結論: 2026年7月14日に「人工知能基本計画(第Ⅱ期)」が閣議決定され、それを実行する体制として経済産業省に「情報処理システム開発・ロボット課」(通称:AI産業戦略課)が2026年8月5日付で新設されました。企業にとっての実務的な意味は、AI・ロボット関連の補助金や調達基準、ガイドライン改定の”窓口”がこの新課に一元化されていく点にあります。
この記事の要点:
- 要点1: AI基本計画(第Ⅱ期)は「AIを使う」「AIを創る」「AIの信頼性を高める」「AIと協働する」の4方針で構成(2026年7月14日閣議決定)
- 要点2: 経産省「AI産業戦略課」は2026年8月5日発足。正式通称は8月7日付で修正されており、旧称「AI産業課」表記のまま止まっている情報は要注意
- 要点3: 企業は今すぐ契約や規程を作り直す義務はないが、ベンダー審査・社内AI利用規程・補助金活用の3点は追跡体制を整えておくべき
対象読者: AI導入・活用を検討する中小企業の経営者・情報システム部門・経営企画担当者
読了後にできること: 自社のAIベンダー審査票・社内AI利用規程に「今、何を追記すべきか」を判断できるようになります
「うちの会社、『AI基本計画』とやらに何か対応しなきゃいけないんですか?」
先日、ある研修先の経営会議に同席した際、担当役員からこう聞かれました。ニュースで「AI基本計画」「閣議決定」という言葉は見かけたけれど、自社の業務にどう関係するのかピンとこない——という反応は、AI導入支援の相談の場でも頻繁に耳にします。
結論から言うと、2026年7月14日に閣議決定された「人工知能基本計画(第Ⅱ期)」自体は、今すぐ契約書や社内規程を書き換えなければならない類の”規制”ではありません。ただし、この計画を実行する政府側の体制が2026年8月5日に大きく動きました。経済産業省が、AIとロボットの政策担当課を一本化した新課「AI産業戦略課」を発足させたのです。これは中小企業向けのAI導入補助金や、今後の政府調達基準・ガイドライン改定の出どころが、この新課に集約されていくことを意味します。
この記事では、AI基本計画(第Ⅱ期)の中身と、それを実行する新体制の両方を、企業目線で整理します。制度の名前を覚えることが目的ではなく、「自社は今、何をすべきか/すべきでないか」を判断できる状態を目指します。
【最新】経産省に「AI産業戦略課」誕生|何が変わったのか
まず、直近の動きを時系列で押さえておきましょう。2026年8月時点でもっとも新しい制度上の変化は、この経済産業省の組織改正です。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2025年12月23日 | AI基本計画(第Ⅰ期)閣議決定。AI法(AI推進法)に基づく初の法定計画として策定 |
| 2026年3月26日 | 「AIロボティクス戦略」を関係府省連絡会議で決定(同年5月27日に一部変更) |
| 2026年7月10日 | 第5回人工知能戦略本部(高市総理主宰)で「AI基本計画(第Ⅱ期)」案を決定 |
| 2026年7月14日 | AI基本計画(第Ⅱ期)を閣議決定 |
| 2026年7月31日 | 経済産業省組織令の一部改正を閣議決定(令和8年政令第247号) |
| 2026年8月5日 | 組織令改正が公布・施行。商務情報政策局に新課「情報処理システム開発・ロボット課」発足 |
| 2026年8月7日 | 経産省が新課の通称を「AI産業戦略課」に修正(METIプレスリリース更新履歴に明記) |
ここで一つ、実務上見落とされがちな注意点があります。新課の正式名称は「情報処理システム開発・ロボット課」で、通称については経産省自身が2026年8月7日付で修正を入れています。プレスリリースには「【2026年8月7日更新】情報処理システム開発・ロボット課の通称を修正しました」と明記されており、修正後の正式な通称は「AI産業戦略課」です。8月5日前後に配信されたニュース記事の中には、修正前の「AI産業課」という表記のまま更新されていないものもあるため、今後この部署名で検索・照会をする際は「AI産業戦略課」の表記で確認することをおすすめします(一次ソース: 経済産業省プレスリリース)。
組織改正の中身を整理すると、次の3点に集約されます。
- ロボット政策の移管: これまで製造産業局が担っていたロボット関連事務が、商務情報政策局へ移管されました
- AI産業戦略課の新設: 商務情報政策局に「情報処理システム開発・ロボット課(通称:AI産業戦略課)」を新設し、AIとロボットを一体的に推進する体制を整備
- 情報処理技術研究開発事務の統合: 情報産業課が担っていた情報処理技術の研究・開発事務もAI産業戦略課へ移管。あわせて情報技術利用促進課は廃止され、情報処理技術者試験制度やIT人材育成の事務は情報経済課へ移管されました
経産省は改正の目的を「経済産業省の所掌事務の的確な遂行を図るため」と説明しています。これまで「AI=商務情報政策局」「ロボット=製造産業局」と縦割りだった担当が一本化された形で、2026年3月に決定済みの「AIロボティクス戦略」を実行するための体制整備という位置づけです。
AI導入戦略の全体像や、補助金・ROIを含めた中長期の計画の立て方はAI導入戦略ガイド|6フェーズ・ROI・助成金で失敗しないで詳しく解説しています。
そもそもAI基本計画(第Ⅱ期)とは|「日本AX」を支える4つの方針
組織改正の背景にある「AI基本計画(第Ⅱ期)」の中身も確認しておきます。この計画は、AI法(AI推進法)に基づく法定計画である第Ⅰ期(2025年12月23日閣議決定)を拡充する形で、2026年7月14日に閣議決定されました。計画の副題は「日本AX――より強く、より豊かに」で、「日本AX(AIトランスフォーメーション)」を社会全体で進めることをコンセプトに据えています。
計画本体は、次の4つの基本方針で構成されています。
| 基本方針 | 内容の要旨 |
|---|---|
| ①AIを使う | 行政・産業だけでなく医療、介護、教育、防災など準公共分野を含め、社会全体でAI活用を推進する |
| ②AIを創る | 国産の開発基盤構築を含め、AI技術そのものの研究開発を強化する |
| ③AIの信頼性を高める | AIセーフティ・インスティテュート(AISI)による評価体制の強化など、安全で信頼できるAI環境を整備する |
| ④AIと協働する | 人間とAIが役割を分担しながら協働する関係を構築する |
投資の重点領域としては「バーティカルAI(医療・介護・教育・防災など領域特化型のAI)」と「フィジカルAI(AIロボティクス)」の2つが繰り返し挙げられており、2026年3月に決定済みの「AIロボティクス戦略」も、このフィジカルAI領域を具体化する計画として位置づけられています。政府はこれらの領域に官民投資を集中させる方針を示しています。
企業に関わる3つの重点施策
基本計画の中で、実際に企業活動に接点が生まれやすいのは次の3点です。
1. AISI(AIセーフティ・インスティテュート)の評価体制強化
AISIは、AIモデルの評価とトレーサビリティの確立、ガードレールなどの技術的制御、危機発生時の情報共有の仕組み構築を進め、米国CAISI・英国AISIなど海外の同種機関とのネットワークも活用するとされています。ポイントは、この評価結果が「制度・指針・運用改善へ接続」される見通しであることです。政府調達の基準に反映されれば、民間企業がAIベンダーを選定する際の事実上の参照基準になり得ます。
2. 地域AX(中堅・中小企業への導入支援)
計画では、中堅・中小企業を「生産性、創造力、実行力を向上させる成長基盤」と位置づけ、地域ごとにAI導入を伴走支援する「地域AX」の考え方が示されています。既存の「デジタル化・AI導入補助金」の活用や地域ネットワークの構築とあわせて進める方針で、補助金活用を検討している企業にとっては、今後この文脈で新しい支援メニューが出てくる可能性があります(補助金の具体的な仕組みはAI導入補助金 完全攻略ガイドを参照してください)。
3. 「責任あるアジャイル・ガバナンス」への転換
計画はガバナンスについて、固定的なルールを一度に作るのではなく、状況に応じて継続的に見直す「アジャイル・ガバナンス」の考え方を掲げ、AI法(AI推進法)を含めた制度の見直しも視野に入れています。AI推進法そのものの背景や罰則の有無についてはAI推進法とは|2025年施行・罰則なしの中身と企業対応で解説済みですが、今後は基本計画側の進捗にあわせて、ガイドラインが段階的に更新されていく可能性が高いです。
実行計画の中身|「AIロボティクス戦略」の数値目標
AI基本計画のフィジカルAI方針を、より具体的な数値目標に落とし込んだのが、内閣官房「AIロボティクスに関する関係府省連絡会議」が2026年3月26日に決定した「AIロボティクス戦略~社会実装を加速し、巨大市場を切り拓く~」です(同年5月27日に一部変更)。製造業・物流業・建設業・小売業など、現場を持つ企業にとってはこちらの方が具体的なイメージをつかみやすいはずです。
戦略の背景として挙げられているのは、①画像・音声・センサ情報を統合して現実世界を理解し行動するフィジカルAIの進展、②米中を中心に自動車・半導体などの異業種プレイヤーが巨大資本でロボット市場に参入している構造変化、③人口減少による人手不足が幅広い産業・地域で深刻化している、という3点です。これを踏まえ、戦略は次の数値目標を掲げています。
| 目標 | 内容 |
|---|---|
| ①国際競争力の強化 | 米中に並ぶ「第三極」として世界シェア3割超を獲得。2040年に60兆円規模と見込まれるロボット市場のうち20兆円規模を我が国が獲得 |
| ②社会実装 | 18分野ごとの「AIロボティクス実装ロードマップ」に基づき、2040年までに1,000万台規模のAIロボットを国内に導入 |
| ③経済成長・社会課題解決 | エッセンシャルサービスの維持・発展、DX・GXによる生産性向上、経済安全保障の確保に貢献 |
対象となる18分野は、製造業(多品種少量生産)、造船、物流(倉庫・輸配送)、建設・土木、建築、インフラ保守、小売、宿泊業、飲食・食品製造、医療、介護、警備業、農業、林業、廃棄物処理業、災害対応、警察活動、防衛です。自社の業種がこの中に含まれる場合、今後この分野別ロードマップの中で導入目標・支援策が具体化されていく可能性があるため、注視しておく価値があります。
主要施策としては、①ロボットメーカー・部品メーカー・SIer(システムインテグレーター)が連携する供給基盤の標準化・共通化、②現場データを核にしたロボット基盤モデルの開発(AIRoA=AIロボット協会が開発する国産ロボット基盤モデルは、2027年6月頃を目途にベータ版をオープンソースで公開予定)、③需要創出と導入環境整備、の3本柱が示されています。「技術開発・実証を先行させ、その後に導入を促す」という従来の順序から、需要側と供給側の取り組みを同時並行で進める方針への転換が明記されている点が特徴です。
「AI基本計画」と「AI事業者ガイドライン」は何が違うのか
制度系の記事でよく質問されるのが、「AI基本計画」と、経産省・総務省が所管する「AI事業者ガイドライン」の違いです。名前が似ているうえに、どちらも2026年に改訂されているため混同しやすいのですが、性質がまったく異なります。
| 項目 | AI基本計画 | AI事業者ガイドライン |
|---|---|---|
| 所管 | 内閣府(人工知能戦略本部) | 経済産業省・総務省 |
| 性質 | AI法(AI推進法)に基づく法定計画。国全体の投資・政策方針 | 事業者が自主的に検討すべき望ましい行動の考え方を整理したソフトロー |
| 対象 | 政府・社会全体のAX推進方針 | AI開発者・提供者・利用者という3主体それぞれの行動指針 |
| 最新版 | 第Ⅱ期(2026年7月14日閣議決定) | 第1.2版(2026年3月31日公表) |
つまり、AI基本計画は「国としてAIにどう投資し、どう実装を進めるか」という方針であり、AI事業者ガイドラインは「自社がAIを開発・提供・利用する際に何に気をつけるべきか」という実務指針です。企業の現場で直接使うのは主に後者ですが、後者の方向性を規定しているのが前者、という関係になります。AI事業者ガイドライン第1.2版の実務チェックリストはAI事業者ガイドライン1.2版 中小企業の実務チェックリストで解説していますので、あわせて確認しておくと制度全体の見取り図がつかみやすくなります。
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【要注意】経営者が誤解しがちな3つのポイント
複数の企業の経営陣とお話ししていると、AI基本計画や組織改正のニュースに対して、似たような誤解が繰り返されているのに気づきます。
誤解1:AI基本計画は規制強化で、AIが使いにくくなる
❌ 「基本計画が決まった=規制が厳しくなる」
⭕ 基本計画は”規制”ではなく”推進”計画です。4つの基本方針のうち3つ(使う・創る・協働する)は活用促進が主眼で、信頼性強化はそのうちの1つにすぎません。むしろ官民投資の集中や補助金メニューの拡充など、活用を後押しする内容が中心です。
誤解2:AI産業戦略課の話は経産省内部のことで、自社には関係ない
❌ 「組織改正はお役所の内輪の話」
⭕ AI・ロボット関連の補助金申請窓口、政府調達基準、ガイドライン改定の情報発信元が、実質的にこの新課に一本化されていきます。今後、AI導入補助金の情報や新しいガイドラインを追う際に、どこを見ればよいかという”住所”が変わったと捉えるのが実務的です。
誤解3:基本計画が決まったので、今すぐ契約書や社内規程を全部作り直す必要がある
❌ 「閣議決定=即座に対応義務が発生する」
⭕ 現段階で、基本計画そのものが個別企業に契約改定などの直接的な義務を課すものではありません。重要なのは「今すぐ全部変える」ことではなく、「今後の公布・ガイドライン改定を継続的に追跡できる体制」を先に作っておくことです。
企業が今すぐ動くべき5つの対応
AI導入支援のご相談を受ける中で、実際に着手しやすい順に整理すると、次の5つになります。
対応1: ベンダー審査票にAISI関連項目を追加する
AIベンダーを選定・更新する際のチェック項目に「公的な評価・認証の有無」「ガードレール機能の実装状況」を追加しておくと、将来的に政府調達基準が明確化された際にもスムーズに対応できます。
あなたはAI調達の実務担当者です。以下の条件でAIベンダー審査チェックリストの改訂案を作成してください。
【現状】
- 既存の審査項目:[セキュリティ、料金、サポート体制など現状の項目を記載]
- 業種:[業種を記載]
【追加したい観点】
- AIモデルの評価・認証の有無(第三者評価の実績)
- ガードレール(誤用防止機能)の実装状況
- モデルのトレーサビリティ(学習データ・更新履歴の開示可否)
上記を踏まえ、既存項目に追加する形で改訂版チェックリストを箇条書きで作成してください。
不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。
仮定した点は必ず"仮定"と明記してください。対応2: 社内AI利用規程にエージェント型AIの権限範囲を明記する
あなたは社内規程の見直し担当者です。現行の生成AI利用規程を確認し、以下の観点で不足があれば追記案を提示してください。
【現行規程の抜粋】
[現行の社内AI利用規程の該当箇所を貼り付け]
【確認したい観点】
1. エージェント型AI(自律的にタスクを実行するAI)に付与する権限の範囲は明記されているか
2. 人間による確認・停止の権限(Human-in-the-Loop)は定義されているか
3. 機密情報の入力範囲は明確か
不足があれば、追記案を条文形式で提示してください。
数字と固有名詞は、根拠(出典/計算式)を添えてください。対応3: 経営会議向けに制度動向の定点レポートを作る
以下の情報をもとに、経営会議で3分程度で説明できる要約レポートを作成してください。
【対象】
- AI基本計画(第Ⅱ期)2026年7月14日閣議決定
- 経済産業省「AI産業戦略課」新設 2026年8月5日発足
【レポートの条件】
- 「自社にとって今すぐ必要な対応」と「今後追跡すべき情報」を分けて整理
- 専門用語(AISI、アジャイル・ガバナンス等)には簡単な補足説明を付ける
- 300字以内で要約したうえで、詳細を箇条書きで続ける
不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。対応4: 地域AX・補助金の情報収集ルートを整理する
中小企業であれば、「デジタル化・AI導入補助金」の申請枠や締切、地域の支援ネットワークの動向を定期的に確認する担当・頻度を決めておくと、新しい支援メニューが出た際に出遅れずに済みます。
あなたは中小企業の補助金・助成金情報収集を担当しています。以下の条件で、月次の定点チェックリストを作成してください。
【対象制度】
- デジタル化・AI導入補助金(経産省・中小企業庁系)
- 地域AX関連の自治体支援メニュー(都道府県・市区町村単位)
【チェックリストに含める項目】
- 確認頻度(月1回を想定)
- 確認先(公式サイトのURL欄を空欄で用意)
- 締切・交付決定日の記録欄
- 自社が対象になりそうな枠の判定メモ欄
不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。
仮定した点は必ず"仮定"と明記してください。対応5: 現場にロボット・フィジカルAIの接点がある企業は動向を継続監視する
製造業・物流業・建設業など、現場作業を伴う企業は、AIロボティクス戦略・フィジカルAI領域への投資集中が今後の補助金メニューや実証事業に反映される可能性があるため、業界団体や自治体からの情報を定期チェックしておくと備えになります。
あなたは製造・物流現場を持つ企業の経営企画担当です。以下の観点で、フィジカルAI(AIロボティクス)導入の一次検討メモを作成してください。
【自社情報】
- 業種:[業種を記載]
- 現場の主な課題:[人手不足、検品精度、搬送効率など該当するものを記載]
【検討メモに含める項目】
1. 自社の現場課題とフィジカルAI/ロボティクスの接点があるかどうかの仮説
2. 情報収集すべき窓口(経産省AI産業戦略課、業界団体、地域の実証事業)
3. 次の3ヶ月で確認すべきこと(社内向け・社外向けに分ける)
数字と固有名詞は、根拠(出典/計算式)を添えてください。
不足している情報があれば、最初に質問してから作業を開始してください。第Ⅰ期からの変化点
| 項目 | 第Ⅰ期(2025年12月23日閣議決定) | 第Ⅱ期(2026年7月14日閣議決定) |
|---|---|---|
| 位置づけ | AI法に基づく初の法定計画 | 第Ⅰ期を拡充。以後は原則毎年見直し |
| コンセプト | AI実装元年としての基盤整備 | 「日本AX」——より強く、より豊かに |
| 実行体制 | 既存の省庁体制で対応 | 経産省に「AI産業戦略課」を新設し実行体制を一元化(2026年8月5日発足) |
| 重点領域 | 政府調達要件の明確化、AI開発促進税制など | バーティカルAI・フィジカルAIへの官民投資集中を明示 |
今後、何を注視すればいいか
2026年8月17日時点で、AI産業戦略課の具体的な業務スケジュールや、AI基本計画の個別施策の実施時期がすべて公表されているわけではありません。確認できていない部分を推測で埋めるのは避け、現時点で公式に日程が示されている項目とそうでない項目を分けて整理します。
| 項目 | 状況(2026年8月17日時点) |
|---|---|
| AIRoA国産ロボット基盤モデル ベータ版 | 2027年6月頃を目途にオープンソースで公開予定と公表済み |
| 18分野別「AIロボティクス実装ロードマップ」の詳細 | 分野ごとの具体的な導入目標・スケジュールは、本稿執筆時点で個別には確認できていません |
| 政府調達基準へのAISI評価の反映時期 | 「制度・指針・運用改善へ接続」する方針は示されていますが、具体的な反映時期は本稿執筆時点で公表を確認できていません |
| AI事業者ガイドラインの次期改定 | Living Documentとして継続改定される方針ですが、次回改定時期は本稿執筆時点で未公表です |
制度は一度に全部変わるものではなく、こうした個別項目が数ヶ月単位で順次具体化していきます。自社に関係が深い項目(ベンダー選定であればAISI評価の反映時期、現場にロボット導入の可能性があれば分野別ロードマップ)に絞って追跡すると、情報収集の負担を抑えられます。
よくある質問(FAQ)
Q1. AI基本計画とは何ですか?
AI法(AI推進法)に基づいて政府が策定する法定計画で、AIの活用・研究開発・信頼性確保・人間との協働に関する国全体の方針を示すものです。第Ⅰ期は2025年12月23日、第Ⅱ期は2026年7月14日に閣議決定されました。
Q2. AI基本計画はいつ決まりましたか?
第Ⅱ期は2026年7月10日の第5回人工知能戦略本部で案が決定され、同年7月14日に正式に閣議決定されました。
Q3. AI基本計画は経済産業省が作ったのですか?
いいえ。AI基本計画そのものは内閣府に設置された人工知能戦略本部が主導して策定しています。経済産業省は、この計画を実行する各省庁の一つという位置づけで、2026年8月5日に「AI産業戦略課」を新設して実行体制を整えました(経産省と総務省が共同で所管する「AI事業者ガイドライン」とは別の文書です)。
Q4. AI基本計画の内容は?
「AIを使う」「AIを創る」「AIの信頼性を高める」「AIと協働する」の4つの基本方針で構成され、バーティカルAI(領域特化型)・フィジカルAI(AIロボティクス)への官民投資集中を重点としています。
Q5. AI産業戦略課とは何をする部署ですか?
経済産業省・商務情報政策局に新設された課(正式名称:情報処理システム開発・ロボット課)で、これまで別々の局が担っていたAI政策とロボット政策を一体的に推進します。2026年8月7日付で経産省が正式通称を「AI産業戦略課」に修正しているため、報道等で見かける「AI産業課」という表記は修正前の名称である点に注意してください。
Q6. 中小企業はAI基本計画にどう関わればいいですか?
基本計画自体が中小企業に直接の義務を課すものではありません。まずは「地域AX」やデジタル化・AI導入補助金など既存の支援策の活用を検討しつつ、AI産業戦略課からの情報発信(補助金・ガイドライン改定)を継続的にチェックする体制を整えることが実務的な第一歩です。
まとめ:今日から始める3つのアクション
- 今日やること: 自社のAIベンダー審査票を開き、AISI関連項目(評価・ガードレール・トレーサビリティ)が入っているか確認する
- 今週中: 社内AI利用規程を確認し、エージェント型AIの権限範囲・停止権限が明記されているか点検する
- 今月中: 経営会議で今回の制度動向を3分で共有し、今後の情報追跡担当・頻度を決める
正直にお伝えすると、AI基本計画やAI産業戦略課のような制度・組織の動きは、発表された瞬間に企業の実務が変わるわけではありません。むしろ数ヶ月〜1年単位でガイドラインや補助金メニューに反映されていく性質のものです。だからこそ、「今すぐ全部対応する」のではなく、「継続的に追いかける仕組みを作る」ことが、遠回りに見えて一番確実な備え方だと感じています。
次回予告: 次回は、経産省「AI産業戦略課」の実行計画である「AIロボティクス戦略」を、製造業・物流業向けに掘り下げて解説する予定です。
参考・出典
- 人工知能基本計画|内閣府 科学技術・イノベーション — 内閣府(参照日: 2026-08-17)
- 人工知能戦略本部(令和8年7月10日)|総理の一日 — 首相官邸(参照日: 2026-08-17)
- 経済産業省組織令の一部を改正する政令が閣議決定されました — 経済産業省(参照日: 2026-08-17、2026年8月7日更新版)
- AIロボティクス戦略~社会実装を加速し、巨大市場を切り拓く~ 概要 — 内閣官房 AIロボティクスに関する関係府省連絡会議(参照日: 2026-08-17、令和8年3月26日決定・同年5月27日一部変更)
- 日本社会全体でAXを強力に推進、第2期「AI基本計画」を閣議決定 政府 — Newton Consulting(参照日: 2026-08-17)
- 第2期AI基本計画案とは|日本AX・高性能AI評価・AISI強化の企業影響 — LegalAgent(参照日: 2026-08-17)
著者: 佐藤傑(さとう・すぐる)
株式会社Uravation代表取締役。X(@SuguruKun_ai)フォロワー約10万人。
100社以上の企業向けAI研修・導入支援。著書『AIエージェント仕事術』(SBクリエイティブ)。
SoftBank IT連載7回執筆(NewsPicks最大1,125ピックス)。
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