2026年9月5日 更新|Aqua Voiceとは
Aqua Voice(アクアボイス)とは、話した内容をそのまま書き起こすのではなく、フィラーや言い直しを取り除いた「整形済みのテキスト」を、macOS・Windows・iPhoneのあらゆる入力欄へ直接差し込むAI音声入力アプリです(公式llms.txtで2026年9月5日に確認)。料金は無料のStarter(通算1,000語)とPro月8ドル(年払い/月払いは月10ドル)が中心で、日本語は公式対応49言語に含まれます。Android版は2026年9月5日時点で提供されておらず、公式の比較ページのFAQ「Does Aqua Voice work on Android?」への回答も「No.」で、提供時期・ウェイトリスト・ベータ募集の公式発表は同日時点で確認できません(Aqua Voice公式の比較ページ)。
最終更新:2026年9月5日(対応OS・料金・日本語対応・Androidの提供状況を公式サイト/公式llms.txt/公式FAQで再確認)
「Aqua Voice(アクアボイス)って何ができるツールで、日本語のビジネス現場で本当に使えるのか?」──答えを先に言うと、Aqua Voiceは「話した内容をそのまま文字にする」のではなく「言いたかった文章に整えてから入力してくれる」AI音声入力ツールで、独自音声認識モデルAvalonは日本語を含む49言語に対応しています。料金は無料枠つきでProが月8ドル(年払い)から。メール下書き・会議直後のメモ・AIへのプロンプト口述のような「頭の中にある文章を高速で外に出す」用途に強く、一方で音声処理はクラウド側で行われるため、法人利用ではPrivacy Mode等の設定確認が必須です。この記事では公式一次情報に基づいて、機能・料金・日本語対応の実際・ビジネスでの使いどころを整理します。
音声入力ツールって、正直「試したけど結局キーボードに戻った」という人がすごく多いんです。誤変換の修正に時間がかかって、結局自分で打った方が速い、というアレですね。Aqua VoiceはY Combinator出身のスタートアップが「その修正作業ごとAIに任せる」発想で作ったツールで、海外のAIコーディング界隈では定番になりつつあります。ただし海外ツールゆえに日本語の一次情報が薄く、「日本語でどこまで使えるのか」を確かめずに紹介している記事も見かけます。本記事は公式サイト・公式ブログ・公式ドキュメントで確認できた範囲だけを書き、確認できない点は「確認できていない」と正直に書きます。
Aqua Voiceは従来の音声入力と何が違うのか
Aqua Voiceは、米サンフランシスコのAqua Voice社(2023年創業、Y Combinator 2024年冬バッチ出身)が開発するAI音声入力(ディクテーション)アプリです。macOS・Windows 10/11・iOSに対応し、キーを押しながら話すと、CursorやClaude、Gmail、Slack、Notion、ターミナルなど、カーソルが置けるほぼすべてのテキスト欄に「整形済みのテキスト」が入力されます。
「話した通りに書く」ではなく「言いたかった文章に整える」
スマホの音声入力やOSの標準ディクテーションとの最大の違いはここです。従来の音声入力は「発話の書き起こし」なので、「えーと」「あのー」といったフィラー、言い直し、句読点の欠落がそのまま残ります。だから修正が必要で、修正するくらいなら打った方が速い、となる。
Aqua Voiceは音声認識の後段にAIによる整形処理が入っていて、次のような処理を自動で行います。
- フィラー(「えーと」等)や言い直しの除去
- 句読点・改行・大文字小文字(英語の場合)の自動整形
- 「やっぱりさっきの部分は◯◯に変えて」といった発話中の訂正指示の反映
- カスタム辞書による固有名詞・専門用語の正確な変換(Proプランで800語まで登録可)
- カスタム指示(Custom Instructions)による文体の指定──「ビジネスメール調で」「箇条書き多めで」など、ChatGPTのカスタム指示に近い感覚で書き方のルールを自然文で設定できます
つまり「録音の文字起こしツール」ではなく、「口述筆記してくれる秘書」に近い設計思想なんです。公式サイトは「タイピングの約5倍速い(約230語/分 vs キーボード約40語/分)」という数字を掲げています。この数字は英語での公称値なので日本語でそのまま再現できるかは別問題ですが、「話す速度は打つ速度より圧倒的に速い」という前提自体は日本語でも変わりません。
心臓部は独自モデル「Avalon」
Aqua Voiceの音声認識は、汎用モデルの流用ではなく独自開発のAvalonというモデルで動いています。公式ブログによると、Avalonは2025年8月に公開され、それまでのWhisperベースのパイプラインを置き換えました。特徴的なのは訓練データの思想で、「人はオーディオブックを朗読するようには話さない」として、人がコンピュータに向かって話す時の話し方──プロンプト、コード、メールの口述──に最適化されています。
公式発表では、AI・コーディング用語に特化した自社ベンチマーク「AISpeak」の最難関サブセットでAvalonが97.4%の精度を出し、Whisper Large v3の65.1%を大きく上回ったとされています。また独立系のOpen ASRリーダーボードでも上位にランクインした実績を公式が公表しています。2026年4月には後継のAvalon 1.5が投入され、公式ドキュメントでは認識速度が2倍以上に向上し、多言語対応が強化されたと案内されています。
ベンチマークの数字は「公式の自己申告」も含まれるので鵜呑みは禁物ですが、「AIツール名・技術用語・プロンプト口述に強い音声認識」という設計方針は、後述するビジネス用途と直結する重要ポイントです。
動作環境と主要機能
- 対応OS: macOS(Apple Silicon/Intel)、Windows 10/11、iOS 17以降(2026年4月公開のiPhone向けキーボードアプリ)。Android版は2026年9月5日時点で提供されていません(詳細は次の章)
- Instant Mode: 起動50ミリ秒未満、発話終了から約450ミリ秒で結果が入力される既定モード。全プランで使えます(公式FAQと公式llms.txtの仕様欄の値。同じllms.txtの機能説明には「200ミリ秒未満」という旧表記も残っており、公式内で数値が揃っていません)
- Realtime Mode: 話しながらリアルタイムに文字が出るモード(Maxプラン限定。2026年7月にStreaming Modeから改称)
- Deep Context: 画面の内容を読み取って認識精度を上げる機能(既定はオフ、読み取ったデータは保存されないと公式が明記)
- Edit Mode: 選択したテキストを音声で修正指示できる機能(デスクトップ0.17.0・2026年7月20日公開。追加課金なしで全デスクトップユーザーが使えます)
- Send It: 「送信して」と言うと入力からメッセージ送信まで完了する音声コマンド(Maxプラン限定、デスクトップ0.18.0・2026年7月26日公開。日本語の「送って」「送信してください」にも公式対応)
- Computer Control: 音声でカーソルとキーボードを操作するAIエージェント機能(ベータ・macOSのみ・MaxとBusinessに付属)
- Avalon API: OpenAI SDK互換の文字起こしAPI(モデル avalon-v1.5・音声1時間あたり0.39ドル・10秒から秒単位課金)
ブラウザ拡張や各アプリごとの設定は不要で、OSレベルで動くのでどのアプリでも同じ操作感で使えます。この「どこでも同じ挙動」は、社内展開する時の教育コストを考えると地味に効いてきます。
Aqua VoiceのAndroid対応はいつ?(2026年9月5日時点)
先に答えを書きます。Aqua VoiceにAndroid版はありません。提供時期の公式発表もありません。「いつ出るのか」を調べてこのページに来た人が最短で判断できるよう、根拠と、Androidで今できる代替手段を並べます。
公式が「非対応」と明言している
Aqua Voice公式の競合比較ページには、次のQ&Aがそのまま載っています(Aqua Voice vs Wispr Flow・公式ページ/2026年9月5日確認)。
Does Aqua Voice work on Android? — No. Aqua Voice runs on Mac, Windows, and iPhone.
(Aqua VoiceはAndroidで動きますか? — いいえ。Aqua Voiceが動作するのはMac・Windows・iPhoneです)
同じページには「The one platform gap is Android(唯一のプラットフォームの差はAndroid)」という記述もあります。競合の優位点として自社サイトに書いているので、「まだ案内していないだけ」ではなく、意図的に非対応だと読めます。
公式の対応プラットフォーム一覧
| プラットフォーム | 対応 | 公式の記載(2026年9月5日確認) |
|---|---|---|
| macOS | 対応 | Apple Silicon / Intel。主要プラットフォームと明記 |
| Windows | 対応 | Windows 10 / 11 |
| iPhone(iOS) | 対応 | iOS 17以降。2026年4月公開の音声キーボードアプリ |
| iPad / Apple Watch / Vision Pro | 記載なし | App Storeの対応機種欄はiPhoneのみ |
| Android | 非対応 | 公式比較ページで「No.」と明記。Google Playの検索でもAqua Voice, Inc.名義のアプリは確認できず |
| ブラウザ | 試用のみ | 公式サイトのサンドボックス(aquavoice.com/sandbox)で体験可能 |
| API | 対応 | Avalon API(avalon-v1.5・音声1時間あたり0.39ドル) |
ロードマップもウェイトリストも確認できない
「近日対応」と書ける材料が公式側に一つも見当たりません。2026年9月5日時点で確認した範囲は次の通りです。
- 公式ブログの最新記事は2026年8月17日で、Androidに触れた投稿はありません
- 公式の更新履歴(Changelog)の最新は2026年7月30日のデスクトップ0.18.6で、Androidの記載は1件もありません
- AIクローラー向けに公式が置いている llms.txt(2026年8月16日更新)のPlatforms節も、macOS・Windows・iOS・Avalon APIの4つだけです
- ウェイトリスト、ベータ募集、事前登録フォームのいずれも公式サイト上で確認できません
つまり「Aqua Voice Androidはいつ?」という問いへの正確な答えは、「未定。公式にロードマップの発表がない」です。他社の解説記事で「近日対応予定」と書かれているものを見かけたら、出典が公式かどうかを確かめてください。
Androidで今できる3つの現実解
- 口述はPC・iPhoneに寄せ、Androidは受け取り側に回す。Aqua Voiceはアプリごとの連携ではなくOSレベルで動くので、Mac・Windows・iPhoneで口述してSlackやNotionに流し込めば、Android端末では「読む・返信は短文で打つ」に役割を分けられます。導入対象を「PC作業が多い職種」に絞るのが最も摩擦が少ない設計です。
- AndroidスマホでもAI整形型の音声入力が必須なら、別ツールを併用する。Aqua Voice公式自身が比較ページで「Androidが必要ならWispr Flow」と案内しており、Wispr Flow公式サイトにも「Available on Mac, Windows, iPhone, and Android」と明記されています(2026年9月5日確認)。料金はAqua Voice公式の比較ページによれば月15ドルで、Aqua Voice Proの月8ドルより高い代わりにAndroidと100言語以上をカバーします。
- Avalon APIで自社アプリに組み込む。Aqua Voiceの音声認識モデルはAvalon APIとして単体提供されていて、OpenAI SDK互換のバッチ文字起こしエンドポイント(モデル avalon-v1.5・音声1時間あたり0.39ドル)を呼べます。Android側で録音してAPIに投げる社内ツールを作れば、モデルの精度だけは使えます。ただしAPIで得られるのは文字起こしまでで、Aqua Voice本体のリアルタイム挿入・Deep Context・Edit Modeは付いてきません。
法人でAndroid端末を配っている場合の判断
ここは稟議の書き方に直結するので、はっきり書いておきます。
- 支給スマホがAndroid中心の会社は、Aqua Voiceを「全社標準の音声入力」にはできません。PC(Mac/Windows)中心の職種に限定して導入し、スマホ側は別ツールにするか、そもそもスマホでは使わない前提で運用を設計してください。
- iPhone支給、またはBYODでiPhone比率が高い会社なら、PCとスマホをPro 1契約(年96ドル)でカバーできます。iOS単体をApp Storeで契約すると年119ドルになるので、Web側で契約した方が安く済みます。
- 稟議書に「Android対応予定」と書かないでください。2026年9月5日時点で公式発表がないため、根拠のない前提で決裁を通すと、後で運用が破綻します。書くなら「現時点でAndroid非対応。対象はPCとiPhoneのみ」と正直に書いた方が、あとの説明が楽です。
料金プランと無料枠の実際
2026年9月5日に公式料金ページで確認した内容です。表示はすべて米ドルで、年払い欄は月額換算です。
| プラン | 料金(年払い) | 料金(月払い) | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| Starter(無料) | 0ドル | 0ドル | 通算1,000語の無料枠。クレジットカード登録不要 |
| Pro | 月8ドル(年96ドル) | 月10ドル | 語数無制限、カスタム指示、拡張カスタム辞書(800語) |
| Max | 月24ドル(年288ドル) | 月30ドル | Proの全機能+Realtime Mode、音声コマンド(Send It)、新機能への先行アクセス |
| Team(2〜9名) | 月12ドル/人 | 月15ドル/人 | Proの全機能+一括請求、組織共通設定、組織全体のPrivacy Mode強制 |
| Business(10名以上) | 個別見積 | SSO/SAML+SCIM、詳細レポート、Zero Data Retention(データ保持ゼロ)、組織共通辞書、ボリューム割引 | |
| Avalon API(開発者向け) | 音声1時間あたり0.39ドル | OpenAI SDK互換の文字起こしAPI(avalon-v1.5・10秒から秒単位課金) | |
補足を4点。
- 無料枠は「お試し」レベル: 1,000語は通算で、週ごとに回復するタイプではありません。日本語の感覚だと数回のメール口述で使い切る量です。なお無料枠で使えるモデルについては公式内で記述が割れています——公式料金ページと公式llms.txtは無料のStarterにも「Avalon文字起こしモデル」が含まれると書いている一方、公式FAQには「無料のStarterは旧エンジンを使う」という記述が残っています(いずれも2026年9月5日確認)。無料枠の精度だけで結論を出さず、本命の精度を測るならProの月払い(10ドル)で1か月試す方が判断を誤りません。
- iOS単体はApp Store経由だと割高: App Storeのアプリ内課金はPro(年間)119ドル、Pro月額12.99ドルです。クロスプラットフォームのPro(年96ドル)にiOSも含まれるので、デスクトップと併用するならWeb側で契約する方が安く済みます。
- 学生割引あり: 学校メールアドレスの認証でProとMaxが70%オフ(Proは月3ドル、年払いなら月2.40ドル。Maxは月9ドル、年払いなら月7.20ドル)。公式料金ページのFAQは対象ドメインとして .edu に加えて .ac.uk・.ac.jp・.ac.kr・.ac.in を挙げており、日本の大学メールも対象です。
- プラン名が変わっています: かつてのEnterpriseに相当する枠は、2026年6月1日公開のデスクトップ0.14.17に合わせてBusinessとして案内されるようになりました。古い解説記事に出てくる「Enterpriseプラン」という名前は、現行の公式ページには存在しません。
法人でまとめて入れるならTeamが起点になりますが、後述するデータ処理の性質上、いきなり全社導入ではなく「まず情報の機微が低い部門・用途で試す」のが現実的です。
日本語対応の実際──公式に確認できること・できないこと
ここが本記事でいちばん正直に書きたい部分です。
公式に確認できること
- 公式ドキュメントに、対応49言語の一覧として日本語(Japanese)が明記されています。言語の自動検出にも対応しています。
- 初代Avalon(2025年8月公開)は英語のみの対応でした。公式ブログの公開時記事に「他の対応言語のモデルは訓練中」と書かれています。
- 2026年4月のiOSアプリ発表に合わせて投入されたAvalon 1.5でマルチリンガル対応が強化されたと公式が案内しています。つまり日本語がAvalon系モデルの土俵に乗ったのは比較的最近です。
- 公式サイトの日本語版が公開されています(aquavoice.com/ja)。料金表・機能説明・導入者の声まで日本語で読める状態で、2026年9月5日に確認しました。前回この記事を書いた2026年8月時点では確認できなかった点です。
- 音声コマンドが日本語に公式対応しています。Maxプランの「Send It」は英語の “send it” だけでなく、日本語の「送って」「送信してください」でも動くと公式が明記しています(デスクトップ0.18.0・2026年7月26日)。日本語話者を想定した実装が入っている具体的な証拠です。
- App Storeの対応言語に日本語が含まれます。iOSアプリのApp Storeページの言語欄は、英語・フランス語・ドイツ語・日本語・ロシア語・スペイン語の6言語です。
公式に案内がなく確認できていないこと
- 日本語単独の認識精度の公式数値。英語ではWER(単語誤り率)5.55%(Avalon 1.5)等の数字が公表されていますが、日本語について同等の公式ベンチマーク数値は確認できませんでした。
- デスクトップアプリのUI日本語化。公式サイトは日本語版が用意されましたが、macOS/Windowsアプリの設定画面がどこまで日本語化されているかについての公式案内は、2026年9月5日時点で確認できていません。設定項目は多くないので英語のままでも運用できますが、社内展開時は簡単な設定手順書を作る前提でいた方がいいです。
- 日本語での句読点・敬語整形の品質。「ですます調に整えて」等のカスタム指示が日本語でどこまで効くかは、公式の保証がある話ではないので、各社の無料枠+Proの初月で実際に検証すべき項目です。
要するに「日本語は公式対応言語で、日本語版サイトと日本語の音声コマンドまで用意されている。ただし精度の公式データは英語中心」という状態です。うちがクライアントに海外ツールの導入を相談された時は、英語の公称値は参考値として扱い、日本語品質は自社の実データで確かめてから決めることをおすすめしています。具体的には、実際の業務メールを5本ほど口述してみて、修正にかかった時間がタイピングより短いかどうか。この1点だけ見れば導入可否の判断には十分です。
ビジネスでの使いどころ3つ
「音声入力=議事録」と考えると、このツールの評価を間違えます。Aqua Voiceは会議の録音を後から文字起こしするツールではなく、いま自分の頭の中にある文章をその場で出力するツールです。この違いを踏まえた上で、ビジネスで効く場面を3つ挙げます。
1. メール・チャットの下書き口述
いちばん導入効果が見えやすいのがここです。返信の方針は頭の中で決まっているのに、文章化に5分かかる──この状況で、Gmailの返信欄にカーソルを置いて話すだけで下書きが入る。フィラー除去と整形が入るので、「話し言葉のまま貼り付いて結局書き直し」になりにくいのが従来ツールとの差です。カスタム指示で「社外向けはですます調、社内Slackはカジュアルに」と分けておくと、宛先アプリに応じた書き分けもある程度任せられます。
ただし、そのまま送信はおすすめしません。特に日本語の敬語表現は前述の通り品質の公式保証がないので、「口述で8割作って、最後の敬語チェックだけ人間」という分担が現実的です。
2. 会議直後の論点メモ・指示出し
会議そのものの録音・文字起こしは、Zoom/Teams連携型のAI議事録ツールの領分です(この使い分けは社内会議のAI文字起こし活用ガイドで詳しく整理しています)。Aqua Voiceが効くのはその後段で、会議が終わった直後の3分間に「決まったこと3つ、宿題2つ、次回までに誰が何をやるか」を口述でNotionやチャットに流し込む使い方です。
記憶が新しいうちに構造化されたメモを残す作業は、タイピングだと後回しにされがちで、後回しにされた瞬間に精度が落ちます。「話すだけなら会議室を出る前に終わる」というのが行動として大きい。録音全文の文字起こしとこの即時メモは補完関係で、どちらかで置き換えられるものではありません。
3. AIへのプロンプト口述──実はこれが本命
Avalonの訓練データがプロンプトとコードの口述に最適化されている、という設計を思い出してください。Aqua Voiceが海外でまず広がったのは、CursorやClaude CodeといったAIコーディングツールのユーザー層です。公式ブログにもVS Code・Cursor・Claude Code向けの活用ガイドが並んでいます。
これはエンジニアだけの話ではありません。生成AIに長い指示を出す場面──「この資料をこういう観点で直して、対象読者はこうで、トーンはこうで」──を全部タイピングするのは結構な負担で、指示が短く雑になる原因になっています。私たちの研修現場でも「プロンプトを書くのが面倒でAIを使わなくなる」という脱落パターンは頻出です。話すだけなら3倍の情報量の指示を同じ時間で出せる。指示が詳細になればAIの出力品質も上がる。音声入力はプロンプトの質を底上げする入力装置として捉えると、投資対効果の見え方が変わります。
なお、音声でAIを操作する流れ自体はツール横断のトレンドで、ChatGPT側も音声からCodexやエージェントを操作する方向に進んでいます。この動きはChatGPT VoiceのPC対応解説で扱ったので、「対話型の音声AI」と「入力特化のAqua Voice」の位置づけの違いを比べてみてください。前者はAIと会話するための音声、後者はあらゆるアプリへの入力を置き換える音声です。
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法人利用で確認すべきセキュリティとデータの扱い
便利さの話の後に、必ずセットで確認すべき話をします。
まず大前提として、Aqua Voiceの音声処理はクラウドで行われます。公式ドキュメント上、オンデバイス(端末内完結)やオフラインのモードは案内されていません。つまり発話内容は必ず社外のサーバーを通ります。ここを踏まえた上で、公式が公表している対策は次の通りです。
- SOC 2 Type II: 2026年3月25日に公式ブログで準拠を発表。一時点の審査ではなく一定期間の運用を対象とする監査です。
- ISO/IEC 27001:2022: 2026年7月14日に認証取得を公式発表。
- Privacy Mode: 有効にすると書き起こしテキストがサーバーに保存されなくなります。注意すべきはデフォルトでは無効で、無効の場合は製品改善のためにトランスクリプトが保持されうると公式が明記している点。Teamプランでは組織全体にPrivacy Modeを強制でき、EnterpriseではさらにZero Data Retention(データ保持ゼロ)が選べます。
- Deep Context: 画面読み取りデータは保存されないと公式が明記しています。
法人導入の実務としては、次の3点を最低ラインにしてください。
- 個人のProアカウントを野良で使わせない(Privacy Modeが個人任せになるため)。導入するならTeam以上で組織的にPrivacy Modeを強制する
- 顧客名・未公開情報を含む口述を許可する範囲を、自社の生成AI利用ガイドラインの入力区分に合わせて定義する
- 音声もAIへの「入力」であることを社内に周知する──キーボードなら書かない機密を、口では言ってしまう事故は起こり得ます
導入の最短手順と定着のコツ
試すこと自体は簡単で、公式サイトからデスクトップアプリをダウンロードしてアカウントを作れば、あとは設定したキーを押しながら話すだけです。カーソルがあるテキスト欄ならどこでも入るので、アプリごとの連携設定は要りません。ここでは「試したのに定着しない」を防ぐための運用面のコツを3つ書いておきます。
最初にカスタム辞書へ固有名詞を入れる
日本語ビジネスで音声入力の体験を最も悪くするのは、社名・人名・製品名の誤変換です。Proプランなら辞書に800語まで登録できるので、初日に「自社名・主要取引先・よく使う製品名・部署名」を20〜30語入れてください。この一手間の有無で初週の印象がまったく変わります。Enterpriseでは組織共通辞書も使えるので、社内展開時は管理側で配布する設計にできます。
カスタム指示は「宛先別」に書く
カスタム指示には「社外メールはですます調で結論から」「箇条書きは3点まで」のような整形ルールを自然文で設定できます。欲張って長いルールを書くより、自分の出力先の上位2つ(例:メールとSlack)に絞った短いルールから始めて、誤整形が出たら1行ずつ足していく方が安定します。なお日本語でのルール追従の品質は公式保証のある話ではないので、ここも実地検証の対象です。
「1用途・1週間」で判定する
全部の入力を一気に音声へ切り替えようとすると、慣れの負荷で挫折します。おすすめは「メール返信の下書きだけ」「AIへのプロンプトだけ」のように1用途に絞って1週間使い、修正時間込みでタイピングより速かったかだけを判定すること。合格なら用途を広げ、不合格なら無理に続けない。音声入力は向き不向きの個人差が大きい領域なので、社内展開でも「全員必須」ではなく「合う人が使う任意ツール」として位置づける方が定着します。
導入判断のFAQ
Android版はありますか?いつ出ますか?
2026年9月5日時点でAndroid版はありません。公式の比較ページには「Does Aqua Voice work on Android?」に対して「No.」と明記されており、提供時期・ウェイトリスト・ベータ募集の公式発表も確認できません。AndroidスマホでAI整形型の音声入力が必要なら、Aqua Voice公式自身が比較ページで挙げているWispr Flow(公式サイトにMac・Windows・iPhone・Android対応と記載)などを検討してください。
どのOSに対応していますか?
macOS(Apple Silicon/Intel)、Windows 10/11、iOS 17以降のiPhoneの3つです。加えて開発者向けにAvalon API(OpenAI SDK互換・音声1時間あたり0.39ドル)が提供されています。iPad・Apple Watch・Vision Pro・Androidは公式の対応一覧に記載がありません(2026年9月5日時点)。
無料でどこまで試せますか?
Starterプランで通算1,000語まで無料です(週ごとに回復するタイプではありません)。使えるモデルについては公式内で記述が割れていて、公式料金ページと公式llms.txtは無料枠にもAvalonが含まれると書き、公式FAQには旧エンジンを使うという記述が残っています(2026年9月5日確認)。本命の精度を測るならProの月払い(10ドル)で1か月検証する方が判断を誤りません。
会議の議事録作成に使えますか?
用途が違います。Aqua Voiceは自分が話して入力するツールで、複数人の会話の録音・話者分離・全文文字起こしには向きません。議事録目的ならZoom/Teams連携型のAI議事録ツールを選び、Aqua Voiceは会議後の要点メモや指示出しに使うのが正しい分担です。
日本語の精度はどのくらいですか?
日本語は公式対応49言語に含まれますが、日本語単独の精度に関する公式数値は確認できていません。英語での公称値(WER 5.55%等)をそのまま日本語に当てはめるのは危険なので、自社の実業務文で検証してから判断してください。
Wispr Flowなど競合との違いは?
AI整形型の音声入力ツールは複数登場していますが、Aqua Voiceの特徴は独自モデルAvalonをAI用語・コーディング・プロンプト口述に特化して訓練している点と、SOC 2 Type II・ISO 27001という法人向け認証を両方公表している点です。プラットフォームでは差があり、Aqua Voice公式自身が比較ページで「唯一のプラットフォームの差はAndroid」と書いています(Wispr FlowはAndroid対応、Aqua Voiceは非対応)。競合各社の詳細比較は本記事の範囲外なので、選定時は各社の公式情報で同じ観点(整形品質・日本語対応・対応OS・データ保持ポリシー・認証)を突き合わせてください。
まとめ
Aqua Voiceは「音声入力は結局使えない」という過去の経験を上書きしうるツールです。ポイントを整理します。
- 従来の音声入力との違いは、書き起こしではなく整形済みテキストを出力すること。フィラー除去・訂正反映・文体指定まで自動化される
- 独自モデルAvalonはプロンプト・コード口述に最適化。生成AIへの指示出しの入力装置として本領を発揮する
- 料金はPro月8ドル(年払い)から。無料枠は通算1,000語で、使えるモデルの記述が公式内で割れているため、検証はPro月払い1か月が現実的
- 対応OSはmacOS・Windows・iPhoneの3つ。Android版は2026年9月5日時点で非対応で、提供時期の公式発表もない。Android中心の会社は全社標準にできない
- 日本語は公式対応49言語に含まれるが、日本語単独の精度データは公式に案内がなく確認できていない。自社業務文での検証が必須
- 処理はクラウド側。法人はTeam以上でPrivacy Modeを組織強制し、生成AIガイドラインの入力区分と揃える
音声はキーボードに代わる「第2の入力デバイス」として、AI活用の生産性を左右する段階に入ってきました。まずはメール下書きかプロンプト口述のどちらか1用途に絞って、1週間だけ試してみてください。合う・合わないは、それで十分わかります。
参考・出典(初回参照2026年8月4日、対応OS・料金・日本語対応・Androidの提供状況は2026年9月5日に再確認)
- Aqua Voice 公式サイト(製品概要・対応言語・公称性能値)
- Aqua Voice Pricing(公式料金ページ)(各プラン料金・無料枠・学生割引)
- Introducing Avalon(公式ブログ・2025年8月22日)(Avalonモデルの設計思想・ベンチマーク)
- Aqua Voice for iOS(公式ブログ・2026年4月8日)(iOSアプリ公開・Avalon 1.5)
- Aqua Voice is SOC 2 compliant(公式ブログ・2026年3月25日)/ISO 27001 certified(公式ブログ・2026年7月14日)(セキュリティ認証)
- Aqua Voice llms.txt(公式・2026年8月16日更新)(対応プラットフォーム・49言語一覧・料金表・レイテンシ・Avalon API価格)
- Aqua Voice FAQ(公式)(対応OS・無料枠・学生割引・無料枠のモデルに関する記述)
- Aqua Voice vs Wispr Flow(公式比較ページ)(Android非対応の明記)
- Aqua Voice Changelog(公式更新履歴)(Edit Mode 0.17.0/Send It 0.18.0/Businessプラン0.14.17の公開日)
- Aqua Voice 日本語版公式サイト(日本語ローカライズの実在確認)
- Wispr Flow 公式サイト(Mac・Windows・iPhone・Android対応の確認/2026年9月5日参照)
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