結論(2026年9月21日時点):TypeSafe AIは、判断だけを型付きで返すAIモデル「Jev」を公開したサンフランシスコ本社の米国法人「TypeSafe AI, Inc.」です。公式に確認できるのは法人名・本社住所・経営陣3人の経歴・法務文書4本で、調達額・出資者名・従業員数・設立年月日は公式に公表されていません。
- 要点1:本社は255 California St, Suite 1300, San Francisco, CA 94117。利用規約とマスターカスタマー契約(MCA)が通知先住所として明記しています。
- 要点2:創業者兼CEOはDiogo Almeida氏。公式チームページは「RLHFとInstructGPTを共同で発明した」「以前はGoogle Brainにいた」と記載しています。
- 要点3:取引先として見るときの急所は、学習利用・保持期間・テレメトリ・責任上限・準拠法の5点。規約に条文があるものと、書かれていないものがはっきり分かれています。
この記事の対象:Jevを社内の仕組みに入れる前に、開発元を取引先として確認したい情報システム部門・法務・経営層。
今日やること:法務文書4本の最終更新日を控え、情報システム部門と法務に渡す確認事項を5つに絞ってください。
TypeSafe AIは、2026年9月15日に最初のモデル「Jev」を早期提供で公開した米国のAI企業です。公式ブログで創業者が「2年間のステルス期間を経て」と書いているとおり、会社としての露出はこの数日で始まったばかりで、日本語で読める一次情報はほとんどありません。
そのため「どこの会社か分からないまま、社内の判定処理を載せてよいのか」という問い合わせが増えています。この記事は、Jevそのものの仕様ではなく、開発元を取引先として確かめるための会社解説です。製品の料金・仕様・使い方はJevとは|TypeSafe AIの料金・仕様・使い方で整理しているので、そちらに送ります。
書いているのは、公式サイト・公式ドキュメント・利用規約・プライバシーポリシー・データ処理条項(DPA)・マスターカスタマー契約を2026年9月21日に開いて読み取れた範囲だけです。確認できなかった項目は「公式に確認できていない」とそのまま書きます。推測で埋めることはしません。
TypeSafe AIとは|Jevを公開した米国サンフランシスコのAI企業
TypeSafe AIは、会話文を生成するのではなく、ソフトウェアがそのまま分岐に使える型付きの判断を返すAIモデルを作っている会社です。公式が「System One Model(システムワン・モデル)」と呼ぶ新しいモデル区分を掲げ、その最初の公開モデルがJevにあたります。

公式ドキュメントのSystem Oneのページは、この区分を「ソフトウェアが直接使える、速くて構造化された判断を行うために作られたAIモデルのクラス」と定義しています。同じページの注記で、名前がダニエル・カーネマンの著書『ファスト&スロー』で広まった「システム1(速くて直感的な思考)」から取られていることも明記されています。
会社の立ち位置は、トップページの見出し「Build Prod, Not God(神ではなく、本番を作る)」に凝縮されています。マニフェストには「われわれはAGIという動き続けるゴールポストを追いかけてはいない。今日のモデルはすでに、巨大な経済価値を生むのに必要な知能の閾値をとうに越えている」とあり、足りないのは知能の総量ではなくその知能がソフトウェアに組み込みにくいことだ、という主張で製品が設計されています。
会社の基本情報|公式に確認できた項目と、確認できていない項目
公式ページで裏の取れた項目だけを表にします。空欄を埋めたくなる項目ほど、公式に出ていないという事実のほうが判断材料になります。

| 項目 | 公式に確認できた内容 | 出典(2026年9月21日確認) |
|---|---|---|
| 法人名 | TypeSafe AI, Inc.(本文中の表記は「Typesafe AI, Inc.」の箇所もあり) | 利用規約・プライバシーポリシー・MCAの冒頭 |
| 本社住所 | 255 California St, Suite 1300, San Francisco, CA 94117 | 利用規約 第13条/MCA 第15条の通知先住所 |
| オフィス | サンフランシスコ、Embarcadero駅の近く。チームは週5日出社 | チームページ「Culture」 |
| 創業者・CEO | Diogo Almeida | チームページ/公式ブログの署名 |
| 経営陣 | CEO・COO・CTOの3人を公開 | チームページ |
| ステルス期間 | 「2年間のステルスを経て」と創業者が記載 | 公式ブログ(2026年9月15日) |
| 最初の公開モデル | Jev(早期提供・順番待ちから順次案内) | 公式ブログ |
| サービスの所在 | サービスは米国内でホストされている | プライバシーポリシー「International Visitors」 |
| 連絡先 | hello@typesafe.ai(一般)/sales@typesafe.ai(上限引き上げ・企業プラン)/privacy@typesafe.ai(プライバシー・ゼロデータ保持)/support@typesafe.ai(サイト関連) | フッター/公式ドキュメント/利用規約 第13条 |
| 採用 | Ashby上の求人ページを公開 | トップページ・チームページの「Open roles」 |
| 設立年月日 | 2026年9月21日時点で公式に確認できていない | ― |
| 資金調達 | 「トップティアの投資家から出資を受けている」との記載のみ。調達額・出資者名・評価額は2026年9月21日時点で公式に確認できていない | チームページ |
| 従業員数 | 数字の公表は2026年9月21日時点で確認できていない。「OpenAI、Google Brain、Meta/FAIR、Stripe、Airbnb、Plaid、Dockerなどの出身者による少人数でフラットなチーム」と記載 | チームページ |
| 日本法人・日本語窓口 | 2026年9月21日時点で公式に確認できていない | ― |
登記に関して公式ページから読み取れるのは、利用規約の準拠法がデラウェア州法であること、MCAの準拠法がカリフォルニア州法であることの2点です。デラウェア登記のスタートアップにはよくある組み合わせですが、登記そのものを公式ページで確認したわけではありません。登記情報が必要なら、デラウェア州務長官のエンティティ検索で法人名を引くのが確実です。
経営陣3人の経歴|公式チームページに書かれている範囲
チームページに掲載されている3人を、書かれている内容そのままで紹介します。肩書き・経歴はいずれも同ページの記載で、本人のプロフィールページへはLinkedInのリンクが貼られています。
Diogo Almeida(CEO・創業者)
チームページの記載は「RLHFとInstructGPTを共同で発明した。これらはChatGPTとGPT-4につながった手法である。以前はGoogle Brainに在籍」というものです。公式ブログでは本人の一人称で、OpenAI時代に「言語モデルを指示に従わせ、人と会話できるようにする手法づくりに関わり、その研究がChatGPTの背後の研究になった」と書いています。同じ記事で「この4年間、自分を動かしてきた問い」として、チャットが超人的になったのに自動化が進まないのはなぜか、を挙げています。
Sasha Sheng(COO)
「Meta/FAIRの元リサーチエンジニアで、News Feed、AI Experiences、AI Researchに携わった。多くのハッカソンを主催し、NeurIPSとECCVで論文を発表している」と記載されています。
Erik Gafni(CTO)
「連続起業家(DNAシーケンシング向けのマルチモーダルAIを扱うRavel)。ユニコーン2社(InvitaeとFreenome)の初期社員で、多数の論文と特許を持つ発明者。本番で動くAIシステムの構築を専門とする」と記載されています。
取引先として見るとき、この3人の経歴は「モデルを作った経験」と「本番システムを運用した経験」が揃っているかの確認材料になります。一方で、日本市場の担当者・サポート体制・日本語での連絡手段については、2026年9月21日時点で公式に記載が見当たりません。
System One Modelという考え方|なぜ「会話」を外したのか
System One Modelは、製品名ではなくモデルの区分名です。公式ブログとマニフェストを読むと、この区分が学習方法の違いから定義されていることが分かります。

マニフェストの脚注は「RLHFは現在のAIのほぼすべてが訓練に使っているアルゴリズムで、人間の好みを直接最適化する。現代の推論モデルはRLVRも併用し、プログラムで評価できるタスク(つまりベンチマーク)を最適化する」と説明しています。そのうえで公式は、自社の学習方法をRLCD(Reinforcement Learning for Calibrated Decisions=較正された判断のための強化学習)と名付け、最適化の対象を「System Oneタスクに対して、認識論的に正直な確率が付いた答え」だと書いています。
この差は、出力の形に直結します。公式ブログの比較表によれば、既存のLLMの出力は文字列で「チャットの返答でも、コードでも、幻覚でも、拒否でもありうる。ソフトウェアで使うには解析と検証が必要で、AIが脱線する危険も常にある」。対してSystem Oneの出力は型付きの構造化された値で、「取りうる出力と構造が事前に定義され、モデルは型エラーを起こさない。すべての答えに較正された確率と確信度が付く」と説明されています。
マニフェストが使う比喩が分かりやすいので引きます。初期の自動車は「馬のいない馬車」として設計され、高い座席も馬車用のバネも、車種によっては鞭を挿す穴まで残っていた。新しい技術は、自分本来の形を見つける前に、置き換える対象の形と前提に押し込められる――現在のAIも「親切で、よく話す、感じのよいアシスタント」として訓練されており、それは人間が相手にいると仮定するなら妥当だが、結果として人が常に輪の中にいないと動かないAIになった、という主張です。
公式はこの路線を「ニューロシンボリックAIの夢」とも呼び、脚注で「ちょっとふざけて言えば『賢いif文』」と要約しています。会社としての手順も3段階で明示されています。第1段階が機械にとって自然な合成可能AIの形を、可能なかぎり高い1ドルあたりの知能で出すこと。第2段階がそれを本当の自動化に耐えるだけ信頼できるものにすること。第3段階が、積み重ねられるだけ安定した高次の知能の抽象を世界に渡すこと。
取引先を評価する立場からは、この思想の是非より「この会社は会話AIの競合ではなく、会話AIの下のレイヤーを取りに来ている」という位置取りを押さえておくと、社内説明が通りやすくなります。既存のLLMの置き換えを提案しているわけではありません。
公開している製品と、公式情報の入口
調べ始めるときに開く場所は、主要な6か所に索引とトラストセンターを足した8つです。役割つきで並べます。いずれも2026年9月21日に開いて応答を確認しています。

| 入口 | URL | そこにあるもの |
|---|---|---|
| 会社サイト | typesafe.ai | マニフェスト、チーム、ブログ3本、法務文書へのリンク |
| 開発者向けドキュメント | docs.typesafe.ai | モデル仕様、API仕様、質問形式、設計パターン、クックブック |
| ドキュメント索引 | docs.typesafe.ai/llms.txt | 全ページの一覧と1行説明。調査の起点に向く |
| 評価結果 | evals.typesafe.ai | 4つのワークフロー(セキュリティ事象、エージェント追跡の可観測性、請求書処理、カスタマーサービス)での比較と前提の開示 |
| APIコンソール | console.typesafe.ai | Playground、APIキーの発行(/keys) |
| 稼働状況 | status.typesafe.ai | api.typesafe.aiの稼働状況と障害履歴 |
| トラストセンター | trust.typesafe.ai | DPAがサブプロセッサ一覧の所在として指定している場所 |
| 公開リポジトリ | github.com/typesafe-ai | Python SDK、JavaScript SDK、エージェント用スキル、LLM APIで置き換えられるアダプタ |
稼働状況のページは、取引先確認でいちばん見落とされます。2026年9月21日02時20分(UTC)時点の表示は「All services are online」で、api.typesafe.aiの稼働率は99.856%と掲示されていました。同じページには2026年6月下旬以降の障害履歴が日別で残っており、数分から20分程度の停止が散発しています。これは実績値であって、契約上の稼働率保証ではありません。この違いは後述します。
公開リポジトリも判断材料になります。2026年9月21日時点で、エージェント用スキルのリポジトリが1,195スター、JavaScript SDKが186スター、Python SDKが152スター、LLM APIを裏側に使う差し替え用アダプタが202スターでした。パッケージはPyPIがtypesafe-sdkの0.7.0、npmが@typesafe-ai/sdkの0.6.0です。バージョン番号が0番台である点は、社内の安定性評価にそのまま使えます。
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「Jev」の読み方と、似た名前との取り違え
結論から言うと、Jevの日本語の読み方は2026年9月21日時点で公式に確認できていません。公式サイト・公式ドキュメント・公式ブログのいずれにも、読み仮名や発音の記載は見当たりませんでした。
手がかりは名前の由来です。公式ブログのFAQは「Jevという名前は、William Stanley Jevonsにちなんで付けた」と明記しています。蒸気機関の効率が上がった結果として石炭の需要がかえって増えた、といういわゆるジェヴォンズのパラドックスを引き、知能のコストが一桁下がるたびに用途は桁違いに増える、という見立てを説明する文脈です。日本語の経済学の文献ではJevonsを「ジェヴォンズ」または「ジェボンズ」と表記するのが一般的なので、Jevは「ジェヴ」「ジェブ」と読まれることが多くなりそうですが、公式の読みではありません。社内資料に書くときは英字表記のまま「Jev」とし、初出に「TypeSafe AIのモデル」と添えるのが安全です。
検索するときは取り違えに注意が必要です。2026年9月21日にキーワード調査(ラッコキーワードのサジェスト)で「jev」を引くと、上位に並ぶのは「ジェヴォーダンの獣」「ジェヴィン」「Jevil」「jev vaccine」「jevic」といった無関係の語でした。とくにJEVは日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)の略号としても広く使われるため、医療関係の情報が混ざります。
社名側も同様です。「type-safe(型安全)」はプログラミング言語の一般用語で、TypeScriptやRustの文脈で日常的に出てきます。社名として検索するときは「TypeSafe AI」まで入れるか、ドメインのtypesafe.aiで確認するほうが確実です。社内の検索やナレッジベースに登録するときは、「TypeSafe AI(Jevの開発元)」のように補足を付けておくと、あとから引くときの取り違えを防げます。
法人が契約前に確かめる7項目|規約とポリシーの該当条項
公開されている法務文書は4本です。いずれもtypesafe.ai配下にあり、最終更新日が明記されています。

- 利用規約(Terms of Use):最終更新 2026年9月19日。サイトの利用が対象
- マスターカスタマー契約(MCA):最終更新 2026年9月19日。サービス利用の一般条件
- データ処理条項(DPA):最終更新 2026年4月24日
- プライバシーポリシー:最終更新 2025年11月19日
なお、MCA第5条が参照しているtypesafe.ai/legal/aup(利用許容ポリシー)は、2026年9月21日時点でアクセスすると404が返りました。禁止行為の一覧を確認したい場合は、営業窓口に所在を問い合わせる必要があります。以下、社内で論点になりやすい7項目を条文の位置つきで整理します。
1. 入力データはAIの学習に使われるか
プライバシーポリシーは「あなたのプロンプトやその他の入力について、いかなる人工知能・機械学習モデルの学習やファインチューニングも行わない」と無条件の書き方をしています。加えて「入力をサービスプロバイダ以外の第三者に開示しない」とも書かれています。公式ドキュメントのモデルページにも「Jevは顧客のリクエストやレスポンスで学習していない」「顧客データでファインチューニングやLoRA適応は行わず、全アカウントで同じ重みが動く」と明記されています。
ただしMCA第4.1条は「顧客の事前の同意なしに、顧客データを人工知能・機械学習モデルの重みを変更するためのデータセットに含めることはしない」と、同意があれば含めうる書き方になっています。ポリシーとMCAで強さが違う点は、稟議に出す前に営業窓口へ確認しておく論点です。
2. データはどれだけ保持されるか
DPAの付表は保持期間を「処理の目的を踏まえて必要な限り、かつ時効に関する法令およびデータ保護法を遵守して保持する」としており、日数の定めはありません。公式ドキュメントの法務ページは、ゼロデータ保持(ZDR)はエンタープライズ顧客向けの提供で、詳細はprivacy@typesafe.aiに問い合わせる、と案内しています。保持なしを前提に設計したいなら、通常契約では足りません。
解約後についてはMCA第10.3条が踏み込んでいます。契約期間中も終了後も「TypeSafeは顧客データを保存・保持する義務を負わず、単独の裁量でいつでも削除できる」。データの引き上げが必要なら、解約前に自社側で完了させる前提で運用設計を組む必要があります。
3. テレメトリは何が取られるか
MCA第4.3条は「テレメトリ」を、技術ログ、ハッシュ、要約統計や分類、メトリクス、顧客の利用に関する学び、と定義しています。そのうえで「TypeSafeはテレメトリを制限なく処理でき、サービスや他の製品の改善にも使える」と書かれています。第4.1条では、テレメトリの生成・不正利用の監視・法令遵守の3目的について、顧客データの利用権が無期限とされています。学習利用の否定とテレメトリの扱いは別の話なので、混ぜて理解しないほうがよい箇所です。
4. 出力の権利は誰のものか
MCA第4.2条は「TypeSafeは入力の所有権を主張せず、出力の所有権も否認する。出力に対して有しうる一切の権利を顧客に譲渡する」と定めています。ここは明快です。一方で第13条の知的財産補償は、サービス自体が第三者の米国特許・著作権・商標・営業秘密を侵害するという請求を対象としており、出力は明文で対象外とされています(第13.4条e号)。
5. 止まったときの約束はあるか
MCA第9.1条のサービス保証は「サービスがドキュメントに記載されたとおりに実質的に動作すること」だけです。救済は第9.2条で、発見から30日以内に書面で申し立て、TypeSafeが30日以内に是正できなければ違約金なしで解約でき、前払い済みの未使用分が返金される、という流れになっています。
第9.3条は「現状有姿」「提供可能な範囲」を宣言し、「利用が中断しないこと、エラーがないことを保証しない」と明記します。稼働率の数値を約束するSLAは、2026年9月21日時点でMCA本文に確認できませんでした。status.typesafe.aiに出ている99.856%は実績表示であり、契約上の保証ではありません。止まると困る処理に載せるなら、自社側のフォールバックを前提に設計してください。
6. 責任の上限はいくらか
MCA第12.2条の責任上限は「請求が生じた日より前の12か月間に顧客がTypeSafeに支払った金額」と「50米ドル」のいずれか大きいほうです。第12.1条では、逸失利益・データ喪失・セキュリティ機構の不全・事業中断・間接損害について双方が責任を負わないとされています。単価が安いサービスほど支払総額が小さく、上限も小さくなる点は、載せる業務の重さと突き合わせて判断する必要があります。
7. 準拠法と紛争解決はどうなっているか
ここは文書によって違うので注意してください。MCA第16.2条はカリフォルニア州法で、裁判地はサンフランシスコ市郡の州裁判所・連邦裁判所。対して利用規約第13条bはデラウェア州法で、裁判地はデラウェア州内です。利用規約はサイトの利用、MCAはサービスの利用が対象なので、実務で効くのはMCAのほうです。
どちらの文書も、紛争は原則としてJAMSによる個別の仲裁で解決し、陪審裁判とクラスアクションの権利を放棄する、と定めています。利用規約には合意から30日以内に書面で仲裁を離脱できる条項がありますが、MCAには同様の離脱条項が確認できませんでした。
越境の観点では、プライバシーポリシーが「サービスは米国でホストされている」と明記し、DPA第6条がEU標準契約条項のモジュール2・3と英国アデンダムを採用しています。日本の個人情報保護法の観点では外国にある第三者への提供の整理が必要になりますから、社内の生成AI利用ルールと突き合わせてください。ルール側の設計は生成AI利用ガイドライン10項目と運用・改定の設計術に条文例つきでまとめています。
料金の請求条件とクレジットの扱い|経理と先に合わせること
モデル単価そのものはJevの料金・仕様の記事に譲り、ここでは契約側の条件だけを扱います。稟議で止まるのはたいていこちらです。
| 条件 | MCAの定め |
|---|---|
| 課金の単位 | アカウント経由で送る入力ごとに、TypeSafeが管理する「クレジット」を消費する(第8.2条) |
| クレジットの性質 | 換金・返金・譲渡はできず、法定通貨でも財産権でもない(第8.2条a) |
| 有効期限 | 購入したクレジットは、契約期間の終了日と購入から12か月後のうち早いほうで失効(第8.2条a) |
| 残高ゼロ時 | 自動補充に申し込んでいれば設定額で補充。申し込んでいなければ、出力の生成を断られることがある(第8.2条a) |
| 支払い | 注文書に別段の定めがなければ米ドル建て、請求書日から30日以内(第8.1条) |
| 遅延利息 | 月1.5%または法令上の上限のいずれか低いほう(第8.3条) |
| 税 | 料金は税抜き。売上税・GST・付加価値税・源泉税などは顧客負担(第8.4条) |
| 停止条件 | 支払いが30日以上遅延した場合などに、即時にアクセスを停止しうる(第7条) |
| 解約時の返金 | 未消費の前払い分について補償・返金の義務はない(第10.3条) |
加えて、公式ドキュメントのモデルページには「レート上限は動的に調整している。非常に大きな需要に対応しており、上記の上限は予告なく変わりうる」という警告が掲示されています。上限を安定させたい場合はカスタムプラン・エンタープライズプランでsales@typesafe.aiに相談する、と案内されています。本番の処理量を前提にするなら、この相談を契約前に済ませておくのが現実的です。
【要注意】取引先として審査するときの失敗パターン4つ
失敗1:稼働率の実績値をSLAとして稟議に書く
❌ 稼働状況ページの99.856%を「SLA 99.8%」として社内資料に転記する。
⭕ 実績表示であることを明記し、MCA第9条には稼働率の数値保証がないことを併記する。止まったときの救済は「是正できなければ解約と未使用分の返金」までだと書く。
失敗2:プライバシーポリシーの1文だけで学習利用の確認を終える
❌ 「学習に使わないと書いてあります」で情報システム部門の確認を通す。
⭕ プライバシーポリシー(無条件)とMCA第4.1条(事前同意があれば可)の差、テレメトリの無期限利用(第4.3条)、ゼロデータ保持がエンタープライズ向けである点の3つをセットで確認する。
失敗3:英語前提のまま日本語の業務にいきなり載せる
❌ 英語のデモが速かったので、日本語の問い合わせ振り分けにそのまま適用する。
⭕ 公式ドキュメントのモデルページは「英語が主要な学習言語で、現時点でいちばん精度が高い。CJK(日本語・中国語・韓国語)を含む他言語も扱えるが同等ではない。自社のコンテンツで試してから依存すること」と明記しています。自社データで小さく測ってから広げてください。
失敗4:エージェントに調べさせた結果を裏取りせずに稟議へ回す
❌ コーディングエージェントが要約した仕様や条文を、そのまま社内資料に貼る。
⭕ 公式スキルのドキュメント自身が「主張を額面どおりに受け取らず、前提を検証させること」「古いスキルはリクエストやレスポンスの項目を作り出す原因になる」と注意しています。条文と数値は一次ページで引き直してください。AIエージェントを社内に置くときの権限の切り方はAIエージェントの権限設計|最小権限3段階と停止手順の実務が参考になります。
Uravationならこう判断する|取引先確認を4段階に分ける
新しいAI企業を取引先として見るときは、情報を集める順番を決めておくと早く終わります。弊社が支援先に案内している順番は次の4段階です。
第1段階:一次資料を1枚にまとめる。法人名、本社住所、法務文書4本の最終更新日、連絡先3つ(一般・営業・プライバシー)を1枚の表にします。この記事の基本情報の表がそのまま雛形になります。更新日を書いておくと、次に見直すときに差分だけ追えます。
第2段階:載せる業務を、間違えたときの影響で3段に分ける。誤っても社内で気づいて直せる処理、顧客に届くが取り消せる処理、金銭や契約が動いて取り消せない処理。第3段の処理にSLAのないサービスを単独で置かない、という線を先に引きます。
第3段階:情報システム部門と法務に渡す確認事項を5つに絞る。学習利用、保持期間とゼロデータ保持、米国へのデータ移転、責任上限、止まったときの扱い。この5つに絞ると、全条文を読ませるより回答が早く返ります。シャドーAIの棚卸しを並行して進めるならシャドーAIエージェントの棚卸し手順の分類がそのまま使えます。
第4段階:日本語の1業務で精度を測ってから広げる。英語が主要な学習言語だと公式が明記している以上、日本語の精度は自社データで測る以外にありません。既存の判定処理と同じ入力を流して突き合わせ、人に回す基準を決めてから本番に入れます。議事録や社内文書のように個人情報が混ざる業務から始めるなら、社内規定側の項目をAI議事録のセキュリティ対策|社内規定に入れるべき10項目で先に埋めておくと、検証の途中で止まりません。
調べるときに使える公式の入口と指示文
以下はいずれも公式ドキュメントに載っている操作、または社内で使う確認依頼の文面です。弊社で実行した結果を示すものではありません。
公式ドキュメントの全ページ索引を取得する(公式がllms.txtを公開しています)。
curl -s https://docs.typesafe.ai/llms.txt自社アカウントで使えるモデルを確認する(公式ドキュメントのモデルページに掲載されている例)。
curl https://api.typesafe.ai/v1/models \
-H "Authorization: Bearer $TYPESAFE_API_KEY"Python SDKを入れる(公式クイックスタートの記載)。APIキーはconsole.typesafe.aiで発行し、環境変数TYPESAFE_API_KEYに入れる、と案内されています。
pip install typesafe-sdk
# uv を使う場合
uv add typesafe-sdkコーディングエージェントに公式スキルを入れる(公式のエージェントスキルのページの記載)。
claude plugin marketplace add typesafe-ai/skills
claude plugin install typesafe@typesafe-ai
# Claude Code 以外のエージェント
npx skills add typesafe-ai/skills --skill typesafe-ai公式が例示している調査用のプロンプト(エージェントスキルのページに原文で掲載されているもの)。
Using the TypeSafe skill, explore the project and find opportunities for using
intelligent judgement to stand in for complex parsing or other fragile code.情報システム部門・法務に渡す確認依頼の文面(社内用の雛形。回答期限と宛先は自社の運用に合わせて書き換えてください)。
件名:TypeSafe AI(Jev)の利用可否判断のための確認依頼
対象サービス:TypeSafe AI, Inc. の System One API(モデル名 Jev)
公式文書:利用規約/マスターカスタマー契約/データ処理条項/プライバシーポリシー
確認をお願いしたい5点:
1. 入力データの学習利用(プライバシーポリシーとMCA第4.1条で記述の強さが異なる)
2. 保持期間(DPAに日数の定めなし。ゼロデータ保持はエンタープライズ向け)
3. 米国へのデータ移転(サービスは米国でホスト。個人情報の該否と委託構成)
4. 責任上限(直近12か月の支払額と50米ドルのいずれか大きいほう)
5. 停止時の扱い(稼働率の数値保証は規約本文に確認できず)
社内での想定用途:[ここに具体的な業務名と、誤判定時の影響を書く]
希望回答期限:[日付]TypeSafeへ英文で問い合わせる場合の骨子(宛先は公式が案内しているprivacy@typesafe.aiとsales@typesafe.ai)。
Subject: Enterprise questions before evaluating Jev
1. Zero data retention (ZDR): availability, scope, and how it is contracted.
2. Subprocessor list: current URL and notification process for changes.
3. Rate limits: current values for our expected volume, and how they are committed.
4. Uptime: whether any service level commitment is available on an enterprise plan.
5. Japanese-language accuracy: any published guidance or reference customers.よくある質問
TypeSafe AIはどこの国の会社ですか
米国の法人です。利用規約とマスターカスタマー契約が通知先として記載している住所は255 California St, Suite 1300, San Francisco, CA 94117で、チームページには「サンフランシスコのEmbarcadero駅近くのオフィスで週5日、対面で働いている」と書かれています。プライバシーポリシーは「サービスは米国内でホストされている」と明記しています。2026年9月21日時点で、日本法人や日本語の問い合わせ窓口は公式に確認できていません。
上場していますか。資金調達はどれくらいですか
非公開企業です。上場している旨の記載は公式サイトにありません。資金調達については、チームページに「われわれのビジョンを共有するトップティアの投資家から出資を受けている」という記載があるだけで、調達額・投資家名・評価額は2026年9月21日時点で公式に確認できていません。数字が必要な稟議であれば、営業窓口に直接照会するのが確実です。
「Jev」はどう読みますか
公式に読み方の記載は2026年9月21日時点で確認できていません。名前の由来は公式ブログのFAQに書かれており、経済学者のWilliam Stanley Jevons(ジェヴォンズ)にちなんだものです。いわゆるジェヴォンズのパラドックス――効率が上がるとかえって需要が増える現象――を引いて、知能のコストが下がるほど用途が増えるという見立てを説明しています。日本語表記に迷う場合は、英字のまま「Jev」と書き、初出で「TypeSafe AIのモデル」と補うのが無難です。
入力したデータはAIの学習に使われますか
プライバシーポリシーは「プロンプトその他の入力について、いかなるAI・機械学習モデルの学習やファインチューニングも行わない」と書いています。公式ドキュメントも「Jevは顧客のリクエストやレスポンスで学習していない」「全アカウントで同じ重みが動く」と明記しています。ただしマスターカスタマー契約の第4.1条は「顧客の事前の同意なしには含めない」という条件付きの書き方で、同条はテレメトリの生成については無期限の利用権を定めています。稟議では3点をセットで確認してください。なお、保持をなくしたい場合のゼロデータ保持はエンタープライズ顧客向けの提供で、窓口はprivacy@typesafe.aiです。
稼働率の保証(SLA)はありますか
2026年9月21日時点で、稼働率の数値を約束する条項はマスターカスタマー契約の本文に確認できませんでした。第9.1条のサービス保証は「ドキュメントに記載されたとおりに実質的に動作すること」のみで、第9.3条は「現状有姿」「提供可能な範囲」を宣言し、無停止・無エラーを保証しないとしています。status.typesafe.aiに掲示されている99.856%は実績値であり、契約上の保証ではありません。止まると業務が止まる処理に載せる場合は、自社側の代替経路を前提にしてください。
まとめ
TypeSafe AIは、2年間のステルスを経て2026年9月15日にJevを公開した、サンフランシスコ本社の米国法人です。公式に確認できるのは法人名・本社住所・経営陣3人の経歴・法務文書4本の中身で、調達額・出資者名・従業員数・設立年月日・日本の窓口は、2026年9月21日時点で公式に公表されていません。
取引先として見るときの急所は5つです。学習利用はプライバシーポリシーと契約で記述の強さが違うこと。保持期間に日数の定めがなく、保持なしはエンタープライズ向けであること。テレメトリの利用権が無期限であること。責任上限が直近12か月の支払額と50米ドルのいずれか大きいほうであること。そして、稼働率の数値保証が規約本文に見当たらないこと。
裏を返せば、モデルの単価・速度・型安全性という技術側の主張は、evals.typesafe.aiや稼働状況ページのように前提と実績を開示する形で出ています。開示が多い会社ほど、確認すべき場所もはっきりします。まずは法務文書4本の最終更新日を控えるところから始めてください。
執筆者
佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー約10万人。
100社以上の企業向けAI研修・導入支援。著書『AIエージェント仕事術』『Claude仕事術』(SBクリエイティブ・シリーズ累計約6万部)。
SBクリエイティブ「ビジネス+IT」ほかで生成AI連載を執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。
次の一歩
- 製品そのものを知りたい:料金・仕様・3つの質問形式・向かない仕事はJevとは|TypeSafe AIの料金・仕様・使い方にまとめています。
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参考・出典
- TypeSafe AI「Introducing System One Models & Jev」(2026年9月15日・参照2026年9月21日):創業者名、2年間のステルス、RLCD、名前の由来、公開値の前提
- TypeSafe AI「Team」(参照2026年9月21日):経営陣3人の経歴、オフィスの所在と勤務形態、出資に関する記載
- TypeSafe AI「Manifesto」(参照2026年9月21日):ミッション、RLHF・RLVR・RLCDの整理、3段階の方針
- TypeSafe AI「Master Customer Agreement」(最終更新2026年9月19日・参照2026年9月21日):課金、クレジット、保証、責任上限、準拠法、解約
- TypeSafe AI「Terms of Use」(最終更新2026年9月19日・参照2026年9月21日):本社住所、デラウェア州法、仲裁とその離脱
- TypeSafe AI「Privacy Policy」(最終更新2025年11月19日・参照2026年9月21日):学習利用の否定、米国でのホスティング、問い合わせ先
- TypeSafe AI「Data Processing Addendum」(最終更新2026年4月24日・参照2026年9月21日):役割、サブプロセッサ、越境移転、保持期間
- TypeSafe AI Docs「Models」(参照2026年9月21日):レート上限の可変性、言語対応、学習に使わない旨
- TypeSafe AI Docs「Legal」(参照2026年9月21日):法務文書の一覧、ゼロデータ保持の窓口
- TypeSafe AI Docs「Agent skill」(参照2026年9月21日):公式スキルの導入コマンドと例示プロンプト
- TypeSafe AI Status(参照2026年9月21日):稼働率の実績値と障害履歴
- TypeSafe AI Workflow evals(参照2026年9月21日):4ワークフローの比較と評価方法の開示
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