
- CodexユーザーはmaxエフォートをONにして、難しめのリファクタリングを1本任せてみる。GPT-5.5との差が一番分かりやすい試し方です
- 社内のAI利用ガイドラインを確認する。セーフガード強化でブロック挙動が変わっているため、セキュリティ関連業務でAIを使っている部署は事前検証を
Uravationでは、GPT-5.6を含む最新モデルの企業導入支援・生成AI研修を行っています。「自社のどの業務をどのモデルに割り当てるべきか」の設計からご相談いただけますので、モデル移行を検討中の方はお問い合わせください。
著者プロフィール
佐藤傑(さとう・すぐる)。株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー約10万人。100社以上の企業向けAI研修・導入支援を手がける。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。SoftBank ビジネス+IT連載執筆。
出典
- OpenAI「GPT-5.6: Frontier intelligence that scales with your ambition」(GA発表・2026年7月9日)
- OpenAI「Previewing GPT-5.6 Sol: a next-generation model」(プレビュー発表)
- OpenAI「Introducing GPT-5.5」(GPT-5.5公式発表)
- OpenAI「GPT-5.6 is now the preferred model in Microsoft 365 Copilot」(2026年7月9日)
- TechCrunch「OpenAI launches its new family of models with GPT-5.6」(2026年7月9日)
- CNBC「OpenAI to publicly release GPT-5.6, rolls out conversational AI models」(2026年7月8日)
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